☆2200突破感謝記念SS   オハナの苦手なもの?

それは、ダンジョン内で私たちが丁度休憩している時でした。



「オハナさんの苦手なもの、ですか?」


ホタルちゃんとカナきちが二人揃って私に訊いてきました。

二人ともとても爛々と目が輝いていて――――――。

二人だけじゃなくて、コテツさんとワヲさん、それにサンガくんまでもが興味深そうに後ろに控えていました。


「苦手なものでも良いっすし、魔法以外での弱点とか…………在るなら知っておきたいっす」

「プリムさんならもしかして知ってるんじゃないかって話になって………」

「もし在るのならば、我々の方で予め排除できるかもしれませんので」


〖火炎魔法に弱い〗とかそういう事ではなさそうですね。


「この前オハナちゃんの話になったんだけど、結果的にあまりオハナちゃんの事知らないわね?ってなったのよ」

「あまり詮索すんのも良くねぇだろうから、せめて苦手なものくらいは………な」


オハナさんの苦手なものですか…………………。




まだまだこのゲームをプレイし始めの頃、コミュニケーションに飢えていた私は聖域に生えていたオハナさんをよく引っこ抜いてましたっけ…………懐かしいです。

結構頻繁に抜いていたと思うのに、オハナさんはいつも「仕方がないなぁ」って感じで受け入れてくれて、それがとても嬉しかったのを今でも鮮明に思い出せます。


オハナさんの眷属が他のプレイヤーさんとの戦闘で傷ついた時にはこっそりと回復したりして、「この魔物、回復しやがった!?」なんて相手の人は驚いてましたっけ。

ふふっ、本当に懐かしい。


〖即死耐性〗なんて余計なスキルが生えてしまったせいで、オハナさんを抜いても死に難くなってしまった時は本気でもう一度最初からやり直そうかと思い悩みました。


あぁそういえば、あんなことも――――――。


「――――――さん?…………プリムさん?」


はっ!


気が付くと皆さんから心配そうな目で見られていました。

苦手なものを思い出そうとして、オハナさんとの良い思い出に浸っていただなんて言えませんね。

私は苦笑いをして誤魔化してしまいます。


「オハナさんの苦手なもの、でしたよね?」


私がそう言うと皆さん驚いた様子でした。

オハナさんの事で私が知らない事なんて、リアルのオハナさんに関する情報くらいなものです。

ちょっとだけ自慢したくて、胸を張っちゃいます。


聖域で出会ってから暫く、オハナさんが言っていた事を思い出して皆さんに伝えます。


「オハナさんはカエルが苦手みたいです。何でもカエルによってとても辛い想いをしたんだそうですよ?詳しい内容までは教えてくれませんでしたけれど……………」


あのオハナさんが口をつぐむほどです。

きっと余程の事があったに違いありません。

あの時のオハナさんからは、カエルに対して嫌悪する感情がとても強く感じ取れて、私もあまり得意ではないので余計に嫌いになりそうでしたから。


「カエルが苦手…………」

「ちょっと意外だったっす。オハナさん苦手なものなんて無さそうだったっすから、ホントに在ったんすね…………」

「…………………小さい頃に男の子に投げつけられたりしたのかしら?」

「婆さまよ。小学校低学年の頃の話を蒸し返さんでくれ、本当にすまなかったと思っている」


コテツさんが今にも土下座しそうなテンションです……………。


「カエルですか…………確かにオハナ様ならば大丈夫だと思ってしまいそうな盲点ですね。眷属の皆さまにも伝えて絶対に近付けないようにしておきましょう」


こうして、オハナダンジョンメンバー全員の結束が強まったのでした。










これがオハナダンジョンメンバー皆の勘違いであるという事が判明するのは、まだ先の話――――――………。

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