EP03*

先程渡された紙を見つめ、1人給湯室で唸る。


全く分からない。

誰だ、誰なんだ。

名刺登録アプリに登録済みの顧客リストで検索をかけたが、ヒットせず。

他の人が登録しているリストにもヒットせず。


うーーーーーーーん、これは何とも言えないな。


アズマヒデトとは何者なのか。

なんのために私に近づき、こんな紙切れ1枚を渡しに会社まで来たのか。

そもそも何故勤務先を知ってる?

…私を探偵に調査依頼した?


答えの出ない問題を考えると頭が痛くなった。普段頭を使わないため、使い慣れていない脳がオーバーヒートしているかのように熱く、痛くなった。


…脳がオーバーヒートってどういうことよと自分でもツッコミを入れたくなるほど、もう自分でも何を考えているのか分からない。


とりあえず、問題解決の糸口はこの住所だ。間違いない。とりあえずこの住所に行こう。


と、その前にスマホで住所検索し、航空写真を見た。

少し前のデータのようで全く参考にならなかった。


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デスクに戻るとお局がこちらをギロリと睨んで待ち構えていた。


「あのお客さん誰だったの?なんでそんな戻るのに時間かかってるわけ?お客さん相手に口説いてたとか?はあ、みっともない…」


"うるせえ"の一言を送りたいのを堪え、にこりと笑い


「そんなんじゃありません」


と一言だけ返してモニターを見ながら作業を行う。

作業中、お局が何か言っていたが、面倒くさいと思い、無視した。


定時になりモニターの電源を切る。

背伸びをしてカップを洗う。


「お疲れーっす」


年上だけど後輩にあたる男性社員の平田に挨拶される。


「お疲れ様です〜」


挨拶を返し、カップを所定の位置に置き、その場を後にしようとする。


「吉木さん今日こそは夕飯食べませんか?いい店知ってるんですよ。和洋中なんなりと言ってください」


出た、平田の夕飯食べませんか攻撃。

プライベートと仕事は分けたいため、毎回食事の誘いを断るのだが、とりあえず平田はしつこく誘ってくる。この人暇なのかなと思うくらいに呆れている。


「あー…今日、休養があるので、すいませーん」


にこやかに振る舞いながら足早にその場を立ち去る。そして通勤バッグと携帯を持ち、オフィスを後にした。


エレベーターを待つ間、ふと平田のことを考えた。

平田…しつこい奴だなあ。

この間交際を申し込まれ断った際に

「俺、本気だから、吉木さんと付き合いたいし、断られたらそれこそ燃えるっつーか…諦めませんから!」

と、言われた。

その熱意を仕事に生かしていただきたい…。


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