☆2800突破感謝記念SS 難攻不落

わたくし、パナシーアが誇る砦にあの忌々しいダンジョンマスターである魔物、オハナが攻めてきました。

一瞬、粘着されたのかと不快に思ったのも束の間、報告に訪れた人の話では以前とは違ってオハナたった一人だそうです。


少し、舐め過ぎではなくて?


以前砦を襲撃された時はオハナの処に居るホタル………でしたか?そのビームによって砦は壊滅的な打撃を受けましたけれど、私だってただ何もせずに居たわけではありませんわ!

以前よりも堅牢になった私の砦にのこのこ一人でやって来たオハナを此処でキッチリ返り討ちにして差し上げますわ!!


「皆さん!戦闘配置についてください!此処で必ずオハナを召してやりますわよ!!」


私の砦を共に防衛してくださるプレイヤーの皆さんが、各々威勢の良い返事をして飛び出していきました。



この皆さんとなら勝てる!







――――――そう思っていた時期が私にも在りましたわ。

何なんですの!何なんですの!オハナのダンジョンの魔物たちも大概でしたけれど、オハナに至ってはもうチートじゃありませんの!!

此方が近づくより先に即死攻撃を受けるとか、最早別ゲームではありませんか!!


ああどうしてかしら?

ファンタジーな世界観のはずなのに、オハナに向かって突撃して行く仲間の皆さんが弾幕飛び交う死地に赴く特殊部隊員の様ですわ…………。

悔しいので砦の壁の上から散々文句を言ってやりましたわ。


ならばと遠距離攻撃が得意な方々と魔法攻撃が得意な方々に集まってもらい、遠くからチクチクと攻撃してもらう事にしました。

しかしそこへ…………………………。


――――――。

――――――。

――――――。


ハッ!?

私は一体何を――――――?

直近の記憶がありませんわ。

死んで…………は、いないようですけれど…………。

私の砦がいつの間にか瓦礫の山になっていますわ!?

一体何が有ったんですの!?


あれは確か………そう、これから遠距離で攻撃するぞーというタイミングで空からミサイルのようなものが飛来してきたんでしたわね。

アレは一体何の攻撃かしら?と皆さんで警戒しつつ見上げていた処、軍事オタクの味方の一人が慌てた様子で私を砦の中へと突き飛ばして――――――………。


瞬間、響き渡る轟音。

視界の端に表示される味方の皆さんのHPがみるみる減っていく、それと同時に砦も耐久値を超えたのか崩壊して――――――。


身体に覆い被さっていた瓦礫を押し退け、立ち上がりました。

これではっ!これではまるで前回砦を陥落された時と同じではありませんの!!

前回の様にはいかないと皆さんで建て直した私の、私たちの砦をッ!!!


怒りを込めて相手を睨みつければ、そこには無数の花を咲かせたオハナの姿がありました。

その花一つ一つが相手を死に至らしめるものであることなど、とうに知っている私はあまりの光景に怒りを何処かへ失くしてしまいそうになりました。


「物騒なお花畑ね。こんなの…………まるで要塞じゃない………」


キャラづくりのためのお嬢様言葉で話すのも止めて、わたしは鞭を握り締めてオハナへ単身突撃する。

私のMPの続く限り、攻撃の手を休めない。

オハナはそんな私に付き合ってくれるようで、お得意の即死攻撃を撃ってきたりしなかった。

私の全力を尽くした攻撃は全てオハナに撃ち落されてしまう。

けれどオハナの攻撃は確実に私のHPを削って行っていた。



そして私のHPが尽きてしまった。

消えてしまう間際に、


「貴女はとても強かったですよ」


そんな慰めにも取れてしまう言葉をオハナから受けて、不覚にも泣いてしまいそうになる。

悔しくて悔しくて、惨めな想いを抱えつつも砦を制圧した後のオハナの様子が気になってゲーム内の動画を見てみることにした。

それは探すまでもなく、トピックスに挙げられていた。


以前の動画と同様戦闘に関する音声など何もない動画だったけれど、私を倒した後のオハナは雷鋼さんの砦を陥落させた時と同じ満足そうな笑顔をしていた。

それを見ていた私は、最後にかけられた言葉が慰めなんかじゃなかったんだと思うことが出来る様になっていた。










パナシーアの砦を単独で攻略した後に、オハナにはとある二つ名が付けられた。

名付けたのは砦を陥落させられたパナシーア本人だったので、〖勇者側〗プレイヤーの間で話題になった。

清々しいほどの笑顔で彼女は語る――――――。


誰も彼女オハナに近付けない。

何者も彼女には触れられない。

誰一人、彼女の花を手折る事は出来ない。

故に彼女は難攻不落倒れない

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