4-45.ナイトメアウィザード討伐5 集結
「うわわわぁぁぁあ!?ルフト無理!そろそろ止まって!吐く!吐くって!!」
ぐちゃぐちゃの顔で叫ぶ遼を引っ張りながら、嬉々とした顔のルフトは俺と火乃花を見るとビシッと親指を立てる。
「ははっ!いいねぇっ!ビンゴ!」
そして、眼下にいる4体のナイトメアウィザードを見つけるとバトルジャンキーモードに突入した。ギラギラというかきらきらというか…とにかく楽しそうだ。
「よぉっし!龍人と火乃花もちょっとヤバそうだし、形勢逆転狙うよっ!遼、アレやって!」
「うぇぇえ…!………ん?龍人と火乃花?えっ。なにこの状況!?えっ!?ナイトメアウィザード4体?どうなって……うわぁぁぁぁ!」
ブンッとルフトに放り投げられた遼はナイトメアウィザードを軸にルフトと反対側へぶっ飛んでいく。
そして、示し合わせたかのようにナイトメア2体の攻撃が、壁にぶつかった遼へ集中する。
「うわっ!?ちょっと待っ…」
ズドドドドン!っと着弾。あちゃー。ありゃあ重傷レベルだな。
「あ…っぶないなぁもう!」
おぉ。魔法壁を張って防いだのか無傷だ。やるねぇ親友よ。
遼は双銃を構えると魔弾を連射する。…ん?魔弾の色が紫だな。もしかして…習得した属性魔法か。
紫の魔弾がナイトメアウィザードに着弾すると、モワモワしたものが一瞬見えた。何かのデバフ効果でもあんのか?
「ルフト!」
「へへっ!ナイス遼!」
ルフトは余裕の笑みでナイトメアウィザード4体の正面に着地する。
いや、流石にその行為は危険すぎるだろ!
「遅い…ねぇっ!」
パチンと指を鳴らしたルフトの周りに風球が出現し、次々とナイトメアウィザードに突き刺さっていく。
…あれ、風球ってか風砲弾だな。威力的に。
「ん…?」
ルフトの風砲弾で2体のナイトメアウィザードが…霧みたいに消えた。倒したのか?なんていうか呆気ないというか。
「まだまだ!」
弧を描く様に壁を走ったルフトの蹴りがナイトメアウィザード3体目の後頭部に突き刺さる。脚の周りに凝縮された風が、蹴り直撃の瞬間に解放されて蹴りの威力を跳ね上げてやがる…。ナイトメアウィザードは爆散。
戦闘センス抜群だね。
ともかく、これで残るのは1体のみだ。
ルフト、遼、俺と火乃花の3ポイントから囲まれたナイトメアウィザードは、鎌をユラユラと動かす。
……変だ。さっきまでは怒ったように吠えたりしてたのに、今は無言で冷静な感じがある。
「さぁってと、最後の1体だねっ!」
右手の上に小さな竜巻を発生させたルフトが不敵に笑う。…本当に戦うのが楽しそうだな。
「グゥぅぅん。」
なんだ…?
やっぱり様子がおかしい。
「グゥッフッグゥッフ。」
笑ってるのか…?
「龍人君。嫌な予感がするわ。」
「同じく。ナイトメアウィザードの野郎、何かあるぞ。」
攻めるか…それとも、様子を見るか。
「いっくよぉ!!」
…はい?
気づいた時にはルフトが攻撃を仕掛けていた。あ〜そうだよね。仲間の事を考えるの忘れてたよ。
20発近い風砲弾がナイトメアウィザードに着弾した。
「ウォォォォォン!!!!!」
その瞬間に響き渡る咆哮。その咆哮に込められた魔力によって空気がビリビリと振動してやがる。これは…何か仕掛けてくるぞ。
パァァァン!と、風砲弾群が弾き飛ばされ…。
「マジかよ。」
「どういう事…?」
「うえぇっ!?」
「ははっ!最高の展開じゃんかっ。」
俺達を取り囲むように10数体のナイトメアウィザードが浮遊していた。
ルフトの奴、なにが最高の展開だよ…。
ともかく、さっきもナイトメアウィザードがいきなり4体現れたし、状況的には似てるよな。
「ウォォォン!」
ナイトメアウィザード達が咆哮し、俺達に総攻撃を仕掛けてくる。
「ちっ!」
迫り来る闇矢と闇刃を避け、弾きながら近くにいるナイトメアウィザードから撃破していく。
他の皆も順調に撃破出来てるか。
ただ、このままだと…また最後の1体に攻撃を仕掛ける辺りで新しいナイトメアウィザードが出てくる気がする。
ん…?
探知魔法でナイトメアウィザード達の動きを可能な限り把握しながら戦ってたんだけど、戦闘に参加しない個体がいるな。それに、1体1体も倒しやすくなっているような。
「コレって…もしかしてもしかするか?」
俺の頭に過ったのは、幽霊系モンスターを討伐する時に良くある展開というかパターンだ。
…確かめてみるか。
近くにいるナイトメアウィザードに斬りつけ、その反動を利用しながらルフトの近くへ移動する。
「ルフト!残る8体へ同時に同じ強さの攻撃出来るか?」
「同時にっ?それって結構魔力使うけどっ?」
「大丈夫だ。多分。俺が合図したら頼む。それまではあんまし数を減らさないでくれ。」
「へへっ。過度な期待には応えたくなっちゃうんだよねっ。」
目で頷き合うと、俺は再び攻撃をいなしながら遼の近くへ移動する。
「遼、さっきの属性魔法って属性【重力】であってるか?」
「え!?なんで分かったのさ!?」
「そんなに驚く事か?見た事はないけど、使えるのは知ってるし。んで、魔弾が当たったナイトメアウィザードの動きが遅くなってたから、加重系のデバフを与えてるのかなって思ってんだけど。そうすると、他に考えられる属性は無いだろ?」
「ま、まぁね。」
「んでだ、その魔弾を今からばら撒けるか?全ナイトメアウィザードに当ててほしい。」
「うわぁ…凄いいきなりな無茶振りだね。まぁ、やってみるよ。」
「サンキュ!」
クルクルっと双銃を構えた遼が属性【重力】の魔弾をばら撒く。
狙撃精度よりも弾数重視の攻撃には法則性が無いから、避けにくくなるんだよね。
そして、案の定すぐに全ナイトメアウィザードが加重効果を受けて行動が遅くなった。
「ルフト!!」
「へへっ!分かってるよ!ぶち抜く!迅風【虚空砲】連射!」
うげっ!?まさかの風レーザーみたいなのを撃つスキルを連射かよ。よく魔力もつよな…。
けど、この容赦無い攻撃を食らった8体のナイトメアウィザードは消えていった。1体を残して。
やっぱりな。
「本体さんよ。分身はさせないぞ?」
俺の予想通り。ナイトメアウィザードは最初から1体しかいなかったんだ。攻撃着弾時のエフェクトを利用して分身する瞬間を隠してたんだろうな。だから俺達から見るといきなり新手が現れているように見えたんだ。
んでもって、最初の4体よりも後の方が倒しやすかったのは、分散する数が増える程分身体は弱くなるって寸法だろう。
けど、ネタがバレれば怖くない。分身する暇も無く倒せば良いんだ。
ナイトメアウィザードの懐にはいりこんだ俺は、光の槍を放ち風穴を開ける。
「ウォォン!?」
ナイトメアウィザードは焦ったような声を出して闇魔法を無作為にばら撒く。
これ…目眩ましが目的か?
このままじゃ、逃亡されちまうか?まぁ、この攻撃が最後だったら。だけどね。
「はぁぁ!!」
気合の声を出しながらナイトメアウィザードに向かうのは、俺達の中で最高攻撃力を誇る火乃花だ。
「真焔【戦神ノ業焔】。」
真紅の焔を纏った火乃花は、爆発的に向上した身体能力を生かして…一瞬で彼我の間合いを詰めた。
そして、焔鞭剣がナイトメアウィザードがいた空間を蹂躙し、文字通り木っ端微塵に斬り裂いた。
「ヴォォォ…………」
掠れた断末魔の声を上げながら、ナイトメアウィザードは霧のように消えていく。
たわわな2つのお山を揺らしながら着地した火乃花は、ぱっと見た感じ戦乙女みたいだな。
「終わった…のかな?」
「まっじかぁー。最後、火乃花に良いところ持ってかれちゃったじゃん!?」
「ルフト、十分に暴れたと思うよ?あの迷路の強行突破…暫く夢に見そうだよ…。」
「遼君…苦労したみたいね。」
「えぇっ!?そっかなー?ズバーンって突き抜けたの楽しかったじゃんっ!」
うん。どうやら遼は大分ルフトに振り回されたみたいだな。ルフトと一緒に動かないように気をつけよう…。
「てかさ、これでクエスト達成で良いんだよな?」
「そうね。ギルドカードを見てみて。討伐数の所が変わってるはずだから。」
「あ、なるほどね。」
火乃花に言われてギルドカードの表示を確認する。
・氏名:高嶺龍人
・ランク:Dランク
・クエスト達成数:D-10 E-24
・ランクアップ条件:ランクアップクエスト0/1達成
・貯金額:308,000円
・現在のクエスト
『ナイトメアウィザード討伐』Cランク 報酬20万
→ナイトメアウィザード1/1体
おぉ!達成になってるじゃない。
「ナイトメアウィザードを倒した事になってるな。」
「じゃあ達成ね。…ふぅ。」
気が抜けたのか、火乃花はペタンと座り込んだ。
「いやぁ楽しかったねっ!ナイトメアウィザードが分身を作るって事を忘れてなかったらもう少しスムーズだったかもねっ。」
ガシィッ。っと、右手でルフトの肩を掴んだのは遼だ。
「ルフト…分身するの知ってたの?」
「そうそう!いやぁ最初はどんどん出てくるじゃん!ってテンション上がってたんだけど、龍人の作戦を聞いて思い出したんだよねっ。龍人が気づかなかったら、もう1回分身されてたかも。そうなったらなったで楽しかっただろうけどねっ。」
笑顔でルフトの話を聞いていた遼の額にピキッと青筋が浮かび上がる。
「あのね…そういう重要な情報は最初に言っておくものじゃない?」
「そ、それは…。」
普段見ない遼の笑顔な怒り顔を見て、流石にやばいと感じたのか、ルフトは逃げようとする。…が、いつの間にか遼が左手に持った銃をルフトの腹に突き付けていた。某スパイ顔負けの手際だね。
「いやっ。ごめんね?悪気はないよっ。」
「悪気が無いから悪いんだよ。逃がさないよ?」
ルフトの腹に容赦なく魔弾が数発突き刺さる。
えっ。仲間内で殺し合いとか勘弁よ?
「あ、大丈夫。被弾ダメージを無くした重力弾だから。加重デバフで逃げなくするけど。」
…うわっ。遼の奴、目が全く笑ってない。
ルフトは身動きが取れないのか、引き攣った顔で踏ん張っている。
「ルフト。そもそもの原因ってさ、君が洞窟を崩した事が原因だよね。」
「り、遼?どしたのさっ?」
「ちょっとそこに座ろっか?」
そして、遼によるガチ説教が敢行されたのだった。
横で話を聞いていて思った。
ルフト。お前が悪い!
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