第4話 豆狸、鼻白を化かす

豆狸は小さな山にある餌場に、ハクビシン鼻白が入れないようにまじないを掛けてまわり、おかげで痩せ狸達はお腹いっぱい食べる事ができるようになりました。



ハクビシン鼻白まじないの所為で餌場に近づけなくなり、どんどんお腹を空かせ始めました。



『美味しい~。』


『こんなにたくさん食べられるのは、久しぶりです。』


『ありがとうございます。豆狸まめだ様!

おかげさまで冬を越せそうです。』


『良かったのう。』



痩せ狸達は餌をたらふく食べれて、とても嬉しそうです。

餌場に近づけないハクビシン鼻白くやしくて仕方ありません。



5日ほど過ぎたある日の事……

お腹を空かしたハクビシン鼻白は、一匹の狸が柿の実を咥えて歩いているのを見つけました。



どうやら巣穴にエサを持って帰る途中のようです。

[しめしめ、アイツから柿の実を取り上げて食べてしまえ!]

と思い、狸の後を追いかけました。



狸はどんどん歩いて行きます。



ハクビシン鼻白は、必死に追いかけますが、お腹が空いているからか、なかなか追いつく事ができません。



ようやく狸に追いついた頃には、もうフラフラになっていました。

そんなハクビシン鼻白の方を見て、狸はニヤリと笑ったのです。



[!?]



そう…狸はわざとお腹を空かしたハクビシン鼻白に、柿の実を見せびらかしていたのでした。



怒ったハクビシン鼻白は、狸から柿の実を取り上げようと走りました。

すると狸はサッと、巣穴に逃げ込んだのです。



[バカな狸め!巣穴に逃げ込んでも無駄だ!

俺は、お前達の巣穴に入れるんだからな!!]



そう思って、ハクビシン鼻白が巣穴に入った途端……



ガチャン!!



後ろで何かが閉まる音がして、気がつくとハクビシン鼻白は、以前人間が仕掛けた罠にハマっていたのでした。



何と狸の巣穴だと思っていたのは、捕獲用ほかくようの罠でした。



『上手くいったのう。これでこの辺りも住みやすくなるだろうて…… 』



そうハクビシン鼻白が追いかけていたのは、豆狸まめだが神通力で作り出したまぼろしだったのです!



ハクビシン鼻白は、悔しそうに豆狸をにらみつけ、わなから出ようとあばれましたが、ビクともしません。



[チクショウ!どうなっているんだ!?

ここから出せ!!]



いくら叫んでも、豆狸まめだハクビシン鼻白の言葉は通じません。

しかし言いたい事は、だいたいわかります。



『そこから出したら、皆に迷惑じゃから大人しくしておるがよい。』



その様子を隠れて見ていた狸達は、大喜びで駆け出して来ました。



『『『やったー!豆狸まめだ様がハクビシン鼻白に勝ったぞ~!』』』



翌日…わなに掛かったハクビシン鼻白は、人間達によってどこかへ運ばれて行きました。



『ありがとうございます豆狸まめだ様!

私達、もう大丈夫です!!』


『お世話になりました。』


『この御恩は一生忘れません!この里の皆んなに語り継いでいきます。』


豆狸まめだ様、お元気で!』


『う…うむ…良かったのう。』



狸達は喜び、豆狸まめだにお礼を言いました。

その雰囲気に、とても『自分もここに住みたい。』とは言いづらい豆狸まめだでした。







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