第122話 チョコレートムースケーキ
ナギは、特大のチョコレートムースケーキを切り分けて皿にのせて渡した。
全員がチョコレートムースケーキを頬張る。
「上手い」
「最高だな……」
「……言葉がない」
エヴァンゼリン、クラウディア、アンリエッタがケーキを食べながら言う。
最高のチョコレートが、上品なムースとなってそれぞれの味覚を刺激する。チョコレートのくせのある強さが消え、上品な甘さに仕上がっていた。
ムースはとろけるように柔らかい。
全員の味覚と嗅覚、五感の全てが、溶けるような甘さに包まれた。
暫く忘我したようにチョコレートムースを食べる。
そして、暫くして作戦会議を開始した。
「カイン皇子は英雄として名高い御方だ。あの御方に助力を請い、五カ国を纏め上げて頂くのは良い方策だと思う」
クラウディアが、チョコレートムースケーキを頬張りながら言う。
「それとパンドラ王女にも助力を願おう。パンドラ王女は御年10歳であられるが聡明だし、強い。まとめ役として心強いと思う」
ナギが答える。
「一番良いのはカイン皇子が、五カ国軍の総帥。パンドラ王女が、副総帥。イシュトヴァーン王が、後方支援のまとめ役、と言った所かのう?」
レイヴィアが、モグモグとケーキを食べる。
「……良い形」
アンリエッタが、その組織案に賛成する。
その後も全員が思い思いに意見を出し合う。
「ところで、肝心の八神光輝とエリザベート・バートリーじゃが、こいつらはどう倒せば良いかのう?」
レイヴィアが、桜色の双眸に憂慮の影を灯した。
「……手強い相手……。相性が悪い」
アンリエッタがぼろりと言う。
「確かにボクも苦手だよ。何せ、攻撃に魔力反応がないからね」
エヴァンゼリンが短めの髪を手で梳いた。
如何なる大敵でも、攻撃、防御、動作にはほぼ全て魔力が関わる。だから、敵の魔力を感知して戦うことにエヴァンゼリンたちは慣れていた。 だが、八神光輝には魔力を殆ど感じなかった。
近代兵器を召喚するという魔法は僅かしか魔力を使用しない。
だが、その威力は絶大。
しかも、地球の近代兵器に関する知識が、エヴァンゼリンたちにはない。
強い弱いの問題ではなく、相性が悪過ぎるのだ。
「エリザベート・バートリーの時間操作も厄介じゃしのう。あいつらがレベルアップしたら手に負えなくなるやもしれん……」
レイヴィアが珍しく気弱な顔をした。
「大丈夫です。俺があいつらを倒します。いや、必ず倒さないといけません。特に八神光輝。あいつの能力は汎用性が高すぎる。あまりに危険だ。あいつがこれ以上強くならない内に仕留めないと人類に勝ち目がなくなる」
ナギが、言う。何せ地球の近代兵器を使用できるような異常な能力者だ。あんな能力者を野放しにすればどうなるか分からない。
また八神光輝の能力の全容は分かっていないが、もし、核兵器を使用されたら、人類側の国家群が崩壊してしまう。
「では八神光輝とエリザベート・バートリーはナギに任せて良いか?」 レイヴィアが尋ねる。
「やります。俺しか無理でしょう」
ナギならある程度は地球の近代兵器の知識がある。ナギしか倒せないであろう。
「後は、カイン皇子とパンドラ王女に会って話がしたい所ですがね。しかし、パンドラ王女はともかく、カイン皇子は父親を亡くされたばかり。話は当面無理かな……」
ナギが言うと、エヴァンゼリンが口を開いた。
「いや、多分すぐに会えるだろう」
「うむ。父親である皇帝陛下が亡くなられたのは衷心よりお悔やみするが、一国の皇子が戦争中に身内を亡くした位でふさぎ込むようなことはあるまいよ」
クラウディアが指摘する。
「……戦争なんだから家族が死ぬなんて当たり前」
アンリエッタも同意した。
「そう……か?」
ナギは少し当惑した。やはり、戦時だけある。地球人である自分の感覚とは違うとナギは思った。
だが同時に、
(確かに、戦争中の国家指導者階級である王族、皇族が、家族が死んだくらいで塞ぎ込むようでは戦争に勝てないだろうな)
とも思った。
「明日にでも、カイン皇子に謁見を賜ろう。そこら辺の話は私が通しておく」
クラウディアが言った。
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