第21話 シリス大森林

 二日後、ナギ達はシリス大森林に到着した。馬車をシリス大森林の手前におき、準備を整えるとシリス大森林の内部に入る。


 シリス大森林を進んで、1時間ほどすると突然、小鬼(ゴブリン)の集団が現れ、戦闘が開始された。ナギ、セドナ、バルザック、エリザ、ルイズは、円陣を組んで小鬼(ゴブリン)を迎撃する。


 ナギが長剣(ロングソード)を、水平に薙いで小鬼(ゴブリン)の首を斬り飛ばす。セドナが《白夜の魔弓(シルヴァニア)》で射殺す。瞬く間に5体の小鬼(ゴブリン)が、絶命して地面に倒れ伏す。

 

バルザックが怒声を上げながら戦斧で小鬼(ゴブリン)の頭蓋を砕き、エリザが杖から火球を放って小鬼(ゴブリン)を燃やす。


 ルイズは小盾(バックラー)と細剣(レイピア)を器用に操り小鬼(ゴブリン)の頸動脈を切り裂く 20分ほどで小鬼(ゴブリン)の群れを殲滅した。ナギは長剣ロングソードに血振りをくれながら、ふと思う。


(戦闘中だけ身体能力が向上した気がする……。どうしてだ?)


不思議に思っていると、メニュー画面が開き頭に声が響く。


『 一角猪ホーン・ボアを食べたことで一角猪ホーン・ボアの筋力を取り込みました。現在貴方は戦闘中に限り一般的な成人男性の3・7倍の筋力を発揮できます。


これは恩寵スキル《食神ケレスニアンの御子》の効果です』


(一般的な成人男性の3・7倍? そりゃ凄いな。でも、あまり《食神の御子》の力を使うと俺が死んじゃうのでは?)


ナギは若干怯えながら思うと、メニュー画面の声が頭に響いた。


『貴方が、絶命しないように、大精霊レイヴィア様と私が調整しております』


モンスターを数多く討伐し経験値を蓄積してレベルアップすれば、さらに多くの《神力》を引き出せるようになり戦闘能力が向上します。』


『この《神力》の調整と制御は、大精霊レイヴィア様の権能によることが大きいので、後ほどよくお礼をいうことを奨励します』


(細かいとこまで、フォローありがとさん)


ナギは黒瞳に苦笑を称えると、小鬼(ゴブリン)の死体を裂いて魔晶石を取り出しにかかった。

全員で43体の小鬼ゴブリンの魔晶石を取り出すと、バルザックが戦斧の柄で肩を叩いた。


「いやぁ~。ナギとセドナ嬢ちゃんと組んで良かったぜ。やっぱり、人数が増えると戦闘が楽だな」

「ああ、いつもの5分の1くらいの労力ですんでるさね」


エリザが煙管を煙を吐き出す。


「これなら、いつもの10倍くらい、薬草が採れるかもね。さあ、早く行こう。あと30分も歩けば、最初の群生地があるよ」


 ルイズが明るい声を出した。


30分後、薬草が生えている群生地の目の前に来た。


ナギが視認すると確かに目当ての白い花が咲いた薬草が生い茂っている。


だが、問題があった。


薬草の群生地にモンスターが2体徘徊していたのだ。


ナギ達は岩場に隠れてモンスターを観察する。


「厄介だな。よりによって大刃蟷螂(ブレイダー・マントス)かよ」


バルザックが唸る。

大刃蟷螂(ブレイダー・マントス)は、体長4メートルの巨大な蟷螂型のモンスターで、手が鋭利な刃になっている。


個体としても強いがそれ以上に警戒すべきは超音波を発して仲間を呼び寄せる習性があることだ。


一度、仲間を呼び寄せると短時間で40体、50体の大刃蟷螂(ブレイダー・マントス)が集まりだす。


「さて、バルザック。どうするさね? 撤退するかい?」


エリザが問う。


「でも~、ここを通らないと、他の群生地にも行けないよ~?」


ルイズが岩場からわずかに顔をだして大刃蟷螂を見やる。


「あの……。大刃蟷螂(ブレイダー・マントス)に仲間を呼び寄せさせずに倒せれば良いのでしょうか?」


セドナが問う。


「ああ、だが、それは難しいだろうな。一体なら、何とかなるんだが2体となると……」


バルザックが言うと、セドナが微笑した。


「大丈夫です。任せて下さい」


 銀髪のシルヴァン・エルフが、優雅に身をひるがえして岩場の上に立った。

 そして《白夜の魔弓》で、2本の矢をつがえて射る。

 2本の矢が白い閃光となって宙を貫き、大刃蟷螂(ブレイダー・マントス)の頭部に命中した。

矢は大刃蟷螂(ブレイダー・マントス)の頭部を粉砕した。2体のモンスターは悲鳴すらあげる間もなく絶命して大地に倒れた。ナギを含めて全員が、驚愕に目を見開いた。 


全員がセドナを激賞した。


セドナは頬を染めて恥ずかしそうに俯いたが、尖った耳がピコピコ動いているので、嬉しいのだということがナギには分かった。


ナギはクスリと笑って、セドナの銀色の頭を撫でた。


全員で薬草を採り尽くすと、次の群生地に移動することにした。


「ねえ、バルザック。セドナちゃんが、こんなに強いんだからさ~。もっと森の奥に入っても大丈夫じゃない~? 強いモンスターがいても、セドナちゃんなら退治してくれるよ~」


ルイズがお気楽な口調で言う。


「ダメだ。油断禁物だ。セドナ嬢ちゃんは確かに強い。だが、個人の戦闘力に頼るのは危険すぎる。安全に任務をこなして、確実に全員帰還することが大事だ」



バルザックが存外理知的なことを言うので、ナギは関心した。やはり、リーダーを任せられるだけのことはある。


「さて、午後1時35分か……。今の所順調だな」


バルザックが懐中時計を取り出して時間を確認する。


(懐中時計があるのか)


ナギは少し驚いた。文明レベルにあわない技術だ。


(もしかしたら、こういう技術が他にもあるかも知れないな。覚えておこう)


ナギがそう思った時、森の奥から耳を聾する轟音が響いた。


ナギ達の鼓膜と神経に鋭い痛みが走り抜ける。











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