第11話 王子と王女の手紙

親愛なる友セラフィナへ

 

 涼しい風がふく季節がまた巡って来たね。

 変わりはないだろうか?


 その後、君に言われた通り、僕は気のすむまで色々なことを試したよ。

 デビュタントのエスコートもしたし、一緒に出掛けたり、食事を共にしたり、しょっちゅう茶会へ誘ったりした。

 でもすごいんだ、彼女は全く気付かなかった。

 あれだけ、じっと見つめて、手を握ったり、髪をなでたりしてるのに、これっぽっちも僕になびきやしないんだ。

 もちろん、好きだとも伝えた。

 でも、結果は、だめだったよ。

 子爵家の三男に持っていかれてしまった。


 もう悔いはないよ。

 ただ、7年の片思いの傷は深くてね。

 傷心旅行をしたい気分なんだ。

 そちらに留学することにしたよ。

 

 この傷を受け止めてくれそうな人は君しか思い当たらないのだが、頼っていいだろうか?


                     君の友人 サヴィーノより



  ◇◇◇◇◇◇



我が敬愛する友人サヴィーノ殿下


 先日は素敵なランプをありがとう。

 私の好きな色を覚えていてくれて嬉しいわ。

 

 恋は難しいわね。

 好きな人には思われることは、本当に奇跡なんだと思うわ。

 でも、結果にかかわらず、努力をする姿勢は素晴らしいと思うの。

 私は、努力したあなたをとても尊敬しています。

 私も報われない恋をしていると、この間書いたわね。

 私も、あなたを見習って、これから努力するつもり。

 奇跡が幸運ぐらいに変わるかもしれないもの。


 留学、楽しみにしているわ。

 ええ、もちろん力になるわ。

 あなたの心が少しでも軽くなるお手伝いができたら友としてこれ以上の喜びはなくてよ。

 この国では、素晴らしい場所、素晴らしい文化、素晴らしい友があなたを待っている。

 きっと、あなたを飽きさせない、夢中にさせる何かが見つかるはずよ。


                   あなたの心の友 セラフィナ



  ◇◇◇◇◇◇



 彼女は手紙を書き終えると、持っていた羽ペンを、美しい藤色の漉き紙でできたシェードのランプの脇へ置いた。

 インクを乾かして、手紙を折りたたむと封をする。

 ふっと笑みがこぼれる。


「あなた、人の事言えないわよ。いい加減自分が鈍感だということに気付いた方がいいんじゃないかしら?」


 彼女は書きかけの画のキャンパスに、自身の瞳と同じ薄紅色の絵の具と、彼の瞳と同じ露草色の絵の具を混ぜてのせた。


 ――そして、美しい藤色の花の画を描き始めた。



Fin


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