(三)-6

「明?」

 私はその可能性を頭に描いた。まさか、明がビルの上から飛び降りた、とか……?

 よく見ると、人影からは血だまりが少しずつ広がっていた。それにこれは明ではなかった。木下だ。というのも、髪型が明のものとはちがうからだ。

 明は床屋に行くのを嫌がり、しばらく伸ばしっぱなしのボサボサ髪なのだ。それに対し、今倒れている男子生徒の髪型は頭の脇を刈りあげていた。これはうちの学校の運動部系の校則だった。

 だからこのビルから飛び降りるとしたら、さっきこのビルに入っていったぼさぼさ髪の明とサッカー部の木下のどちらかと言われれば、木下のハズだった。


(続く)

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