第2話 どっちが報酬を受け取るの?

――船から降りる時、ラグ姉さんが俺とリーダーに言ってきた。

「そういえばこの報酬キスって、あなた達どっちが受けるの?」

俺は硬直してしまったが、リーダーはおのずと分かるだろうという態度。

さすがリーダー!

でもその後、姉さんは船員全員に「どっちが受け取るか?」賭けるように持ちかけ始めてしまう。

ちょちょ、まってくれ~姉さん!

                     byルシェド


GM:もらった地図の通りに峡谷の崖の淵を船で進んでいると、国が見えてきます。

ルシェド:いやー随分深い谷っすねー。

GM:地図を出しますね。


        北

----------------------------------------------------

     |    川    |

  ○○○|崖   川   崖|

  ○森○|    川    |

  ○○○|   ―――   |

     |  |   |  |

西    |――| 城 |――|    東

  (街1|橋1| 街 |橋2|街2)

     |――|   |――|

  ○○○|  |  塔|  |

  ○森○|   ―――   |

  ○○○|    川    |

     |崖   川   崖|

-----------------------------------------------------

        南


GM:地図の王国の名前はスフバール聖鎖鉄王国といいます。

ツヴァイ:私たち今どの辺り?

GM:ここですね(南の崖と崖の間の川を差す)。

ラグ:南から北上してるみたいなイメージかな。

GM:緑の森の所は飛空艇を隠しておくことができます。

ツヴァイ:なるほど。

ラグ:ちなみにこの国について……今冒険者として何かわかることってあります?

GM:この国ですか……どういう情報が欲しいですか?

ラグ:地理かな。

GM:まず、城壁が二つ町と一緒に横にありますね。線の下は崖で下に河が流れてて、さらに城壁に囲まれた国が真ん中にある感じです。町の名前はそれぞれ、東が「剣の街」、西が「盾の街」、真ん中が「鎧の街」と呼ばれてます。

ラグ:崖下に中央の鎧の街がある感じ?

GM:崖の上ですね。それ以外だと崖の下の方からボロっちい橋がかかったりしています。沢山の橋が中心の島に向かって架かっている感じですね。

GM:グランドキャニオンの深い谷の亀裂に、大きな巨人が立ってるような島があるって感じですね。


ツヴァイ:ちなみに、この鎧の街の東側にポツンとある黄色い塔みたいのはなんですか?

GM:これですか? これは私がファンタジー感を求めてついつい描いてしまったものです。

ラグ:(笑)

ツヴァイ:なるほどね。

ルシェド:ファンタジーだしな。

GM:そこに塔があると気になるでしょ。気になりません?


ツヴァイ:気になります。

ラグ:気になる。

ルシェド:気になりますね。



GM:さて。あなた達は今のところ、この国で表沙汰に騒がれてはいません。

ツヴァイ:顔売らないとねー。

GM:姫様は西側の盾の街の方に隠れ住んでいるんですが、色んなところを転々としていて今どこにいるかはわからないそうです。ただ成人式があり、式の時には鎧の街に行くらしいですね。

ラグ:ちなみに成人式は何日後だっけ?

GM:シナリオ内で到着してその日の正午です。

ラグ:じゃあ、変な下調べしてる時間無いね。

GM:いえ、GMは下調べに行った後「作戦実行します」って言うまでは、時間を進めません。

GM:いきなり鎧の街に行って王城に突っ込むもよし、隠れて調査するもよしです。

ツヴァイ:じゃあ、プレイヤー会議かな!


プレイヤー達が話し始める。

ツヴァイは騒動を起こし、成人式のど真ん中でペガサスで姫様をかっさらいたい。と言い出し、ラグが呆れ突っ込みつつも、ルシェドが正面突破を感心している。

GM:(わお、ド派手なこと考えてるなあ)



ラグ:あ! GM、これちなみに真ん中の国から河に向かって飛び降りたら何メートルぐらいあります?

GM:グランドキャニオンくらいあります。

ツヴァイ:死ねる。

GM:河に落ちたら点になって濁流に呑まれていくのが見えるんじゃないですかね?

ツヴァイ:でも、最悪ラグさんも羽生えるんですよね。

ルシェド:俺も妖精魔法の風のやつで浮けるから、下に落ちても何とかなるっすね。

ラグ:わりと空中に強いメンバーだねうちら!

ツヴァイ:そうだね。さすが空賊!攫ったらそこまで深いこと考えなくても、「崖から飛び降りたぞー!」「あの高さでは助かるまい……」「助かったわー」みたいな感じで行けますね。

ルシェド:最終脱出手段だ……。


GM:じゃあ、ここでイベントを起こしますね。

あなた達が雲を超えて近くを通りかかると、こんなものが横を過ぎ去っていくのが見えました(「敵飛空艇」のデータを出す)。


ラグ:すごく嫌なんだけど、空中戦。

ルシェド:何スかこれ、敵のやつめっちゃ強そうじゃん……。

ラグ:その飛空艇、この国所有のものだったりとか分かったりします?

GM:紋章がついていないので違う奴ですね。


ラグ:悪い奴らとか乗ってないかしら、ぶんどりたいわね。

ルシェド:あの鳥(竜鳥)が複数飛んだってことはないっすよね? いやでも、見てねえしな……。

GM:(お、鋭いな)

ラグ:義賊集団ってうちらだけなんだよね?

GM:そうです。なので、おそらくお姫様の言う暗殺者なんじゃないかな、という推測はアリですね。

ラグ:私たちのニセモノとかそういう可能性もあるね。

GM:まあこれはイベントなので、ちらっと見えた感じで。彼等は北西の方向に向かっていきました。



GM:では、どこに降りてお話を聞きますか?

ラグ:基本的には西の森に飛空艇を降ろして、隠れたまま街に侵入するって形になるんじゃない?

ツヴァイ:まあ時間が過ぎないのなら一旦それで。情報を取ってきてもらいましょうか。

GM:では剣の街のシーンに移しますね。あとラグさんは、一日経過しているので色々と回復お願いします。

ラグ:はい。じゃあMPは回復しておきますね……あ! GM! PTの二人に渡したいものがあって。パーティーの二人に、ドルイドから援護を受ける時用の『受益者のシンボル』を持っててほしいんですけど。

GM:いいですよ。受け取っておいてください。

ツヴァイ&ルシェド:OK!



GM:門を通る前に、この街の外で大きな風が吹いているのがわかります。その風にあおられて、何本かの風車が回ってますね。

ツヴァイ:ちょっとまって。入る前に「我らジャッジメントキングダムのコードネームの確認をしておく!」とみんなに言います。

GM:そういえば決めてましたね。

ルシェド:「俺がビショップで、姉さんが……」

ラグ:「ナイトね」

ルシェド:「そういえばキング、『ジャッジメントキングダム』ってどういう意味なんすか?」

ツヴァイ:「直で『この世のすべて、悪かどうかは自分たちで判断する』だ」

GM:まさに、我らが法。

ルシェド:はえ~。

ラグ:そのまんまじゃないか。



GM:では、入国しようとした時に、だいぶ警備がピリピリしているな、ということにあなた達は気付きます。

ツヴァイ:ふむふむ。警備の人に「警備御苦労!」と言いながら颯爽と入っていきます。

GM:「なんだこの偉そうなやつは……」って思って見てます。

ツヴァイ:いや私、一般技能でノーブル5ありますから。

GM:貴族だったんですか?

ツヴァイ:貴族ではないから取ったんですよ。

GM:なるほど。

ツヴァイ:私は王なので貴族の所作を覚えたんですよ。

GM:あー、礼儀を覚えたんですねー。では、「きっとどこかの貴族に違いない」って思います。

ツヴァイ:「こういう時はビクビクしている方が疑われるのだ。堂々と入れ」って言います。

ラグ:「Mr.キング。私もこの国での細かい話がありますので、途中で情報収集に向かいたいのですがよろしいでしょうか?」みたいな話をしながら通り過ぎます。

GM:衛兵さんがラグさんに、声をかけてきますね。「なんだ、商人なのかい?」

ラグ:「はい、商人です」という話をします。

GM/衛兵:「アビスシャードなら、ちょっと売る場所が変わったから気を付けなよ」と言ってきます。

ラグ:ほー。ここは何か特産品とか、そういうものはあったりするんですか?

GM:はちみつとか売ってたりします。

ツヴァイ:はちみつ。

ルシェド:はちみついいじゃん。

ラグ:「アビスシャードの売り場が変わった……というのは、何かあったのですか?」

GM/衛兵:「いや、前の売り場から場所が変わっただけなんだが。ここでは高値で売れるし、商人がそれで迷ってしまうことが多くてな……」

ラグ:「なかなかいい商売ですね。私としたことが勉強不足でした」と話をしながら「じゃあどこでしょう?」ということで地図を眺めて教えてもらいますね。

GM:地図で東の剣の街を指さしますね。「まあ気を付けて」と言って、親切な衛兵さんは快く送り出してくれます。

ルシェド:じゃあその話してる途中に「代表ー、在庫忘れてますよー!」と言って、流れで通ろうとします。

GM/衛兵:「おいおい、中身は点検させてくれよ」って言いますね。

ルシェド:「それもそうか」では、袋から手持ちのアビスシャードを取り出して見せます。

GM/衛兵:「じゃあ行っていいよ」と通します。

ルシェド:「あざーす」と言ってそのまま通り過ぎます。

GM:衛兵さんとのお話はこんな感じです。



ツヴァイ:「まずは成人式の場所を見に行こうではないか」って言って中央にある鎧の街に行ってみたいです。

GM:じゃあ、門に警備兵が置かれているね。

ツヴァイ:ほう。じゃあ警備兵の人に話しかけてみます。

GM/警備兵:「通行禁止である。何用だ」

ツヴァイ:なるほど。「一般の人間には通り抜け不可能ということか」

GM/警備兵:「現在、姫の安全の確保のため、橋に住む違法民を退去させている」

ツヴァイ:「中に住んでる者たちまで追い払ってるのか」

GM/警備兵:「そんなものだ」って言います。

GM:警備兵はとても冷たいです。どうやら、よそ者に対して良い感情を持ってないようですね。

ルシェド:「国も大変っすねえ~……」

ツヴァイ:「仕方ない、引き返すか」



GM:リルドラケンのオバちゃんが「あんたたちも橋を渡れなかったのかい?」と話しかけてきます。

ツヴァイ:「そうだが?」

GM/女性:「いやね、私も通してほしいって言ったんだけど、お姫様がそこを通るらしいね」

ルシェド:「それで警備がいるんですねぇ」

GM/女性:「そうなのよ。橋に住んでる移民を追っ払うために人員を割いてるみたいなのよ、かわいそうよねぇ」

ツヴァイ:「なるほど……君はなかなかこの辺りの情報について詳しいようだ。教えてもらえるか?」と言って50ガメルを渡します。

GM/女性:「えっいいの!? 私これで本買えちゃう~」と言って喜んでいます。

ツヴァイ:「本を読むのは良いことだ」

GM/女性:「そうよ最近流行ってるのシ↓ヴァ~↑↑ルが」

一同:(笑)

GM/女性:「魅惑のシヴァール様、良いわよねー」と言って、移民について情報をくれます。


・彼らは隣国から移民してきた人々で、上の街に住む権利がない。

・崖の窪みのところに住んでいて、時々露天商を営んでいる。

・移民たちの故郷からは、この国に嫁いだ王女がいるが側室扱いである。

・移民たちは待遇の改善を望んでいる。


ツヴァイ:なんかあのさっき途中まで言ってた。あんな事件があったからねって言ってるのが気になりますね。

GM/女性:「それでね? あの公王様の親戚が何人か亡くなってるみたいなのよぉ」って言います。

ツヴァイ:「はあ」

GM/女性:「移民が側室の地位を上げるために、暗殺者を雇ったんじゃないかと噂されてるわ」

ツヴァイ:なるほどね「成人式があるなら、王族以外の娘さんも行くだろう。そういったものはもうすでに集められているのか?」

GM/女性:「そうね、その子たちはすでに町の中央にいると思うわ」

ツヴァイ:なるほど。

GM/女性:「たぶん、お姫様も橋を渡るんじゃない?」

ラグ:「しかし、橋を狙われたらお姫様も危ないんじゃないかしら?」

GM/女性:「上の方から誰が攻撃したりするわけないでしょ。だから橋を渡っても大丈夫よ」

ツヴァイ:「確かに上から攻撃することなんて、空でも飛んでこない限りあり得ないな」っていいます。

ラグ&ルシェド:(笑)

GM/女性:「まあ、だから私たちは別にそんなに危険だと思ってないわ」

GM:他に何か聞きたい事あります?

ツヴァイ:「いや、ありがとう助かった。もう一冊買えばいい」って追加で50ガメルを渡します。

GM/女性:「シヴァールの本が追加よっ」て言って、追加の情報をくれます。

GM:彼女はシヴァールの演目が、東の剣の街である事を教えてくれます。

ルシェド:「めっちゃ人気ですね」

ツヴァイ:「世の女性はよほど月まで連れてって貰いたいようだな」

GM/女性:じゃあ、それを聞くと早口でまくしたてますね。「じゃあ聞きなさいよ彼はね王子と怪盗の2つの仮面を持つ銀の髪と湖のような青い瞳のような切れ長のまつげドワーフのようなたくましい肉体を持ち謎に包まれた種族名不明でありメリアだとも人間だとも言われているのよねすばらしいじゃない」

ラグ:笑いをこらえて、肩をプルプルと震わせます。

ツヴァイ:「すまない、先ほど買ったゴールデン耳栓の具合を確かめていた」

GM:そう。

ツヴァイ:「じゃあ話を進めよう」

ラグ:「ちなみに劇団は、街っていうか国の劇団なのかな?」

GM:「巡業の劇団ですね」

ラグ:「なるほど……劇団はこちら今回の成人式にかけてきたのかしら」という話をしようか。

GM/女性:「偶然らしいわよ? 特に団長をやっているのがメリアらしくて……」

ツヴァイ:メリアか。メリアってだけでこっちの緊張感がゆるんでしまう。

GM:(お、ツヴァイのPLのメリア好きがでてる。しめしめ……)

GM/女性:「花形役者が団長もつとめていて、彼女がシヴァールを演じるのよ」

ラグ:男装の麗人なのね。

ツヴァイ:それはまた人気が出そうですね。

ルシェド:女性受けが良さそうだなぁ。

ラグ:それはなんか普通に知名度のある劇団何ですか?

GM:劇団のために本を書いて、それを小説にしているらしいね。

ラグ:「面白い小商いの仕方をするのね」っていう話をしておこうかな。

GM/女性:「なかなか偏屈な作家らしいわよ」といいます。

ルシェド:「今やってる演目は私を月に連れてってなんです?」

GM/女性:「最終演目だそうよ。皆、どんな女性が救われるのか楽しみに待ってるみたい」

ルシェド:「ええ?せっかく見るんだったら先に本読んどかないとですね」

GM/女性:「そうよね。あなた分かるじゃない」って言います。

ルシェド:「俺もその本買ってみることにするよ。うん」

ツヴァイ:「わたしはすでに履修済みですから大丈夫ですね」

ラグ:「キング話してくれる?どんな内容?」

ツヴァイ:「ん?あのー、そうですね……ははは」

ルシェド:値段だけ聞こうか。

GM:じゃあ10Gで。

ルシェド:10G、じゃあ買いまーす。

ツヴァイ:まあでも、比較的安価ですね。

ラグ:うん。

GM:ルシェド、本を買うの巻。

ルシェド:後で履修しておこう。

GM:では、リルドラケンのオバちゃんは、お喋りに満足してあなた達と別れていきます。


ツヴァイ:そうですね、盾の街って他に大きい建物とかあるんですか?

GM:ないですね。農耕地です。

ツヴァイ:じゃあもう剣の街に行く感じでいいんじゃないですかね。

ラグ:うん。

ツヴァイ:まあ剣の町行くのに良い方法を聞いてもいいとは思いますけどね。他に下賤な連中だけがいける道があるなら、それで結構でございます。

GM:あなたたち義賊ですよね?

ツヴァイ:義賊ですよ。

GM:つまり遺跡ギルドという名の盗賊ギルドってものがあると思いますよ。

ツヴァイ:情報を手に入れられますよ、盗賊ギルドで。

ラグ:じゃあー、まず独自判断よりはまずは行ってみるか。

ルシェド:いやー、ギルドって便利だな。

ツヴァイ:便利なんですよー。



――俺は盗賊ギルドに行く途中にシヴァールの本を読んだ。彼は飛空艇に女の子を乗せて月夜のデートに誘う。女の子たちは彼との別れを”ああ、シヴァール……”とため息混じりに惜しむ。なんだか、ロマンチックだ。       byルシェド

――まだ月がどんな場所かも知るまいに。 byツヴァイ

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