第14話
食事も終わり、まだ空も明るいので暗くなるまでは歩くことにした俺達は、ただひたすら草原を歩いていた。
「のう、飽きたのじゃが」
「ああ、俺もだ」
草原を歩くこと早数時間。たまに見かける湖や龍の谷にいない生物なんかも見飽きたのか、インフェルノちゃんがはしゃぐことも少なくなってきていた。そろそろなんか面白い話題でも振ってやるか。
「そういえば、なんで魔王軍倒そうなんて思ったんだ?」
これ俺がただ気になってることだったわ。話題のチョイス下手か?俺は。
「最近龍の谷にも外来魔物が増えてきてのう……理由はわからんが、一番可能性が高いのは魔王軍じゃろうて」
「なるほどな。しかし外来魔物か、魔物界も大変なんだな」
「他のドラゴン達に聞いた話じゃと、そういうのは人間達が駆逐してくれることが多いそうじゃ。しかし、龍の谷には人間なぞあまり来んからのう」
「ああ、人間からしたら普通に厳しい環境だからな」
「おお、そうじゃ。そういえば言っとらんかったが、フォーレンで他のドラゴンを誘おうと思ってるんじゃが問題ないかの?」
「他のドラゴン?」
フォーレンにドラゴンなんていたか?俺、地元なんだけど知らねーぞ……
「うむ。たまにわしの所に遊びに来るやつじゃ」
あれ?ドラゴンって龍力がうんたらで特定の場所以外じゃドラゴンになれないんじゃ……?
フォーレンにドラゴンがいるなんて話聞いたことないし、インフェルノちゃん騙されてね?
「そいつ本当にドラゴンか?」
「うむ。まあ自称じゃが……龍力で習得出来る魔術とか使っておったし、間違いないじゃろう」
「まじか。俺、フォーレンにドラゴンがいるなんて知らなかったんだが」
「ああ、やつはドラゴンにはならぬのじゃよ。たしか狐だかなんだかでおるとかなんとか」
「狐か」
狐といえば聞き覚えがある。たしか九山という大きな山にに住み着く妖狐がいるとかなんとか……あれ、伝説じゃなかったのか。
しかしまた、何故ドラゴンじゃなくて狐で定着しているのだろうか。
「まあ、やつはわしのことを狐呼ばわりしてくるがの。聞いた限りではわしと同じ力じゃが、やつは狐力とか言っておったぞ」
「狐力ねぇ。要は、お前らはその地の守り神的な立ち位置ってことか?姿形は伝統が受け継がれてる…みたいな」
俺の説明に、インフェルノちゃんは納得したようなしてないような顔をする。
「そういうことかもしれんのう。しかし、それならばやはりその辺にもおる狐なんかじゃなくてドラゴンの方がよくないかの?」
「多分それ狐じゃなくて妖狐な。そんなこと言ったらドラゴンだって蛇とか言われるぞ」
「わしは蛇じゃないわ!」
「わかってるって」
その後は、インフェルノちゃんのドラゴン語りを適当に聞き流しながら歩いていった。
段々と暗くなり始めた頃にようやく草原の端まで辿り着くと、早速俺たちは現在地の確認に入った。
「あっちは森だろ?てことは……この辺か?」
そう言いながら俺は草原の左下の方を指差す。
「いや、こっちかもしれんぞ」
インフェルノちゃんは俺とは違う草原の上の方を指差した。
「そっちも森だな」
「……」
詰んだわ。
「なんとか見分けられる方法はないのか?近くに目印になるようなものがあるとか……」
二人で地図をくまなく確認していく。俺の方には何もなさそうだ。
「おっ!」
すると、インフェルノちゃんが声を上げた。
「そっち何かあったのか?」
「わしの魔力センサーに反応ありじゃ!しかし、突然現れたのう……魔力量は大したことなさそうじゃな」
「なんで嬉しそうなんだよ……」
予想の斜め上の回答に、思わず落胆してしまう。もう日も落ちているので、雑魚相手だとしても戦闘はなんとか避けたいところだ。
「インフェルノちゃん、そいつ今どの辺にいるんだ?なるべく遭遇は避けたいんだが」
「む?あっちの方じゃが、動いておらんな」
そう言いながらインフェルノちゃんは俺達が歩いてきた草原の方を指さした。
しかし、動いてない……か。突然現れたというのも気になる。というか、もしかしてこれは……
「魔道具じゃね?キャンプセットの魔道具。俺も持ってるけど」
俺はその魔道具を取り出すと、展開させた。
その魔道具は強化版のテントのようなもので、テントをもう少し豪華にしたもの+即席キッチンのセットだ。
「おお。これとほとんど同じ反応じゃ」
「てことは人の可能性が高いな。距離はどのくらいだ?」
「さっきまでのペースじゃと、歩いて一時間程度かの」
思ったより遠いが、ここで接触しにいかないという手はないだろう。
というか、インフェルノちゃんの魔力感知の範囲どんだけ広いんだ?
「それにしても、ここらはほとんど魔力が感知出来んのう。人も魔物もおらんのか?」
「ここって龍の谷を抜けたとこの草原だろ?たしかなんかいたような気がするんだが……忘れたわ」
「使えんやつじゃ」
「まあそれは置いといて、とにかく行ってみるか。唯一の手がかりだしな」
インフェルノちゃんも特に反論はないようで、俺達はその魔力源目指して歩いていくことにした。
俺は一日中歩くことに慣れているから大丈夫なのだが、インフェルノちゃんは大丈夫なのだろうか。まあ、遠慮するようなやつではないしきつくなったらすぐにぐちぐち言い出すだろう。そうしたら休憩にしよう。
そう決めると、急にインフェルノちゃんがこちらを振り返った。
「キツい」
「お前心読んだろ」
このむっつり!
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