☆2600突破感謝記念SS こうしてオハナは敵を増やす
本陣に突撃してきた魔物――――――オハナを追いかけて、ローウィンの奴は先行して行っちまった。
幾ら〖聖剣の加護〗で主要な状態異常を無効化し、ある程度の攻撃は無効化するか威力を軽減するって言ったって、たった一人で突撃するなんて無茶にもほどがある。
すぐに俺も騎士たちを率いて後を追ったが、オハナの残した毒霧のせいで迂回を余儀なくされていた。
オハナの残した毒霧は最初こそ紫色だが、時間の経過とともに無色透明になっていく厄介なもので、風向き次第で効果範囲が変わり、こちらの見立てよりも安全策をとってさらに大きく迂回することとなった。
それでも運悪く、その毒にやられた騎士は少なくない。
進む先に毒があるか否か確認しながらになるので気持ちばかりが逸り、焦りが募っていく――――――。
オハナの狙いが勇者ただ一人だって言うなら、俺たちはまんまとその術中に嵌まっているってことになる。
伝令によれば近くに居る〖勇往騎士団〗のメンバーがローウィンの加勢に向かっているらしいので、少しは安心だが――――――…………。
そんな考えを遮るように突如鳴り響く轟音、そして俺たちが進もうとしていた先で立ち昇る土煙、
〖オハナ〗さんが、〖勇往騎士団〗のキミーを捕縛しました。
〖オハナ〗さんが、〖勇往騎士団〗のダイダロを捕縛しました。
〖オハナ〗さんが、〖勇往騎士団〗のカーマインを捕縛しました。
頭に鳴り響く天の声、その内容を理解したくなかった。
はぁっ!?
それはローウィンの加勢を申し出てくれた者たちのはずだ。
それが揃ってオハナに捕縛されただと!?
ローウィンが居ながらむざむざ勇往騎士団の三人を捕縛させるとは思えない………。
くそっ!?戦況はどうなってる!?
あとこの平原地帯に味方はどれだけ残っている!?
戦場が混乱し続けていて、状況把握さえまともに出来やしない。
しかもそれを行ったのがたった一匹の魔物が原因だなんて、何の冗談だ畜生!!
俺が引き連れてきた騎士たちも先ほどの天の声に心挫かれた者がほとんどだった。
その気持ちは痛いほどによくわかる、此処は一体どんな地獄だ?
それでも俺は騎士たちを兵たちを率いる立場を与えられたものとして、挫けそうな心に全力で檄を飛ばす。
「折れるなッ!!俺達にはまだ〖勇者〗が居るッ!!あの悪夢のような存在であるオハナでさえも勇者ローウィンを倒すことはできていないッ!!
――――――ならばッ!!俺たちが先に膝を屈してどうする!!あの悪夢のような存在の跋扈をこれ以上許すわけにはいかない!!進めぇッ!!此処で進んでこそ我らは父祖の英霊たちと肩を並べられる騎士となるのだッ!!」
無理を言っているのは百も承知だ。
辛いよな、苦しいよな、行きたくないよな…………、それでも俺はお前たちと共に行かなくちゃならないんだ。
この先でローウィンは戦っている――――――否、戦ってくれているんだ。
それを俺たちが見捨てるなんて、先に諦めるなんて――――――出来るわけないだろう!!
俺の無理な檄に騎士たちも応じてくれる。
半ばヤケクソなのかもしれないが、それでも声を張り上げ、拳を天に突き上げ応えてくれた騎士たちに涙が出るほど感謝をしたい。
そんな俺たちの行く手を阻むように、3体の魔物が立ち塞がった――――――。
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