第11話
目が覚めると、俺はベッドの上に寝かされていた。
朧気な記憶を掘り起こしながら、状況を確認する。
(そうだ。神獣ベヒーモスにやられて、それから……)
生憎とそこからの記憶は無く、ここがどこだかもわからなかった。
ひとまず生きていたことに安心すると、俺は周囲を見渡した。
壁には蝋燭の火が……蝋燭?
天井はゴツゴツした……岩?
広さは……片側の壁しか見えないわ。
(いや、どこだよここ)
こんな広い洞窟みたいなとこにベッドだけぽつんとあるという謎の状況に困惑していると、ふとベッドの中で何かが動いた気がした。
一瞬本気でびっくりしたが、よく考えたらインフェルノちゃんに違いない。それまですっかりインフェルノちゃんの事を忘れていたが、ここまで連れてきてくれたのもインフェルノちゃんだろう。
(てことは、ここはインフェルノちゃんのねぐらか?なんというか……謎だな。うん、謎)
一応確認の意味で掛け布団を捲ると、そこには全裸のインフェルノちゃんがすやすやと……全裸?
慌てて掛け布団を直す俺。いや、インフェルノちゃんがいるとはわかってたけどこんな犯罪的な……なんで全裸?
「寒い!」
何故全裸なのかという疑問が頭の中を占めていると、ベッドの中からインフェルノちゃんの叫び声が聞こえてきた。
確かに外気はかなり冷たく、だからインフェルノちゃんは顔も出さずにベッドの中にくるまっているのだろう。……いや、服着ればよくね?
そんなことを考えていると、まさに電光石火の速さでインフェルノちゃんがベッドから抜け出して、寒い寒いと叫びながら走り去った。
「え?なに?」
突然のことに呆気に取られていると、数十秒後に服を着たインフェルノちゃんが帰ってきた。
「ふう、いつもの事じゃが寒いのう」
いや、最初から服着ろよ。って突っ込んだら負けなのだろうか?なんか気にしたら負けな気がするから、気にしない方向でいこう。
「ここはどこなんだ?」
「わしの住処じゃな。そうじゃ、奥の方にベヒモス牧場があるから食っていくかの?」
ん?ということは神獣ベヒーモスを捕らえていたのもここか。……あれ?
「なあインフェルノちゃん」
「なんじゃ?」
「なんで急に飛び出したんだっけ」
「おろ、言っておらんかったか?あやつを縛ってた結界が破られたようじゃったからじゃな」
あやつとは神獣ベヒーモスの事だろう。つまり神獣ベヒーモスが逃げ出した瞬間にインフェルノちゃんは飛び出したわけで……
「もしかして、ここ一回来た?」
「そうじゃな。何故かおぬしとあやつが入れ替わった所じゃ」
おっふ、まじか……あの時その辺にベッド転がってたのか。そう思うとなんか……なんだろうな。自分でも何が言いたいのかわからないわ。
「わしはベヒモスを処理してくるから、おぬしは休むがよい」
俺が一人で考え込んでいると、インフェルノちゃんはそう言って奥の方へと消えていった。
「まあ、どうせ体が動かないから休むしか……ん?」
てっきり怪我で体が動かないと思っていたのだが、意識を向けてみると怪我をしているにしてはやけに体が軽い。
「そういや自然に掛け布団捲ってたな、俺……」
そう思い出して試しに起き上がってみると、驚くほど自然に起き上がれ、痛みも感じなかった。
誰がこんな……ってインフェルノちゃんしかいないのだが、インフェルノちゃんは回復魔術も使えるのだろうか。いや、魔術にしても回復が早すぎる気がする。回復魔術はせいぜい修復力をあげたり痛みを和らげたりする程度のもので、こんな傷を一瞬で癒したりするものではないはずだ。
「ドラゴンってすげぇ……」
もはや俺にはそうとしか言えないレベルの出来事で、先程の戦闘でも感じたが、改めてインフェルノちゃんとの差を思い知ったのだった。
まあ、ドラゴンがすごいというのは知っていたことなのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます