(三)

 私たちは、ホテルを出て湖畔を歩いて行った。外灯などない暗い道を歩いて行ったが、積もった白い雪が闇の色をわずかばかりだが打ち消してくれていた。

 ボート小屋の出入り口から湖の縁を進んで行く桟橋を、滝沢に先に行かせて歩いて行った。そして釣り場までやってきた。

 滝沢は「本当にやるの?」と振り返った。

「やっぱり本気じゃないのね……」

 私はそう言って少しすねて見せた。

 滝沢は「オーケー」と言ってダウンのロングコートの下で服を脱ぎ始めた。覚悟を決めたようだった。


(続く)

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