第19話 至宝の盾
巨漢はナギに、
「俺はバルザックだ。よろしくな。チーム名は、《至宝の盾》だ」
と、自己紹介した。バルザックの仲間には、女性が2人いて、バルザックを含めて3人で冒険者をしているそうだ。
「私は、エリザさ。よろしく」
エリザと名乗る女性が、煙管をふかしながら言った。
エリザは18歳。鉄色の髪と瞳をしており、身長は170センチほど。
大きな胸に、細い腰の官能的な肉体をもつ美女だった。
職業は魔道士だそうだ。
「私は、ルイズだよ~。よろしくね~」
ルイズは、14歳。
金茶色の髪と瞳をした可愛らしい少女で、快活な印象を見る者に与える。
軽装だが、高価な胸鎧をつけ下は短パン。剣帯には細剣(レイピア)をつるしていた。
職業は、魔法剣士だそうだ。
「そして、俺様がバルザック。見ての通りの、男前の戦士で頼りになるリーダー様だ」
バルザックが巨躯から野太い声を発すると、エリザが口から煙管の煙をバルザックに吹き付けた。
バルザックが、ゴホゴホと咳き込む。
「二度も名乗らなくて良いさね。面倒くさい……」
エリザが気怠るそうに言った。
「アハハぁ、バルザックが男前かァ。まあ、熊の世界では男前かもね~」
ルイズがクスクスと口元を隠して笑った。
ナギとセドナもつられて笑い、自己紹介をした。
ナギはセドナが奴隷ということは伏せて、2人で冒険者をしていると答えた。
「よし、んじゃあ、早速クエストの内容を説明するぜ。俺達と一緒にクエストを行うかどうかは、その後判断してくれ」
バルザックがニヤリと笑った。
「今回のクエストは単純でな。森に行き薬草を採集することだ」
「薬草の採集ですか?」
ナギが問う。
「そうだ。だが、森にモンスターがいるから、そいつらを倒しながら薬草を採集することになる」
バルザックによれば、森の奥深くに入ると高レベルのモンスターが数多く存在する。だが、今回は森の深部には入らないため危険は少ないだろうとのことだ。
「どうだい? 一緒にやらねェか? 報酬はキッチリ山分けだ」
「……ふむ」
ナギは顎に手を当てた。
(悪くない条件だ)
と思った。バルザック達は見たところ、手練れで冒険者稼業になれている。こういう手合いと冒険をすれば得ることも多いだろう。
ナギはセドナに視線を投じた。ナギの黒瞳とセドナの金瞳が触れ合う。
それだけで意志が通じ合った。
「やりましょう」
「よし! 決まりだ! よろしくな、ナギ、セドナ嬢ちゃん」
バルザックは分厚い大きな手で、ナギの手をガッシリと握った。
ナギはバルザックから手を離すと、
「一つ、聞いていいですか?」
と言った。
「なんだ?」
「どうして、僕らをクエストに誘ったんですか?」
ナギが問うと、バルザックが豪快に笑った。
「理由は二つある。第一におめえらが、ソコソコ腕が立つことは見れば分かる。ある程度の戦闘力があるヤツらと組みたかった。
2点目はナギ、お前さんの料理の腕に惚れた。お前さんと組めば、クエスト中に、旨い飯が喰えるからな。何せ、うちのエリザとルイズの作る飯ときたら豚のエサにもなりゃあしね……」
バルザックが言い終える前に、エリザとルイズが蹴りと拳をバルザックの背中と脚にぶち込んだ。
「豚のエサとはなにさね」
「失礼すぎるよ! 毎回、一生懸命つくってあげてるんだよ?」
エリザとルイズが、憤然とした。
「いや……、作ってくれるは感謝してんだぜ? でも、本当にお前らの料理だけは……」
バルザックは大きな頭をふると、ナギに小声で言った。
「本気で頼むわ。旨い飯が食いてェんだ……。せめて、人間が喰える飯を……頼む。……本当に頼む……。頼みます……」
バルザックの碧眼に浮かぶ苦悶に、ナギはいささか同情しながら点頭した。
ナギとセドナ、そしてバルザック、エリザ、ルイズは、冒険者ギルドを出てクエストのための準備を始めた。
手分けして、クエストに必要な物資の調達を始める。
まず、ナギとセドナは武器屋に行った。ナギは長剣を5本買った。戦闘中に壊れた時のスペアだ。
そして、鉄製の胸鎧とローブを買った。ローブは分厚く頑丈な生地で出来ており、森の中を動く際に枝葉などから体を防御してくれる。また投石や、矢などをローブで弾くことも出来る。
セドナも、鋼鉄製の白い胸鎧と森の歩行に適したブーツを予備を含めて3足買った。
次に、医療品を買いその後、市場に行って食料の調達を始めた。
「ナギ。こいつが食料の調達費だ。お前さんの好きなように使ってくれぃ」
バルザックが、革袋の財布をナギに手渡した。
「俺とエリザは馬車の手配をする。ルイズと一緒に頼む」
ナギは了承して財布を受け取った。
「よし。じゃあ、私が食べたいものを言うから、ナギ君が良い材料を買ってちょうだいね」
ルイズが朗らかに言った。ナギは苦笑して、
「バルザックさんや、エリザさんの好物ではなくて、自分の食べたいもの優先ですか?」
「良いんだよー。私の好物とバルザックとエリザの好物は同じだからね」
「なるほど、そうですか」
ナギは生真面目な顔で言った。
「あー。ナギ君、敬語は使わなくて良いよ? 私のことはルイズと呼んでセドナちゃんもね」
ルイズが言うとナギとセドナは微笑し同時に頷いた。
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