第2話
街へ戻る前にリーダーを除いた三人で話し合った結果、街には帰らず、俺が街への報告。ダルツは予定を変更してこの街をすぐに離れることをギルドに連絡。レミアムとリーダーは街の近くで待機ということになった。
俺は街への報告を担当することになったわけだが、ヘルグレアの鎧───いや、そもそもあそこが魔王軍幹部の城だったということ自体隠蔽することにした。
それには理由があり、俺達に依頼をしてきた街……というか、この街が所属している国が理由だった。
この国は『カザレア』という国で、恐らく俺達のことを敵視している国なのだ。
何故かというと、俺達マジックナイツがSランクパーティーであり、カザレア出身のSランクパーティーもいるからだ。
Sランクというのはその通りパーティーの実力を示したランクのことで、この世界屈指の実力に加え、世界に五チームまでしか認められていないといういわばスーパーエリートだ。
ギルドは国とは関係の無い機関なのだが、それでもやはり自国の支部出身のパーティーを贔屓するという風習はある。それは、他国の支部出身のパーティーとの競争意識があるということだ。
先程レミアムが「こんな国」と言っていたのもそういう意味で、依頼が嘘だったことを考えても、マジックナイツに潰れてほしいとまでは行かなくてもある程度ダメージを与えたかったのだろう。
そして今回の件だが、まずカザレアが魔王軍幹部の城と知っていた可能性は限りなく低い。それほどの自体なら、早急に国内やギルドに情報が共有されるはずだ。魔王軍幹部となると、強力な魔物を生み出す能力や既にその地域に存在していた魔物達を強化する能力がある。そんな魔王軍幹部の城が街の近くにあるということを知れば、どんな街であろうと国内にでもギルドにでも援助を求めるだろう。
だから、せいぜい「最近かなり強い魔物が現れたから、近くにいたあいつらに討伐させよう」くらいの考えだったはずだ。討伐してくれればそれはそれで良いし、失敗して少しダメージを負ってくれれば自国出身のSランクパーティーと少し差がつく。出身地での競争意識と言っても、その程度の話なのだ。
そんな予想を立てながら歩いていると、程なくして街の長の城へと辿り着いた。
「マジックナイツのセロだ。オークキングの討伐の件の報告に来た」
ギルドカードを提示しながら門番にそう伝えると、早速街の長の元へと案内された。
「よく来てくれました。それで、討伐の方はどうなったのですか?」
そう聞く街の長の顔は少し嬉しそうな顔をしていた。恐らく、報告に来たのがリーダーじゃなくて俺だったからだろう。
街の長の肩を持つ訳では無いが、嬉しそうなのはまさかパーティーメンバーが死んだとは微塵も思っていないからだろう。事実、俺達は二人の死という犠牲を払いながらもワンパーティーで魔王軍幹部を討伐出来たのだ。それ程にSランクパーティーというのは強い。
街の長に怒りをぶつけるのは簡単だが、そんなことをしたら下手すると国の問題にもなりかねない。Sランクパーティーの壊滅というのは、それ程までに影響力があることなのだ。俺達はその自覚を強く持っていなければならない。
「討伐自体に問題は無かったが、オークキングでは無かったぞ?アンデッドの……あれはなんだろうな、ゴースト系のやつだった」
アンデッドのゴースト系統という言い訳を選んだのは、討伐証拠品が残らないからだ。差し出せるものが何も無いので、こいつらだったということにするのが一番楽なのである。
「……それはすまない。こちらの調査不足だ。ゴースト系だったなら、今から部隊を派遣して討伐されているか確認させてこよう。万一のこともあるから、同行を願いたい」
「いや、俺達は急用で今すぐにでもリリバの方面に向かわないといけないんだ。同行は出来ないな。それと、報酬は討伐確認が終わったらギルドの方に入れといてくれ」
証拠品が無いとなるとこうなるのが普通なので、用意してきた言い訳をして同行を回避することにした。少しわがままな要求だが、これはSランクパーティーの特権というやつだ。
ちなみに、リリバというのはここより東にある街のことで、カザレアとリリバの間には龍の谷と呼ばれる危険地帯がある。リリバの方面と言ったのは、パーティーの壊滅理由を龍の谷にするためだ。
「わかりました。しかし、リリバの方面ですか……お気を付けて」
「ええ。それでは」
依頼も一応クエストとしてギルドを経由して受けていたため、ギルドの方に入れとくというのもすんなり飲んでくれた。
俺は城を出て、リーダー達が待っている所を目指して歩き始めた。
これからどうするべきか。どうしたいのかを考えながら。
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