☆3400突破感謝記念SS サーチェとオハナと7号と
私とカーくんがオハナさまのダンジョンでお世話になってから数日が経ちました。
「誰か来たらおもてなし宜しくぅ♪」
そう言って私たちに御役目を下さったオハナさまなのですが…………。
あ、私たちもダンジョンでお世話になるので「オハナさま」と呼ぶようになりました。
オハナさまは「もっと気さくに呼んでくれても良いのに」と仰せだったのですが、お世話になる以上はけじめも必要ですものね。
「今日も誰も来ねぇじゃん………」
そうなのです。
オハナさまのダンジョンは私たちの居る階層よりも少し下までは踏破されているのですが、まだまだ私たちの居る階層は未踏の領域なのです。
カーくんと二人で「今日も誰も来ないね」と言いながらほっこりしていると、
バァン!!!
私たちの居る小屋の扉が勢いよく開き、そこに居たのはオハナさまの七番目の眷属である7号さんでした。
7号さんは私たちに挨拶するでもなくテクテクと小屋の中に入って来てタンスの中を漁り始め、見つけた果物ナイフを何故か頭上に掲げると、私が止める間もなく一目散に逃げていきました。
「あ、ナイフが………」
「逃げ足早過ぎんだろ………」
カーくんも呆気に取られてしまってナイフを盗られてしまいました。
開けっ放しになっていた扉を閉めて暫くすると、今度は扉から控えめなノックの音が聞こえてきました。
「はーい」
此処まで誰か来ることは無く、オハナさまのダンジョンの何方かだろうと扉を開けてみると、
「数日経ったけど、どう?何か困った事とか不便な事とか無い?」
何とそこに居たのはオハナさまでした。
日傘をさしているオハナさまはその雰囲気もあって何処かのお嬢様の様です。
けれどそのオハナさまの右手には先ほど逃げて行った7号さんが頭を鷲掴みにされて藻掻いていました。
恐ろしい事に7号さんの頭部?からはメリメリミシミシという音が絶え間なく聞こえてきています。
長い袖があってオハナさまの手は見えないけれど、袖の上から掴まれただけでも7号さんは逃げられないようです。
私の視線に気付いたオハナさまは7号さんを鷲掴みにしたまま目の前まで持ってきて、
「ごめんね。この子ったら手癖が悪くて」
そう言って更にぎゅぅぅぅぅっと力が加えられたらしく、7号さんが今までにないくらい暴れ始めます。
「ほら7号。盗ったもの返しなさい」
7号さんは渋々といった様子で手に持っていたナイフを私に返してくれました。
最近になって漸くオハナさまの眷属の皆さんは本当に自由な意思を以って行動しているのだと理解できるようになりました。
「7号はもうこの小屋に出入り禁止ね?」
そう言ってオハナさまは7号さんを解放しました。
すると一目散に距離を置いた7号さんはあろうことかオハナさまに向けてお尻ぺんぺんしています。
「そう………そんな反抗的な態度とるんだ………?」
オハナさまからどす黒いオーラが出ています。お願いですから他所でやってもらえませんか?
オハナさまは袖口から一本のナイフを取り出します。
鞘に収まったそれはダンジョンに挑んできた者の装備品だったものでしょうか?所々に小さな傷がついていて実用品の様でした。
それに気づいた7号さんがオハナさまに向けて走ってきます。
さっきまでオハナさまに何をしていたかなんてすっかり忘れ去ってしまったかのようです。
「はい。確保♪」
案の定オハナさまに捕まり、蔓で二、三回おしりを激しく叩かれた後、同じく蔓で出来た檻の中にポイっと入れられてしまいました。
その手際はとても手慣れたものの様でした。
「最近やっとこの身体と蔓が馴染んできたみたいで、7号を捕まえるのも楽になって来たんだよね」
とはオハナさまの言。
馴染んできたのではなくて単純に7号さんの動きにオハナさまが対応できるようになっただけなのでは?とは言えませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます