☆1800突破感謝記念SS  獣戦士、初心を振り返り拳を握る

アイツはちゃんと俺の伝言を伝えてくれたらしい。

ランキングを見ながら俺はそう確信した。


そうでなければ、オハナのコイン獲得枚数がこんな伸びるわけがないからな!!

俺との勝負の為に本気で突き放しに来たに違いない!!


それにしたって何だよ!?600137枚って!?

桁を一つ見間違えてて「まだまだ全然追いつけるな」とかランキング見て呟いちまったのが超恥ずかしいじゃねーかよ!!

そりゃ傍に居たヤツも「コイツマジか!?」って顔するよな。

俺だって聞けばマジかって思うもんよ。


そんな恥ずかしさとは別で湧き上がってくるこの気持ちは…………まぁ、悪くねぇ。

俺の前に立ち塞がる圧倒的な壁――――――その存在に挑むものがある事に嬉しさが込み上げてくる。



〖世界大戦〗でランキング一位となり、トッププレイヤーとなった俺をオハナはまずダンジョンで俺や闇風よりも上手く運営してみせた。

今では俺のダンジョンも盛り返して来てはいるものの、オハナダンジョンに比べりゃ俺のダンジョンはまだまだテコ入れが必要だ。

まぁでも闇風の野郎の所よりマシなので良しとするか。


次にあの〖砦攻め〗だ。

たった一人で〖砦〗を陥落させた動画を俺も見た。

編集されてアイツの言葉は何も無かったが、見ていて鳥肌が暫く止まらなかった。


俺も――――――!!


そう思って挑んだものの、結果は散々だった。

闇風の野郎はまだしつこく挑み続けてるみたいだが、今の俺には無理だ。

もっと強くなった時に改めて挑戦する。

これは敗北じゃない、何せ俺の心は微塵も折れちゃいないからな!!



だからこそ!今度のイベントでヤツを見つけた時には、もう身体が自然に動いていた。

それで勢いそのままに勝負を挑んじまったわけなんだが……………。


実際に本物を見ると、ホントにアレはヤベェ。

あの後イベント戦場で見たんだが、ありゃ俺とは強さの”質”が違う。


何で本物かどうかわかったのかって?


一体だけでも厄介な眷属を五体もボディーガードの様に従えて、アイツ一人悠然と歩いてるだけで、その周囲から敵が次々と消えていくんだぜ?

発動確率が極めて低く鍛えるだけ無駄とさえ言われてるスキル、わざわざ対策してるプレイヤーも稀な〖即死攻撃〗――――――。

それがどういう訳か眷属たちの〖即死攻撃〗は確定か!?ってくらいに当たりやがる。

おまけに下手に動けば次は俺たち他のプレイヤー諸共巻き添えにするつもりなのが見て分かるほどに、眷属共が殺気立ってやがった。


あんなの本物で間違いないだろ?見間違えるもんかよ。


そう思うと、勝負を挑んだ時に間違えちまった同名のプレイヤーにはホントに悪い事をしたなぁ……………よりによってアレと見間違えるなんてきっと今までも相当迷惑してきたに違いない。

伝言もちゃんと伝えてくれたんだろうし、今度会ったら全力で励ましてやろう。





今日も敵をボコってコインを獲得する。

けどどれだけコインを集めようがもうオハナには追い付けない、そう思うと自然と笑えて来た。


諦め?違うな。

誰も育てようとしなかった〖植物型魔物〗、それも鍛えても無駄だと言われたスキル〖即死攻撃〗を駆使して活躍するオハナを見て羨ましいんだと思う。


思えばこうした感覚も久しぶりかもしれないな………………。


最近の俺はダンジョンの連中に強化されるのが当たり前になっていて、いつからか俺自身の強さについて向き合ってなかったのかもしれない。

プレイし始めの頃は他のプレイヤーと同じような感じになるのが嫌で、育成で尖った性能にしていたんだがすぐに周りの連中に追い抜かれた。

それが悔しくて、勝手に限界だと思った俺は攻略サイトの種族別育成論に従ってみる事にした。


確かに攻略サイトに載ってる育成論に方針転換して使い易くはなったし、事実として俺は強くはなれたんだろう。

だけど尖った性能だった頃の楽しさは失くしていた。

ハマれば強い、逆を言えば展開がハマらないとクソ弱かったわけだが、マイナス面をひっくるめて見ても今にして思えば総じて楽しかったんだ。


駆け出しの頃はステータスポイント一つ上げるにも慎重になって、それを積み重ねて強くなっていく実感に歓喜したし、強敵と遭遇して負けた時は本当に悔しかった。

新しい攻撃スキルはすぐに試し打ちして、その威力にワクワクした。


そんな気持ちを丸ごと全部思い出し――――――いいや違うな。

沸々と湧いて来た気持ちに従って、これまで歩んできた道を振り返り強く拳を握る。


怖気づいちゃいない。

それどころか迷走していた俺の前に壁となってくれたことに感謝してるくらいだ。


昨日見たオハナと比較して今の俺に圧倒的に足りないものがある――――――速さだ。

俺が一匹倒すのと同じ時間があれば、オハナは十匹以上倒すだろう。

眷属が卑怯だなんて言うつもりは無い、それだってアイツのスキルの一つなんだしな。

アイツが十匹倒すなら、俺は同じ時間で一匹でも多く倒せるようになればいい。

そのための速さが俺には必要だと思った。



オハナ、お前が現れてくれたおかげで俺はもっと強くなれる――――――!!

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