第5話
こうして、少々手こずることがあったものの、私、エルザ・ディアマンテはアカネに弟子入り(師匠呼びは許して貰えなかった)することができた。これからは通常の勉強の他に、アカネ特製強化メニューをこなさなければならなくなる。
今からとても気が重い。
ということで、しばらくはみんなが期待するような冒険などは無いと思われる。そこで、この世界について少し説明しようと思う。
私にとっての復習だ。
最近では、努力をせずに得る力、チートと言うものが流行っているらしいからな。努力部分は省略させてもらう。
その時間を使って、いつ説明しようか迷っていたこの世界観を解説しようと思う。
……まあ、本当はただ修行の描写をするのが面倒なだけなのだが。
これが終わればイコールで、修行も終わっていることだろう。
その時が楽しみである。
・・・
まずは時間について。
この世界において、時間の数え方は俺の世界とだいたい同じである。
一秒一分一時間。
だが、ここから少し曖昧になってくる。
例えば、一日。こちらの世界では、明るくなったら一日が始まり、暗くなってからまた明るくなり始めたら一日が終わる。そこに明確な時間は無い。昼や夕方などの呼び方はあるけれど、一時二時といった数字はないのだ。
また、一週間と一ヶ月という数え方もしない。だいたい日数で数えている。七日間や三十日、といったところだ。
しかしながら、一年の数え方は存在している。そうじゃなければ、私は自分のことを五歳と認識することはなかった。
では、どうやって一年を数えるのか。実は、この世界にも四季がある。それも、春夏秋冬と同じ感じだ。この四季が一週すると、一年が終わる。
因みにこの世界には、もちろん誕生日はない。代わりにあるのは、「誕生季」である。誕生した日ではなく、誕生した季節を祝うのだ。なので、誕生会を開くとかなりの人数を祝うことになる。
時間については、こんなところだろうか。時計やカレンダーがない、ということが分かればいい。
・・・
さて、次は歴史について説明しよう。
とはいえ、古代からやっていてはあまりにキリがないので、今回は絵本にもなっている有名な話をしよう。
それは、およそ三百年前の話。
魔族を率いる魔王軍が、人間の領土を侵略し始めた頃のことだ。
敵が強く、甚大な被害を出していた人間達は、その対策として、異界から四人の英雄を呼び寄せた。
それぞれの英雄を勇者、魔法使い、戦士、僧侶と呼び、敵のリーダーである魔王の討伐へ向かわせた。
勇者達はその道中、魔王軍の幹部である四天王との戦いに苦戦をしつつも、無事魔王軍との戦いに勝利することができた。
しかし残された魔族は、魔王が倒されたことにより理性を失い、魔物となって以前より人を襲うようになった。
そこで勇者達は、人々が自衛できるようにするため、それぞれの分野での戦い方を教えた。
やがて、自力で魔物を倒せるようになった人々は、その戦い方を更に広めるために、一つの学舎を作った。
それは勇者亡き今も、たくさんの優秀な人材を育て上げ、人々が魔物に脅かされることはなくなった。
その学園の名は、王立アヴァロン学園。
私の姉も通っている、世界最大級の学園である。
・・・
アヴァロン学園。通称、アヴァ学。
勇者達が設立した学舎を中心にして国が発展していったため、それはもはや一つの王国であった。
学園都市ならぬ、学園王国。
小等部から高等部だけでなく、大学に相当する研究機関や訓練施設まである。学年の上がり方は、俺の知っている学校と一緒だ。違うところがあるとすれば、それはアヴァ学が義務教育ではないところだろう。飛び級、編入、中退、何でもありだ。
この学園を卒業した者は、大体三つの道に分かれる。
一つ目が、アヴァロン王国に残って生活する道。大半の生徒がこちらの道に進む。
二つ目が、王の下で働く道。優秀な成績なら学園から推薦してもらえるそうだ。
三つ目が、冒険者として旅に出る道。推奨はされないが、毎年一部の生徒がこれになるらしい。
私が目指すとするなら、後半の二つだろう。誰かの助けになると言った以上、他人のためになる方向に進まなければならない。別に、住人になることが助けにならないということではないのだが、なんとなく、私のやりたいことはそういったことではないのだと思う。
まあ、結局これは副産物的なアレであって、私のやりたいことは別にあるのだが、この際、置いとくとしよう。
さて、そろそろ修行も終わる頃だ。次は、学園編に突入である。気づいているだろうが、入学するのはアヴァ学だ。本当なら中等部辺りから始めたかったのだが、訳あって高等部からになった。……友達はできるだろうか。
とりあえずは、学園生活を楽しむとしよう。目標は、友達百人未満で。
これからのエルザ・ディアマンテに、乞うご期待である。
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