☆2100突破感謝記念SS   二個目の砦(後編)

二つ目の砦攻めは――――――。


キュヴゥゥゥン――――――。


「撃てーっ!!!!!!」


ホタルちゃんのビームで幕を開けた。

いやーオハナもつい気分が乗って何処かの艦長さんみたいにそれっぽく叫んじゃったわ、そしてホタルちゃんもその声に合わせて発射してくれるっていうサービス。


気分はとってもよきよき♪



「ぎゃぁぁぁぁぁ――――――!!!!!」

「何だよコレェ!?」

「誰だよ〖毒〗と〖即死〗が来るとか言った奴は!?」

「砦の壁が崩れるぞぉぉぉ!!!!!?」

「退避ーーーー!!!!一旦全員退避だーーーーー!!!」



はいど~も~♪

開幕ビームで遠くから阿鼻叫喚聞こえてくるけど、気分いいし気にせず始めちゃうオハナです。

まぁ気分関係なく気にしませんけどね?だって敵だもの。


ホタルちゃんのビームで砦を囲う壁が面白いくらいにどんどん消滅していく。

もしもホタルちゃんのMPが潤沢に在ったならば、ホタルちゃん一人で砦の完全攻略イケるねコレ。


「ふはははは。砦がまるで紙防衛っす」

「塵も残らなそうねぇ」

「これもう砦の意味なんぞ無いじゃろう」

「オハナさんやホタルちゃんからしてみれば、経験値の詰め合わせギフトって感じですね」


「経験値の宝石箱や~」とか言ってみようかしら?

…………やめとこ。ダダ滑りする未来しか見えないわ。

そんな様子をのんびりと観察しているオハナダンジョンメンバー。

皆もうちょっとやそっとの事じゃ動じなくなったよね。




「ぷしゅぅぅぅぅ――――――」



恒例となったホタルちゃんのビーム終わりの合図と共に、砦は立派に砦跡地――――要は瓦礫の山になった。

MPの限界ギリギリまで頑張ってくれたホタルちゃんをみんなで労いつつ、砦跡地から意識は逸らさない。

崩れ落ちながらもビームの直撃を逃れ積み重なった瓦礫、それを押し退けて砦に居たプレイヤーさんたちが這い出て来る。

ちょっと絵面がゾンビが地面から出て来てるみたいでアレだけど、ファンファーレが鳴らないって事はまだ勝利条件である〖砦の主〗は無事って事ね。


「はい。それじゃ向こうが全員這い出してくる前に接近して、あわよくばちゃちゃっと決着にして来て下さい」


オハナが手を叩いて前進を促すと、ダンジョンメンバー全員が砦に突撃して行った。

さてと、オハナも一応援護を開始しましょうかね。


1~7号まで砦跡地を取り囲むように配置する。

もう高低差なんて気にするだけ無駄なくらいの差しかないし、遮蔽物なんてものもそれほど多くはない。

瓦礫から出てくればオハナと3号と4号に狙撃され、瓦礫の下から出て来なければ〖HP・MP吸収フィールド〗でじわじわ削られるだけ。

更に1号、2号、5号には瓦礫の撤去作業をお願いしているから、隠れていても見つかるのは時間の問題。

既に這い出してる人はダンジョンメンバーの皆やハイエナしに来てた他プレイヤーさんたちの餌食にされている。


これもう〖砦攻め〗って言うか、〖掃討戦〗よね~?


自動照準が瓦礫の下に隠れているプレイヤーさんたちにも反応してるから、その場合はそこを撃って皆に居場所を教えてあげてるオハナが言うのも変な話だけど。

出て来ても地獄、その場に留まっても地獄っていう状況が出来上がっちゃってるのは仕方がないよね?だってそういう風に追い込んでるんだもの。


勝負が見えた――――――なんて傲慢かもしれないけど、しみじみとそんな事を考えていると、(※その間もちゃんと弾は撃ってます)


「だぁらっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」


離れた位置に居るオハナにまで聞こえてくる充分に聴こえてくる咆哮が響いた。

次いで、瓦礫の一部が大きく吹き飛び一人のプレイヤーさんが飛び出してきた。

条件反射でオハナが自動照準定まった瞬間撃っちゃいそうになるけど、その上等そうな装備品からそれは止めておいた。

もしも強いプレイヤーさんであれば皆の経験にしてほしいからね。

それと同時にすぐに狙いを定めようとする3号と4号に威嚇射撃して『攻撃しちゃダメ』だと伝える。

その様子から他の眷属たちにも伝わり、各々他のプレイヤーさんたちの方へ散っていった。


瓦礫の下から出て来たのは金髪縦ロールのエルフ人女性だった。

離れててよく見えるねって?眷属を通して見てるからね。


キャラの名前はパナシーアさん。

さっきの野太い咆哮を挙げたとは思えない程整った顔のキャラだった。

ちょっと地が出たのかな?

塵と埃に塗れたパナシーアさんはわなわなと震えて、


「許しませんわ。このわたくしの砦をこんなにして――――――。その方だけは必ず召してさしあげますわ!!」


鞭を取り出し、一度空気を切り裂いた。


……………召してさしあげますって、召すって事?そんな言い方ある?


オハナはそんな疑問を抱いたんだけど、


「「「「「「召されろーーーーーー!!!!!!」」」」」


何処からわき出したのか、筋骨隆々の人間プレイヤーさんたちが一斉に声を上げた。


……………なるほど、掛け声みたいなものなのね?

そう納得しておく事にした。

『滅されろ』の方がそれっぽいのになんて思ってないよ?ホントだよ?


オハナがそんな余計な事を考えている間も、パナシーアさんとその取り巻き?のプレイヤーさんたちによって怒りのボルテージは引き上げられて行っていたらしく、そして遂に――――――、


「さあオハナ!!私と勝負なさい!!」


………………………――――――。

うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!

あ゛あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!


なんかオハナの仕業になってるぅーーーーーー!!!!!


違うのに!今回はオハナじゃないのに!確かにきっと出来ない事もないけども!!

オハナは自分で言っちゃうけど珍しく大人しくしてた方よ!?

(※オハナ個人の感想です、被害には個人差があります)




「大規模破壊すると真っ先にオハナちゃんのせいになるのか…………」

「オハナちゃん有名だものねぇ。ある意味仕方が無いのかもしれないわぁ」

「はぅぅ………。ごめんなさいオハナさん…………」

「ホタルちゃんが謝る事じゃないですよ、向こうが勝手に勘違いしただけなんですから」


「皆気を付けるっす!あれがこの砦の主、『パナっぺさん』っす!」


カナきちが声を張り上げた直後、鞭が乾いた音を響かせた。


「誰がパナっぺですの!?私の名はパナシーアですわ!!」


あぁ「パナっぺさん」ていう名前じゃなかったのね?

あとでカナきちにはちゃんと伝えなさいって言っておかないと…………。


「…………可愛いと思うんすけど?」


ごめんカナきち、ネーミングセンスが壊滅してるオハナでもそれには同意しかねるわ。

案の定、周囲の皆からも同意は得られてなかった。






「取り巻きの連中を確実に屠っていけ!ワシと婆さまで彼女を抑える」

「援護します」


コテツさんとワヲさんが前に出て、その後ろにプリムさんが控える。

MPを大量消費したホタルちゃんとまだまだ元気なカナきち、念のため1号と5号も加わらせて彼女の取り巻きであるプレイヤーさんたちを相手にするみたいね。


ふむ。


それじゃあオハナはその戦いを邪魔させないようにしようかな?

うねうねと根っこを動かし、砦跡地に近付いて来ていたオハナ。

もう露払いも粗方終わって、完全に観戦モードです。

残りのプレイヤーさんたちはハイエナ目的の人たちにあげよう。

どうせ大した経験値にもならないだろうし。

ただ皆の戦いを邪魔するのは絶対に許さないけどね?


観戦してたオハナの印象――――――パナシーアさん、強い。

パナシーアさんが魔法で属性付与した鞭を振るえば火や氷の礫が飛び、コテツさんとワヲさんを削る。

それをプリムさんが逐一回復する事で耐えていた。

後半はそこに2号も加えて何とか反撃に転じられていた。


ホタルちゃん、カナきち、1号、5号によって次々に取り巻きは撃破され、残ったのが彼女一人となってもなかなか決着とはいかなかった。



結局、パナシーアさんのMPが尽きる事で勝負がついた。

そして漸く、オハナにとっては二つ目の砦は陥落したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る