☆1100突破感謝記念SS ダークサイドオハナダンジョン(魔の第四階層)
オハナダンジョン――――――この世界にまだ三つしか存在しないダンジョンの一つ。
その危険度は第一~第三階層まではビギナー、ルーキーたちでも充分に楽しめるほどの難易度となっており、第四階層からはベテラン勢、ガチ勢でも気を抜けば即死という難易度のダンジョンだった。
ダンジョンマスターの「上に来れるものなら来てみろ!」と挑発する声が今にも聞こえてきそうな構成だ。(※幻聴です)
そんなダンジョンに今から足を踏み入れようとしている四人の冒険者が居た。
彼らは現実でも仲の良い友だちで、今まではこのダンジョンの第一~第三階層を攻略していたのだが、今回初めて第四層に上がってみようという事になった。
「みんな〖毒耐性〗のアクセサリーは装備したか?」
そう言って他三人を見回すのはこのパーティーのリーダーである剣士の少年。
「で、でも大丈夫かな?出来れば〖毒無効〗の方が良いって攻略サイトに書いてあったけど…………」
大柄で四人の中で一番の重装備――――――だというのに、不安なのかおどおどとしている重戦士の少年。
「仕方ないじゃない、〖毒無効〗なんてレア装備を人数分揃えようと思ったらいつになるかわからないんだから」
吊り目と浅黒い肌が特徴の盗賊の少女。
「みんな、状態異常になったらすぐに言ってね?」
真っ白なローブを纏ったヒーラーの少女。
今、彼ら四人はルーキーからの脱却を試みようとオハナダンジョンへと入って行った。
第一~第三階層までは慣れたもので攻略は順調だった。
四人の顔にもまだ若干の余裕が見て取れた。
そして第四階層へと続く道の前で小休憩し、四人は頷き合うと第四階層へと足を踏み入れたのだった。
ここからは完全に遊ばせてはくれない、本物のオハナダンジョンの領域となっている。
此処へと果敢に挑み、散って逝った者たちの悲嘆の声はそのまま攻略サイトに書き込まれた。
それだけ失敗した者たちが居るというのにも関わらず、オハナダンジョンへと挑む者たちの数は増えて行ったのは他のダンジョンには無い没入感があるからだという。
四人も攻略サイトに書かれたその言葉に魅了され、挑むことを決意したのだった。
盗賊の少女に罠を警戒して進んでもらっているので攻略の進みは遅い、疲労感も勿論在ったがそれ以上に四人が”まだ見た事の無い場所”を進んでいるという高揚感の方が勝っていた。
そう、まだこの時までは――――――……………。
まず最初に彼ら四人を襲撃したのは他より少しだけ狭くなっている一本道の天井にぶら下がる植物型の魔物(4号)だった。
このダンジョンの主の眷属であると彼らが認識するより早く、眷属は攻撃して来た。
眷属たちによる一斉射撃に彼らは怯んで気付けば逃げ出していた。
幸いにもその眷属は追いかけてこなかったが、ボロボロになりながら逃げた彼らの顔には悲壮感が張り付いていた。
「攻略サイトで見たけど、あんなにもエグい攻撃だったのか…………」
剣士の少年がボソッと呟いたが、反応を示す者は居なかった。
「ごめんよ。僕が前に出なきゃいけなかったのに………」
重戦士の少年が盾を構えて前進して三人もそれに続く、それが攻略サイトにも書かれていた攻略法だった。
背後に転移される前に攻撃して一定数減らせば暫くは追って来なくなるので、その間に踏破する様にとも書かれていた。
「突然だったもの、無理ないわ」
「そうですよ、次はお願いしますね?」
「う、うん。頑張るよ」
しかし彼らは知らなかった。
皆が似たような攻略法をする事で、眷属たちも学習しているのだという事に――――――……。
今度は重戦士の少年が既に盾を構えながら進んでいた。
いつ眷属が現れても良いように盗賊の少女は武器を弓に変え、ヒーラーの少女はその高い魔力を生かして使用者の魔力によって威力が変わる”火球”を放つ巻物を手にしていた。
「さっきの眷属、追いかけてこなかったって事は大人しい方に当たったみたいね」
「あぁ、そうみたいだ。まだそれに関しては運が良かったな」
盗賊の彼女が言う通り、攻略サイトにはオハナの眷属として花の魔物が二種類紹介されている。
咄嗟の事で姿形までは朧気にしか思い出せないので個体差がわかりにくいが、見分ける方法の一つとして敵を見つけて追いかけて来るか来ないかだった。
因みに地獄の果てまで追いかけて来るのは3号で、追いかけてこないのは4号である。
眷属たち(3号以外)は戦力を削ぐことを主としているのに対し、3号だけは全力で皆殺しにかかるのである。
オハナは「そういうキャラも居た方が緊張感あって良いかも」というわけで3号の行いについては放置し、実際第四階層からの緊張感は一入となっている。
一方で一部攻略サイトには序盤で3号と出遭わない事を祈れとまで書かれているのだが……………。
四人は先ほど4号と遭遇した場所へと戻って来た。
どうやら4号は既に何処かへ行ってしまったのか、姿は見えなかった。
彼らはほっと胸を撫で下ろし、安堵感に浸る。
その一瞬の隙を見逃す程、4号は甘くなかった。
4号眷属たちが現れたかと思うと一斉射撃を仕掛けて来たのだ。
その攻撃は幸いにも盾を構えた重戦士の少年によって阻まれるが、その射撃してくる方向に4号は居らず、既に背後に回っていて、巻物を使う間もなくヒーラーの少女が真っ先に戦線を離脱した。
「後ろにも居る!?」
ヒーラーの少女が倒れた事で漸く挟み撃ちにされていると悟った三人、戸惑いと共に盗賊の少女が声を出したがもうどうしようもなかった。
他に逃げ場など無い!そう悟った彼らは次の後ろからの射撃が来る前に、前方の4号眷属たちを重戦士の少年と盗賊の少女で、後方の4号には剣士の少年が向かって行った。
4号が次弾を撃つより先に剣士の少年は斬りかかった。
だがその剣は、
「――――――惜しかったなぁ」
スケルトンの持つボロボロの剣によって阻まれていた。
そして、そのコテツの稼いだ刹那の隙に4号は次弾を剣士の少年に撃ち込んだのだった。
剣士の少年が潰えたのを視界の片隅――――――パーティーメンバーである剣士の少年のHPが0になった事で確認した二人も時間の問題だった。
4号眷属に向けて進んだ二人だったが、その足をトリモチのようなものに絡めとられて満足に身動き出来ずにいたからだ。
ゆっくりと岩陰から姿を現したのは一匹のスライムだった。
「ごめんなさいね?貴方たちをこれ以上は進ませてあげることは出来ないわ」
スライムのスキル〖粘液〗。
粘着性のあるゲル状の物質を放つことで相手の動きを鈍くする。
ワヲが放った〖粘液〗に4号眷属にばかり気を盗られていた二人が触れてしまった結果だった。
魔法で効果を消し去ることが出来るが、生憎魔法の巻物はヒーラーの少女と共に消えてしまっている。
盗賊の少女がやぶれかぶれに矢を放つがワヲには大したダメージを与えられていない。
盗賊の少女は4号の次弾に撃たれ、残った重戦士の少年も4号眷属、コテツ、ワヲにHPを削られ果てたのだった。
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