第23話 スーパー懺悔タイム その1

 サイド:クリート



 翌日――。


 顎骨を粉砕された僕は、昨日の内に治療のために公爵家の実家へと戻ってきていた。


 父上が雇った高名な治癒師の治療を受けたものの、顔の神経がオシャカになっているということで、表情がぎこちなく、常に顔が醜く引きつったようになっている。


「ぼ、ぼ、僕の顔が……美しい顔が……こ、こ、殺して……殺してやる! 必ず殺してやるぞクラウスっ!」


 全身鏡の前に立ち、僕は怒りに肩を震わせながらそう呟いた。



 ――しかし、奴の力は本物だ。



 まさか、神装機神搭乗戦で生身に敗北を喫するなんて……。


 どう考えても、まともにやっても勝機はない。


 父上の力を使って闇に葬るにしても、まさか正規の軍――神装機神を使うわけにもいかないだろう。


「不意打ちなら……いや、それじゃ無理だっ! なら、どうする? 毒……そうだ! 毒ならっ!」


 そうだよ!


 なんでこんなことに気づかなかったんだ!


 学食の調理師に金を握らせて、あるいは権力で脅して毒を混入させれば良い!


 その後、調理師は口封じに殺してしまえば証拠も残らない!


 天才だ……やはり僕は天才だ!


 そうなんだよ、名家に生まれ、才能にも美貌にも権力にも恵まれたこの僕に不可能なんてないんだ!


 男爵家の5男坊ごときが、公爵家に逆らった罪――死をもって償ってもらうからなクラウスっ!


「生憎だが、余に毒は効かんぞ?」


 後ろを振り向くと同時、僕は驚きのあまりに腰を抜かしてその場で尻もちをついてしまった。


「な、何故ここにっ!?」


「おかしなことを言う。貴様はたった今、余に不意打ちをする算段を立てていたのであろう?」


「……え?」


「貴様を放っておけば100%報復に来る。その前に不意打ちに来ただけだ。面倒ごとはこれ以上御免だからな」


 そうしてクラウスは懐から短剣を取り出した。


「こ、殺すのか!? 僕を? 公爵家の僕を? そんなことをすれば父上が黙っていないぞっ!」


 僕の言葉を聞いて、クラウスは持っていた短剣を床に放り投げた。


 どうやら、父上という言葉を聞いて、考えを改めたらしい。


「そうだ! しかし、悔い改めたとしても、こんなことをしようとしてタダで済むと思うなよっ! お前みたいなやつは――」


 と、そこでクラウスは僕の言葉の途中でピシャリとこう言い放った。


「慈悲をくれてやる。選べ」


「……選ぶ?」


「その短剣で自害か、それとも――」

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