第10話 冒険者ギルド



ナギとセドナは宿屋を出ると、すぐに古着屋に行った。セドナが着る服を買うためだ。


「あの……ナギ様は、ど、どのような服が好みですか?」

 

セドナが、頬を染めながら尋ねた。


ナギは困った顔をして腕を組んだ。女の子の服なんて、まったく分からない。それにセドナは綺麗すぎてどんな服が良いのか分からない。


ナギは散々迷ったあげく、正直に答えた。


「ごめん、セドナは綺麗すぎて何を着ればいいのか分からない……」


直後、セドナの頬がリンゴのように赤くなった。 


「そ、それは……は、裸になれということ……でしょうか……?」

 

セドナが恥ずかしそうに俯いた。


「違う! 店のオヤジが不審者を見る目つきで見ているから止めてくれ! そうだ白、白が良いと思う!」

 

白は清楚だからな! 純白の白! 僕は女の子のパンツも、白が好きです。


「はい。分かりました。白ですね!」

 

セドナは白い女の子用の服を買った。

 

良かった。これで俺は犯罪者として通報されずにすんだ。



セドナは白い上着に、白いスカート、白いローブ、そして、革製のブーツを選んで店内で着替えた。

 


思わず見惚れる程に美しい。まるで妖精のようだ……。いや、シルヴァン・エルフとか言っていたけどエルフだったっけ?

 

ふと、俺がセドナの尖った耳を見ると、セドナは頬を染めて俯いた。

 

シルヴァン・エルフとは何なのだろうか?

 

いや、詮索は止めておこう。何かデリケートな問題な気がする。

 

 ナギとセドナは、古着屋を出ると武器屋に向かった。

 

セドナは弓矢と双刀の短刀術が得意らしいので、弓矢と短剣を6本買った。6本買ったのは予備だ。

実戦では武器は壊れやすい。多ければ多いほど良い。


アイテムボックスもあるから、持ち運びに邪魔になることもない。

 

武器の装備が終わると俺とセドナは冒険者ギルドにむかった。

 

冒険者ギルドは広壮な煉瓦作りの建物だった。ギルド内に入ると大勢の冒険者達がテーブルについていた。


外観から予想していた通り広い。


 三階まで吹き抜けになっており面積は小学校の校庭くらいある。


 一階はレストランになっているようで、多くの冒険者達が酒を飲み食事を楽しんでいる。


 受付があったので、近づくと受付嬢のお姉さんが微笑してくれた。


 年齢は20歳くらい、優しそうで胸が大きい年上の女性だ。


 何ともいえない色香がある。


「初めまして。冒険者ギルドへようこそ。どのようなご用件でしょうか?」


「俺とこの子の登録をお願いします」


「畏まりました」

 

 受付嬢がカウンターに四角い板を出した。水晶のように輝く板で白く淡く輝いている。


「これは?」


「登録のための魔導具です。手をおいて頂けますか?」

 

 俺は頷くと掌を水晶板おいた。すると水晶板が強く光った。


「お名前を教えて下さい」


「相葉ナギです」


「終わりました。相葉ナギ様」


 随分簡単に終わったな。


 次にセドナが登録を完了した後、俺は受付嬢に初心者向きの仕事を尋ねた。受付嬢が教えてくれた仕事は、一角猪ホーン・ボア退治だった。


 一角猪とは猪に似たモンスターで、名前通り頭部に鋭利な角が生えているらしい。


「低レベルで倒しやすいモンスターですので初心者には最適ですが、十分に注意して下さいね?」

 

 と受付嬢のお姉さんに注意された。親切な人だ。美人だしな。


 俺はセドナと古都ベルンを出た。

 

 30分ほど歩いて平原に出ると、俺はセドナと模擬試合に申し出た。

まず、セドナの戦闘能力を見て危険なようなら戦闘には参加させないと告げた。


「分かりました。ナギ様に私の強さをお見せすれば良いのですね?」


「その通りだ。俺が認めない限り、絶対に戦闘には参加させん!」

 

 模擬試合の内容は素手での勝負。

 

 俺は腰を落として半身に構え、左手をやや前に突き出し、右手を顎の前においた。【津軽真刀流】の構えだ。

 

 両手が開いているのは、目潰し、金的を即座に行うため。


《津軽真刀流》には禁じ手はない。戦国時代に作られた敵を殺すためだけに特化された武術だ。俺に対峙したセドナは、猫のように優美な仕草で重心を低くした。

 

 俺に対峙するセドナの構えは悪くない。存外、強いかもしれないな。


「来い! 俺がお前に武道の厳しさと言うモノを教えてやる!」


「はい、参ります」

 

 セドナの黄金の双眸が光った。

 

 次の刹那、セドナの小柄な体が、俺の視界から消えた。

 

 いつの間にか、セドナの体が俺の右横に移動していた。

 

 衝撃音が弾け、俺の体が空中に吹き飛ばされた。セドナの掌底が俺の脇腹に激突したのだ。

 

 俺は2メートルほど中空を飛んだ。セドナの右足が鞭のようにしなり、回し蹴りとなって俺の側頭部を叩いた。

 

 俺は地面に叩き付けられた。


「……ぐぅうう」

 

 俺は仰向けになって大の字に横わたった。

 

 ダメージを食らった俺を見てセドナが慌てふためいた。俺がここまで弱いとは思っていなかったらしい。


「うわぁあああ、申し訳ございません! ナギ様!」

 

 セドナが、俺に泣きながらすがりついた。 


「……セ、セドナ……」


俺はセドナの手を握った。


「な、なんですか? ナギ様……」


「見事だ。俺が教えることはもう何もない……」


「とくに何も教わってません!」

 

俺は心に深い傷をおって目を閉じた。死にそうです。


30分後、ようやく回復してきた。死なずにすんだことに感謝します。


「すみません。すみません……」

 

 セドナが泣きながら謝罪し出した。


「いや……、俺が悪いんだ。気にしないでくれ……」


「そんなことありません。ナギ様は、悪くありません。ただ弱いだけです!」


「生まれてきてごめんなさい。俺は自殺します。亡骸はゴキブリに喰わせて下さい」

 

 俺が短剣を取り出して切腹しようとすると、セドナが腕を取って止めてきた。



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