4話
駅へと続く道すがら、公園に目を配る。冬にも関わらず小学生であろう子供達が大声ではしゃいでいた。
その中の一人の男の子が転んだ拍子に泣き出し、周りの子供達が集まり、囃し立てる。
手助けしようと足を踏み出すが、次の一歩が出なかった。あの場で私自身には何も出来ないと本能が知らしめていた。
手足は時が止まったかのように動かなくなっていた、心中の葛藤は子供の涙声を聞いて尚体を動かすには至らなかった。
一回り体格の大きい女の子が囃し立てていた子供達に割り込み、水筒の水で足の傷を流す。
応急処置を施す彼女を見て私は安心した。女の子が傷に絆創膏を貼り、男の子の泣き声がすすり泣きに変わり落ち着きを取り戻した所で無力感と共に自由が帰ってきた。
これで良かったのだと自分を誤魔化しその場を去ろうとするが、男の子の手当てをしていた女の子が振り向き様に此方と目が合う。
彼女の優しさに満ちた笑顔は美樹によく似ている。そう三咲ちゃんだ。
三咲ちゃんは少し驚いた様子だったが子供達にじゃれつかれ、驚いた顔を先程の笑顔に戻す。
そうだ、と目的を思い出し、一抹の不安を持ちながら公園へと覚束無い足で向かう。
歩道と公園を区切る階段を上ろうと一歩を踏み出す、だが足は更なる一歩を嫌がった、先程と同じく何も出来ないと言わしめるかの様に。
視線を三咲ちゃんの居た所に合わせるが、姿は見えなかった。それに失望しながらも安堵した、仕方ないと諦められるからだ。
元の道へと振り返り公園を後にする。結局私は何も出来ない、それをまた体感しただけだった。
公園の木々が風で靡き、音を立てる。心地良い音で少しだけ救われた気分にさせてくれた。だが音と共に数枚の枯れ葉が飛んできた。服に当たり引っ付き取り除いた後も残骸が残る。
風が止み、枯れ葉も粗方払い終わった。まだ服に付いていないか確認しふと先程の事を思い出す。
憂鬱な気持になり、気力が無くなっていく様でとても散歩を続ける気にならなかった。
「葉っぱ、付いてるわよ」
振り返り顔を見る、枯れ葉を摘まむ彼女は三咲ちゃんだった。
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