第4話


 三人のところへと戻ってくると、待ってましたとばかりにダルツとレミアムが立ち上がった。




「セロ。どこいってたんだよ?」


「ちょっとな」




 誤魔化すように答える。


 視線を逸らすと、そこにはいつの間にか気を取り直していたリーダーが立っていた。




「リーダー、復帰してたのか」




 丁度よかったのでリーダーを話の切り替えに使うと、ダルツは俯いて黙り込んでしまった。


 何かあったのかと思いリーダーに目を配ると、リーダーは言葉を詰まらせながら、それでもハッキリと言った。




「僕は……僕達マジックナイツは……いや、僕は……マジックナイツを解散させようと思う」


「解散……?」




 ダルツが黙ってしまったのはこれを先に伝えられていたからだろう。




「それは、ちゃんと考えてそう決めたのか?」




 俺は、少なくともマジックナイツはもうS級パーティーとしてはやっていけないと思う。リーダーやメンバーの精神的な問題もあるし、単純に戦力が足りないというのもある。


 それでも、解散とまではいかないのではないか?俺はこのパーティーが好きだ。最初は魔術馬鹿同士で集まっていただけだが、お互いに切磋琢磨して高みを目指し、気がつけばSランクパーティーまで登り詰めていた。




 元々ソロでやっていた俺を誘ってくれたリーダーにはとても感謝しているし、最初の頃は馴染めなかった俺に優しくしてくれたメンバー達にも感謝している。




「俺は……まだ解散まではしなくていいと思う。ひとまず活動休止にして、気持ちの整理とか今後どうするかとかしっかり決めてからでもいいんじゃないか?」




 だから、俺は解散したくないと素直に伝えた。




「ああ。二人にもそう言われたよ。でも、すまない。僕は……僕はやっぱり最強を目指したいんだ」




 ……そう言えばこのパーティーに誘われた時も、「僕達と最強を目指さないか?」なんて言われたっけ。




「あの六人なら最強になれる。僕はそう思ってた。二人が死んで……四人になった。四人でもかなり強いパーティーだと思う。でも……でも、マジックナイツはあの六人以外では足り得ないんだ。だから……マジックナイツは……今日で、解散にしよう」




 そう言うリーダーの目には、涙が浮かんでいた。




「わかったよ。リーダーが決めたことなら……俺は従う」




 リーダーが創り上げてきたマジックナイツ。その最期は、彼が決めて然るべきだろう。




「ありがとう、セロ。それに、ダルツもレミアムも」




 リーダーの言葉に、二人が反応する。




「こちらこそ。だ、リーダー。それに、解散したら最後って訳じゃねぇ。また今度四人で集まろうぜ」


「いいわね。その時は呼んで頂戴。私もまだ冒険者は続けるつもりだから、機会があればそっちでも……ね」


「もちろん俺もだ。セロはどうすんだ?」


「俺か……」




 正直、マジックナイツが解散した後の事など微塵も考えたことがなかった。


 しかし、今更冒険者以外の道は考えられない。かといって、無職っていうのも嫌だ。一生遊んで暮らせるほどの金はあるのだが。




「そうだな。俺もどこかで冒険者を続けるよ。冒険者以外の道に宛がある訳でもないしな」


「そうだよなぁ。ここまで来たらもうこの道しかねぇよな」




 俺の言葉にダルツが賛同する。「私は研究職の知り合いがいるけどね。あんた達は行き当たりばったりすぎよ」なんてレミアムに突っ込まれたりしながら、賑やかな中にどこか湿っぽさを残して『マジックナイツ』は解散したのだった。




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