(二)-20

「そうじゃなきゃ、結婚はできないわ。そうしなければ、両親に紹介できないもの」

 私はそう言って滝沢を見た。私の両親はすでにいない。それどころか唯一の家族でもある姉も今はもう亡い。この男のせいで。

 滝沢はしばらく私の視線を受け止めてから、「わかったよ、さっさと行って済ませよう」と吐き捨てるように言った。

 その言葉に安心した。私は今までの二年間、この男との信用を築いてきた。ここまで来るのは精神的にもキツかった。しかしこれで計画の実行に王手をかけるに至った。

 そうして私たちは外に出る準備をした。手提げのバッグの底に予め入れておいたカナヅチを滝沢に見られないようにしながら、タオルやホッカイロを彼に見せつけつけ、安心させるようにしながらカバンに詰めていった。そしてホテルを出た。


(続く)

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