☆3200突破感謝記念SS とある元・開発者の暇潰し
「………どうやら順調に眷属を増やしているようだな」
コーヒー片手にとあるプレイヤーの様子を観察する。
彼女――――――『オハナ』を見つけたのは偶然だった。
聖域に生えた〖マンドラゴラ〗の頃から面白半分で見守っている。
おっと、勘違いしないでほしい。
別に贔屓しているわけじゃあない。
言っただろう?面白半分だと。
聖域なんて場所が初期配置になってしまうという奇跡的な確率のバグを引き当てたオハナ、動くことが出来ない〖マンドラゴラ〗というのも好都合だった。
元々俺が関わっていた頃は〖マンドラゴラ〗は移動できる設定だったのだ。
それを上の人間たちが台無しにして、いつの間にか移動できない只の草に成り下がっていた。
どうせコイツも〖マンドラゴラ〗の過酷さに飽きて、違う種族に乗り換えるに決まってる――――――そう思っていた。
聖域という特殊な立地が〖マンドラゴラ〗にとって一番の脅威となる〖火〗を遠ざけていたのもあるが、オハナというプレイヤーの根気は最早狂気の沙汰だ。
動けないのに毎日必ずログインし、〖光合成〗をして微量の経験値を貰ってログアウトする。
何だコイツはッ!?
一体どういう精神構造をしてるんだッ!?
何故諦めない!?
何故折れない!?
…………興味を引くには充分過ぎた。
丁度その頃周囲の者たちと衝突し、窓際へと追いやられていたのもあって、社内に新しくできた保全第五課という俺一人しか居ない部署へと転属することになった。
好都合だ。
そこから俺は元上司たちにも内緒でオハナの眷属に実験的に細工をさせてもらった。
結果は俺の予想を遥かに上回るかたちで面白い事になった。
指示が無くても自ら考え、行動し、察する事も出来る人工知能の試作品。
〖マンドラゴラ〗の眷属というのも良い具合に作用した。
知能はあっても初めは所詮草だ。
その異様さ、異質さがバレ難い。
特に初期型の三体がそれぞれ独特な成長を遂げていくのは見ていて飽きない。
1号と呼ぶ眷属は主であるオハナと、眷属たちを支えねばと成長し。
2号と呼ぶ眷属は主を何としてでも守らねばと成長し。
3号と呼ぶ眷属は主であるオハナを誰よりも狂気的なほどに愛するようになった。
後期型の者たちは初期型の後を追う形で成長を遂げ始めたため、少し介入することにした。
…………異質さが些か際立ってしまったか?装備品に異様な執着を見せる個体になってしまった。
俺のようなものが介入しているとバレてしまうだろうか…………?
バレなかった。
どころか、
普通にそういう眷属が居ても不思議じゃないと受け入れられていた。
オハナの器デカすぎないか?
社内では俺がやったことが此処で漸くバレた。
だがもう遅い。
俺抜きで修正できると思うなよ?
お前たちじゃ最早別ゲーにするレベルの修正になるだろうな。
すぐ元に戻せ?断る。
折角オハナの周囲で俺が夢見て、目指していたオズワールドファンタジーの世界の片鱗が見れたんだ。
俺をその世界から遠ざけておいて、今更手を貸すとでも?
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