☆1600突破感謝記念SS   カナきちの事情

自分がこのゲーム”オズワールドファンタジー”をプレイするようになったきっかけは、兄ちゃんの影響だったっす。

兄ちゃんはこのゲームでは結構名の知れたプレイヤーらしく、他に自慢する相手が居ないのか自分によくこの世界の事を語って来てたんすよ。


それがかなり鬱陶しかったのもあるっすけど、そんなに面白いのなら一度やってみようかな?くらいの軽い興味は湧いたっすね。


兄ちゃんに色々レクチャーをされながら、兄ちゃんと同じ種族の〖ヴァンパイア〗へと至る〖レッサーヴァンパイア〗になることが出来たっす。

別に兄ちゃんに一ミリでも憧れたわけじゃないっすけど、やっぱカッコいい種族になりたいじゃないっすか。


そうして自分もどっぷりと”オズワールドファンタジー”の世界に浸る様になって気付いたことがあったっす。

それは――――――。


兄ちゃんが実はゲームでもぼっちだったって事っす。


話を聞いて居て、一緒にプレイしてる人の名前を聞かないな~とは思ってたんすよ?

まさか本当に親しいフレンドさんの一人もいないなんて、しかも自分が兄ちゃんの初フレンドだと知った時にはちょっと涙が出てきたっす。


兄ちゃんは自分より勉強は出来るから地頭は良いんすよ。

けどそれ以外が総じてバカなだけなんす。


自分も一緒にプレイしていた時なんすけど、他のプレイヤーさんに対しての言葉が全部キツイんすよ。

『俺の方が強いんだから偉くて当たり前』って態度を崩そうともしない上、言動までもがそんな態度に引っ張られて平気で他人を馬鹿に出来るから誰からも相手にされなくなってるんすよ。


それなのに、「アイツらごときじゃ俺の実力には付いて来られない」とか言って、さも自分の方から願い下げだみたいな言葉を吐いてるのには流石に引いたっす。




そんな兄ちゃんが突然、


「砦を落とすぞ!!今すぐに、だ!!」


そう言って仲間を募集し始めたんすよ。

どうやら兄ちゃんよりも下の賞金首だった魔物プレイヤーさんが、〖砦〗を陥落させたらしいんすよね…………しかも単独で、最難関とも言われていた雷鋼さんが待ち構える砦を――――――。


自分も何度か〖砦〗には挑んでいて、勿論雷鋼さんの砦にも何度か挑戦した事が有ったんすけど……………自分には「あれを単独でってマジっすか?」のレベルでした。


それに触発されて兄ちゃんも単独で砦に挑んでたらしいんすけど、悉く返り討ちにされて、だけど自分より凄いプレイヤーの存在を認められない器の小っちゃい兄ちゃんは〖砦〗を落とした事実だけでも欲しいのが透けて見えてたんすよね。


兄ちゃんが影響を受けたと思われる動画が公式ホームページに大々的に紹介されていて、自分もその動画を見て衝撃を受けたっす。

美少女がたった一人〖砦〗に立ち向かっていくその動画―――――セリフは何も無いけれど、ボロボロになりながらもあの雷鋼さんに勝利して、満足気にうっすらと微笑むその姿に今思い出しても鳥肌がヤバいっす!!


オハナさん、パネェっす!!

こんなの痺れるし、憧れるに決まってるじゃないっすか!!


兄ちゃんのダンジョンから出て行くのに躊躇いはしなかったっす。


引き留められたら面倒だな~と思ってたっすけど、兄ちゃんは変に意地を張って、


「ふん!お前一人居なくなっても痛くも痒くもない!何処へなりとも行ってしまえ!!」


――――――との事だったので、とりあえず顔にグーパン決めて即行で出て行ってやったっす。


オハナさんのダンジョントライアルでは、自分が調子に乗ってしまったせいで不合格になりかけたっすけど、最終的に自分のまだまだダメダメな実力でも受け入れてくれたオハナさんたちダンジョンの皆さんには感謝してもしきれないっす。








――――――そんな自分もすっかりオハナダンジョンの一員になれたっす。

風の噂で兄ちゃんが何度も砦攻めに失敗してると聞こえてくるけど、まだやってるんすね?

いい加減その砦をオハナさんに譲れば良いものを、強情で狭量な兄で恥ずかしい限りっす。


オハナさんのダンジョンは凄く居心地が良いっす、兄ちゃんの所とは大違い。

何が違うのかって?一番は雰囲気っすね。


兄ちゃんの居たダンジョンだと、兄ちゃんがみんなの前に居るだけでダンジョンのメンバーさんはイライラしてたもんですけど。

オハナさんのダンジョンでは…………………、


「暇~……………」


……………なんて言うか、オハナさんから癒しオーラが出てるような気がするんすよね。

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