第3話
二人が待っている街の近くの森へ帰ってくると、既にダルツは帰ってきていたようで、気を取り戻したリーダーと何かを話し合っていた。
さらにレミアムは杖の調整をしていて、誰もこちらに気づく気配はなかった。
「お待たせ」
「ん?あ、おかえり。報告はどうなったの?」
ようやく俺に気づいたレミアムが返事をした。普段は街の外ではいつ魔物に襲われるかわからないため常に気を張るのが冒険者の習慣なのだが、それすら疎かになるくらいにはレミアムもショックを受けているようだった。
「問題なしだ。報酬は後日ギルドにということで決まった。ダルツの方は?」
「ダルツも問題なかったみたい。元々あの依頼以外にろくな依頼はなかったからね。「助かりました。次の街でも頑張ってください」だって」
「次の街……か」
俺がそう呟くと、レミアムは杖を眺めながら固まってしまった。レミアムはパーティーに女が二人だけだったということもあり、エリンとはかなり仲が良かった。その分だけ、特に堪えているのだろう。
逆にダルツはそれなりに立ち直れているようで、リーダーに気を使うくらいには回復していた。
俺は、せめてレミアムが立ち直るまでは待つべきかと判断し、「ちょっと出てくる」と言って周囲の警戒に当たることにした。
体を動かして、仲間の死のことを考えないようにしたかったからなのかもしれない。
周囲を探索していると、さっそく何かを発見した。
「あれは……オークと森狼か?」
どうやら俺が発見したのはオークと森狼が縄張り争いをしている所だったようで、オークと森狼はこちらに気づくことなく争いを続けていた。
オーク一匹に対して、森狼は三匹。相性を考えても、森狼が不利だろう。現に、森狼はオークを前に何もできないでいた。
なので俺は、森狼を援助するようにオークに向かって魔術を放った。
「『アイススピア』」
「グガ…?」
俺の声に反応するオーク。しかし、こちらを振り向いた時には既にアイススピアはオークの目の前まで迫ってきており、狙い通りにオークの脳天へと突き刺さった。
「グガッ!!!!アアア!!!」
俺の乱入に怒り心頭といったオークは、目標を俺へと変えると棍棒を振り回しながらこちらへ突進してきた。
オークを注視しながらちらりと森狼の方を見ると、オークとは違って即座に退散を決めたようで、一目散に逃げていっていた。森狼をここから仕留めることは簡単だが、逃げていくというなら狩る意味もない。俺は、森狼は無視してオークに狙いを定めた。
「『エレキショック』」
「グガアアアッ!!!」
オークの苦手とする雷魔術を流し込む。それに耐えきれなくなったオークは、断末魔を上げながら気絶した。
俺は地に伏せたオークに対して再び『アイススピア』を急所に当て、とどめを刺した。
「……」
オークと戦ったことで先のヘルグレアとの戦いをぼんやりと思い出した俺は沈むように黄昏ていたのだが、ふと気がつくと森狼が逃げていった方を眺めていたのだった。
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