☆2500突破感謝記念SS    勇者のひとりごと

こちらの本陣近くに突撃してきた植物型の魔物――――――オハナはグラシュたちが応援に駆け付けたことで不利を悟ったのか逃げ始めた。

戦ってみて解ったのはオハナだけは此処で仕留めておかないと厄介なことになるという事だけだった。

時折彼女から放たれる弾丸の中で一際不穏な気配を放つものがあった。

それが何か完全には理解してはいないけれど、当たるとマズいものだという事だけは理解できたのでそれにだけは注意を払う。

彼女の眷属に僕の一撃を防がれたのには驚いたけど、時間さえかければ何とかなりそうな相手ばかりだった。

立ち塞がる様に獣戦士が向かってきたけれど、オハナたちほど脅威ではない。

彼の相手をした後、僕はまたグラシュたちを置き去りにして追撃することを選んだ。

グラシュたちに合わせていては取り逃がしてしまうかもしれない、ここまで何もさせてもらえなかった鬱憤を晴らしたくて気がはやっていたのかもしれない。

オハナは逃げている最中だというのに、周囲に死を撒き散らしていた。

彼女から放たれている紫色の霧は猛毒らしく、少し近づいただけだというのに兵士たちが呆気なく命を奪われていた。


オハナはやはり危険だ…………すぐにでも止めなければ――――――。



それが油断だったのかもしれない。


オハナを追いかけて行った先で、魔物たちに囲まれてしまった。

自らを囮として僕を罠に嵌めるとは、とても懸賞金額第一位の魔物とは思えない動きだ。

そして誘い込まれた先に居たのは〖七牙〗と思しき三体の魔物。

僕は聖剣の加護のおかげで何ともなかったが、オハナのあの毒霧が滞留しているせいでグラシュたちの到着にはまだまだ時間がかかるだろう。

ただ殺戮をしているだけじゃなくて、味方の合流を遅らせる狙いまであっただなんてやはりオハナは危険な魔物だ。

早々に始末しなくては――――――…………。



〖魔王側〗の幹部である七牙の三人が襲い掛かってきた。

一体一体がオハナほどじゃないにしても、厄介だったのがハミルダによる〖クリエイトアンデッド〗だった。

僕は聖魔法が使えない、聖剣の輝きで相手を弱体化は出来るものの、こうも数で圧倒されてはキリがない。

聖剣の力を開放して薙ぎ払おうにも、そんな隙を与えてくれるほど容易な相手ではなかった。

そして更に状況をややこしくしていたのが、ヒーラーの存在だった。

ダークエルフであろう彼女はオハナの眷属に守られながら七牙を癒していた。


オハナと七牙は敵対しているわけではないのか……………?


七牙の三人がオハナに向けて悪態を吐いていたことからそう推測していたのだが、オハナの眷属に守られているヒーラーに回復されて安堵しているのを見ると認識を改めた方が良いのだろうか。


オハナとの戦いの為に力を温存しているせいでなかなか勝負を決めきれない。

だがここで全力を振るってしまったら、オハナの思うつぼな気がした。

何て恐ろしいやつなんだ…………この場にはもう居ないというのにこちらが消耗してばかりだ。

疑い始めればキリがない。

努めて冷静に――――――そう自分に言い聞かせようとした矢先、勇往騎士団の三人がオハナに捕縛されたという天の声を聴く。


少し見えなくなっただけでこれか…………やはり無理をしてでも仕留めておくべきだった。

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