助けを求めるということは
「おかえり、タク」
午後の講義をサボって家に帰ると、寝癖でボサボサの頭を掻きながら美少女が出迎えてくれた。
ブカブカのシャツを無防備に着こなす姿は、側から見れば同棲している彼女に思われるだろう。
ボクとしても中身が抄であることを除けばそこまで悪い気はしない。
「ただいま」
「何か進展はあったか?」
「まあ、進展というか……なんというか」
「なんだ歯切れが悪いな。死にたくない理由が見つかっちゃったとか?」
「三日後までに死ぬ理由を見つけられなかったら問答無用で殺されることになった」
「なんじゃそりゃ……」
ボクは大学での死ね神とのやりとりを抄に説明した。
期限が追加されたこと。
遺言を必要とする理由。
死ね神が叶える願いの条件。
「……なあ、タク。状況悪化してるし、悪魔祓いとか真剣に考えた方が良くないか?」
「それも少し考えてみたんだけど、止めた方がよさそうな気がする」
「なんでだ? オカルトはその道の専門家に任せた方が良くないか?」
「死ね神に勝てるような人間がいるとは思えない」
「あー……」
瞬時に現れて音もなく首を落とす上に、蘇生させたり転生させることもできる。
常時こちらを監視しているようで不意打ちも効きそうにない。
そんなやつに敵う人間がはたして存在するのだろうか。
仮に存在したとして、ボクが三日以内にその人間と巡り会える確率は現実的だろうか。
奇跡的に神懸った霊能者と巡り合えたとしても、自分が助かる為に第三者にリスクを負わせるというのもあまり気持ちのいいことではない。
既にボクは抄を巻き込んでしまっているのだ。
これ以上被害者を、それも死者なんて出してしまったら……。
「でもダメ元で探してみないか?」
「どうやってだよ。考えなしに探しても自称の役立たずか、もしくは詐欺師しか見つからなそうだけど」
「インターネット掲示板に書き込む」
「それ意味ある? 事態が好転するとは思えないんだけど」
「まあ特にデメリットがあるわけでもないし、やるだけタダってことで……ほい投稿」
こちらの言い分も聞かないままに抄はスマホを操作してこちらに画面を見せつけてきた。
その画面には『いきなり死神に付きまとわれ始めたんだけど』と大きく題字が書かれており、その下に一番目の書き込みとしてボクの現状が書かれていた。
「……これ、個人を特定できるような情報書いてないよな?」
「おいおいネットリテラシー世代舐めるなって。小学校で習ったぜ。一度ネットに挙げた写真は完全削除は不可能だってな」
「……ショウのSNS、顔写真と在学している大学まで書いてあったよな、確か」
「まあそういうこともあるな」
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