☆3300突破感謝記念SS 新・3号がダンジョンで思うこと
お母さまにテレポートを封印されてからというもの、狩りの効率が悪くなってしまった。この足とかいうもので歩いたり走ったりして敵を探すには、お母さまの
でもまぁこれだけ広い拠点の管理をお母さまが任されている事を思えば寧ろ誇らしい気持ちでいっぱいになる。
嗚呼………お母さま…………じゅるり。
そういえば、今までは一瞬でお母さまの下へ行って撫でてもらえていたのに今後はそれが出来ないのよね。
……………そちらの方が大問題じゃない?
この姿はお母さまも「可愛い」と言ってくれたから、それに関しては褒めてあげても良い。けれど私とお母さまの貴重なふれあいの時間を奪うだなんて、まったく何て余計な事をしてくれたのだろうか。
「――――――という訳で間を取って死んでくれない?」
「何処と何処の間を取ったのか甚だ疑問でしかありませんが、お断りします」
いつものようにお母さまの周りを飛ぶ丸いのを拉致して提案すると、即座に断られた。生意気。
「じゃあ間を取らなくて良いから死んでくれない?」
「………殺意が極端に高いという事だけは理解できました」
私の眷属たちを使っても傷一つ付かない、ホント生意気。
折角私が提案してあげているのに、
「何が不満なの?」
「寧ろ不満しかありませんが?」
「は?お母さまに仕えられただけ、いいえ。お母さまという存在をその目に焼き付けることが出来たのだからそれだけで十分幸せだったでしょう?もう思い残すことは無いでしょう?無いって言え」
「眷属の皆様方ほどの忠誠を私に強いられても困ります」
「は?必要最低限でしょうが」
どれだけ睨みつけても丸いのは声色一つ変わらない、面白くない。
イライラするので壁に押し付けたままあてもなく歩き出す。
「………此方が予想していた部分とは異なるようですが、きちんと貴女にとって罰となっているようで何よりです」
壁をゴリゴリと削りながら丸いのは言う。
愉しんでいる?それとも笑っている?声色も表情もわからない者の言う事にイライラだけが募っていく中――――――。
「やっと見つけた!」
突然背後から響いたお母さまの声に身体が跳ねてしまう。
私のところへゆっくりと歩いて来るお母さま、何故だかとても気まずくて丸いのを後ろに隠してしまう。
「3号、サンガを拉致って行くのは止めなさい(※後でオハナがサンガにグリグリされるから)」
後ろ手に隠した丸いのがお母さまの蔓で取り上げられてしまう。
「サンガも、前みたいにテレポートしてこないんだから逃げられたでしょう?何大人しく拉致されてるの?(※どうせ後でグリグリしてくるんだから)」
言われてみればそうだった。
私にとってはいつもの事で、でもそうじゃない部分が在った。
丸いのは逃げる事も出来たはずだ。
私にはもうテレポートは無い。
まだ扱いが不慣れなこの身体で、他の眷属たちにも襲撃されて逃げる事に長けてきたこの丸いのをあっさりと捕まえられる筈が無かったんだ。
侮られた………?
そう思うと途端に悔しさがこみ上げてくる。
「何やら3号様が不満を溜め込んでいらしたご様子でしたので………」
「不満?3号が?」
この丸いの!お母さまに何を言うつもりなの!!?
あぁどうしよう、お母さまの顔が若干曇ってしまったわ。
どうしよう、どうすれば――――――不思議と目から水が流れてくる。
それが涙というものだと知ってはいるけれど、今まで眼なんて無かった私自身の眼から出てくるそれは別の何かなんじゃないかと思ってしまう。
お母さまに抱かれてもそれは止まってはくれなかった。
「3号が不満なんて珍しいね?どうしたの?」
「今までみたいに………狩りが、上手く、出来なくて………お母さまにもすぐ会えないしっ」
「そっかそっか、今までとは勝手が違うもんね」
「でも、お母さまからの期待を裏切りたくないっ」
「うん。3号は頑張ってくれてたんだね。いつもありがとうね」
優しいお母さまにこんなことを言ってしまう、言わせてしまう私が嫌になる。
「ぐへへ………ぐへへへへへ…………」
オハナダンジョンの誰からも侵入を許さないエリア、「人型になったからには部屋とかも必要かな?」というオハナによって用意された部屋で3号は一人静かに妄想にふける。
その様子はとても他人様に見せられない顔をしている。
一体何処からが妄想なのか?と問われれば、
「――――――という訳で」の辺りからだ。
因みに3号のダンジョンに挑んでくる者たちを相手にする効率が悪くなったというのは事実ではある。
だがしかし今まで3号が襲撃していた数がそもそも尋常ではないので、少しその効率が下がったところでオハナダンジョンには何の影響もないのだった。
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