☆1500突破感謝記念SS    もしもの眷属ズ・おかわり

※またもタイミングはオハナ不在の時、ダンジョン休止中だと思って下さい。


今度はオハナ眷属たちが男の子たちだったら…………?というお話になります。


--------------------------





ダンジョンの片隅の一画、そこにある小部屋の一つにこっそりと入る一つの影があった。

誰も見ていない事を確認し、その影は大事そうに抱えていたものを改めて堪能する。


それはオハナの花弁の一つだった。

オハナの頭に咲く花は枯れることが無く、常に新しい花弁に咲き変わっていく。

その新しく咲いた花に押し出される様にして抜け落ちた花弁を、彼は咄嗟に拾い、誰も邪魔の入らない場所まで持ってきたのだった。


まじまじと彼は花弁を鑑賞し、そして――――――。


「…………オハナ様……………」


そっと愛しいものに触れるかのようにして頬擦りをした。

花弁からは当然オハナの甘い香りがまだ仄かに香ってくる。

彼は主であるオハナの一部であったものに対して、このような行為に及んでいる事への背徳感とオハナの香りに包まれてる幸福感に全身を震わせた。




「……………………何をしているのかな?5号?」


その幸福感は突如終わりを迎えた。

オハナの花弁に頬擦りするその姿をばっちりと1号に見られてしまっていたのだ。

さっきまでの幸福感が一転して絶望感へと塗り替えられていく。


「こ、これは、その、あの、えぇっと………………」


5号が上手く良い訳すら口に出来ずにいると、1号がそっと5号の肩に触れ、


「皆まで言わずともわかるさ、この私もオハナ様の香りを前にすれば冷静ではいられないからね」


それは5号にとって意外な言葉だった。

5号からすれば1号は常に物腰は穏やかで冷静沈着、戦場でもオハナを含めた全体を観ようとしている頼りになる存在だったからだ。

その1号もオハナの香りには冷静ではいられなくなるというのが信じられなかった。


「だけどそうした行為を続けていれば、罪悪感でオハナ様の傍には居られなくなる。だからそれはサンガに処分してもらおう、勿論私も一緒に行くよ」


「1号兄さん……………僕は、僕はッ…………」


「ママの匂いがするッ!!」


その場を去ろうとしていた二人の所へテレポートで乱入してきたのは3号だった。

もう4~7号という弟たちが居るというのに、オハナの事を「ママ」と呼んで弟たちの追随を許さない程の甘え癖があった。


「3号……………」


面倒なのが来たとばかりに1号が頭を振る。

しかしそんな事はお構いなしに、3号は5号の持つオハナの花弁に目を輝かせていた。


「5号、それってママの花びらだよね?ボクも欲しいのに1号と2号が絶対にダメって言うから持った事もないのに、それをどうして5号が持ってるの?いいな~。ボクも欲しいなぁ~」


目を輝かせてはいる。

輝かせてはいるのだが……………血迷った危ない光でも煌々と輝けば、相手の目がくらむほどまばゆいものだ。

そう、その視線を向けられている5号が戦慄する程に――――――。


「3号!!テメェは相変わらず意味わからねー嗅覚してんなあ!!?」


そんな場面に乱入して来たのは同じくテレポートの出来る4号だった。

4号は3号の事だけを「尊敬できない」という理由で3号と呼び捨てにしている。

彼はすぐさま5号を威圧する3号を抑えつけて、5号に逃げる隙を与える。

その間に5号は1号の背後に隠れ、ちょっとガクブルしていた。


避難した事を確認してから4号が3号の拘束を解いた。


「1号~ヤンキーがいぢめる~」


そう言いながらも3号の目は背後に居る5号にロックオン。


「あ゛?誰がヤンキーだコラァ!!」


「落ち着きなさい4号、4号が真面目だって事は皆知っていますから大丈夫ですよ」


「だ、誰が真面目だコラァ!!」


それを察知した4号と1号が阻止したものの、1号の一言によって4号はムキになってそれを否定した。


「ヤンキーはホントメンドクサイ性格してるよね?この前だってママに撫でられてデレッデレだったくせに」


「あ、あれは――――――!!それを言うなら3号だっていつも以上にだらしないだろうが!!」


「は?そんなの当然でしょ?ママに撫でてもらってるんだよ?そんな御褒美貰って蕩けない方がどうかしてるよ!!」


「えー何コイツ?マジで超ウゼェんだけど…………?」



「お前たち、少しは静かにしろ。またオハナ様がサンガに小言を言われてしまう」


カオスな状況になってきた場を引き締めたのは、2号の重く響く声だった。

窘められた全員はハッとしたように口を噤んだが、それも一瞬の事で――――――。


「アイツホントにヤダ!!ママにいっつも偉そうなんだもん!!」

「そこだけは3号と同意見だな!お前ごときがオハナ様に意見してんじゃねぇよってここ最近俺もかなり思ってる」

「確かに、オハナ様も何故あのような輩に大人しく説教されているのか…………」

「そ、それどころかオハナ様って何気にサンガの事よく撫でてるよね………」


「「「「「……………………殺るか」」」」」


3号の不満を皮切りに、4号、1号が同調し、5号の一言が火に油を注いだ。

止めに来たはずの2号までもが加わり、サンガへの殺意の炎を燃え上がらせた。




後日。




「オハナ様……………」


「あれ?サンガ何か汚れてない?どうかしたの?」


「オハナ様の眷属の方々に突如襲撃を受けまして……………」


「あ~ごめんね~?あの子たち、やんちゃ盛りだから」


「いえ、あれはもうやんちゃというレベルでは無く――――――」

「やんちゃ盛りだから!!それにそもそもサンガにはダメージ無いでしょ?」


「味方だと思っていた方々から突然攻撃されるというのは、身体的なダメージはありませんが、心が痛いです」


「それは、本当にごめんなさい」


深々と頭を下げるオハナの姿があったとか無かったとか……………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る