第8話
───拝啓。お父さんお母さん。
───俺が『ちょっと世界を救ってくる』と言って家を出てから何年になるでしょうか。
───俺はあれから立派な変人魔術師になりました。
───そちらは最近どうでしょうか?こちらは今、空を飛んでいます。
───今日ほど、この身体に翼があったらどんなにいい事かと思った日はありません。
───死にたくないです。助けてください。
───息子のセロより。
───……
「あの馬鹿ふざけんなあああぁぁぁぁ!!!!」
突然だが、俺は今紐なしバンジージャンプの真っ只中だ。意外と風が気持ちい……痛い痛い!
どうしてこうなったかって?あれは十分程前……って語ってる場合じゃないんだな、これが。マジで死ぬ。
どうにかならない?これ。空飛ぶ魔術とかあれば……ん?待てよ?あるじゃん空飛ぶ魔術。たしか昔、めんどくさがりながらも習得した……っけ?あれ?習得……まあ唱えるだけ唱えてみるか。
「天よ!我に翼を!『フライ』!」
………………。
はい、お疲れ様でした。そういえば、『俺は地に囚われし魔獣なのさ…………』とか言って適当にごまかして習得諦めたんだった。いやあれめんどくさいんだもん。
いやー、ビギナーズラックで奇跡的に助からねーかな。俺紐なしバンジージャンプビギナーなんだけど。
……はぁ。本当にどうするよこれ。フライ習得しとけば良かったなあ……あれ?そういえばフライの代わりに習得したのなんだっけ?
あの時中二病拗らせて謎の魔術ばっか習得してたからなあ……え?現役だろだって?ははは。
あ!思い出した!しかもうまくいけばこの状況脱せるやつだ!いやしかし……この魔術成功したことないんだよな……なんていってもやるしかないか。フライの時に失敗貯金したからいけるいける!いけなかったら死ぬだけだしな!はは!いくぞ!
「天に抗う……あれ?理だっけ?えっと、理に抗う愚かな……えーと……虚ろに……やべぇ詠唱忘れた」
よし、それっぽいこと言おう。詠唱って最悪なくても発動するしな。失敗率上がるけど。
「お願いします発動してください神様助けてくださいまだ死にたくありません!『禁術・シフトホール』!」
禁術使ってんのに神頼みって。ははは!笑えねぇ。
俺は魔術が成功したことを祈りながら、展開された真っ黒の穴に吸い込まれていった。これ成功したってことでいいのか?この魔術使ったことないからよくわからないんだが……
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