☆3500感謝記念SS  少年の想い

その少女を見たのは偶然だった。

見るのも珍しい貴族様が乗る様な馬車が通り過ぎるのを目にした。

普段貴族様に馴染が無い俺たちは物珍しさから近付くと、馬車の窓から此方を覗く彼女が見えた。


――――――とても、綺麗だと思った。


友だちと燥ぐことも忘れてじっと見つめてしまっていた。

彼女はそれを咎める事もせず、愛らしい笑みを見せてくれた。


ぼーっと突っ立って、見送るしかできなかった。

御貴族様に対して俺が何かできるわけがない。


でも、叶うならばもう一度会いたい。




町へ行けば会えるだろうか?


そんな風に考えて、村にやって来た行商人の荷馬車に紛れ込んでこっぴどく叱られたりもした。

そもそも相手は御貴族様の御令嬢っぽかった。

気安く会えるような相手じゃない。


そうだよ。


会えるわけない。


わかってるさそんな事………。








少年は兵士を志す。

いつか見た可憐な花のような令嬢の居る世界を守るため。

親の反対を押し切り、武芸を磨いた少年はいつしか兵士ではなく騎士となっていた。

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