☆900突破感謝記念SS  GO!GO!5号!

俺の名はディーゼル、後に伝説となる(予定)の冒険者だ。

今俺はとあるプレイヤーが運営する〖砦〗という場所で働かせてもらっている。

他の二つの砦に比べて此処は防衛するプレイヤーの数が一番多い、だからこそ今まで度々魔物プレイヤーの侵攻を受けて来たが、その悉くを退けていた。

そして報酬も他の砦に比べて多く、質も良い。


働きたい職場ナンバーワンと言われているのが、〖世界大戦〗討伐数ランキング第一位だった雷鋼が守備隊長を務めるこの砦だった。


この砦で雇ってもらうために厳しい試験を潜り抜けて、今俺はこうしている。

今はまだ無名の身だとしても、ゆくゆくは俺も〖砦〗を任される程のプレイヤーと成るのだから傍で砦に関する運営を今のうちから学んでおくのも悪くないだろう。


俺の永遠のライバルである『オハナ』も、今やダンジョンマスターとして強くなっていってるだろう。

俺もうかうかしていられない。


何?オハナダンジョンへは行ったのか?だと…………………?


あぁ、行ったさ。

いけ好かないプレイヤー連中に愚痴愚痴と嫌味を言われながらも、連れて行ってもらい――――――そしてそこで瞬殺された。

何処か見覚えのある動くマンドラゴラの進化系に奇襲され、あっさりと罠にはまり、あっけなく殺されたさ!笑いたければ笑え!!


だが、文句ばかり垂れ流していたいけ好かない連中も同様に、否、それ以上に酷い目に遭っていた。

瀕死の状態で麻痺状態になってしまう罠にかかり、その状態のまま丹念に装備品を破壊されて行ったのだ。

スカッとした!というのは胸の内に秘めておこう。





とにかく!今日もいつもの様に俺は雷鋼の傍で砦の運営についての勉強をしている時だった。


「ら、雷鋼さん!大変っす!この砦に魔物がッ!!」


血相変えて飛び込んできたのは、今日は櫓の上での警備を担当していたプレイヤーの一人だった。


「慌てるな、魔物の襲撃などこれまでにも幾度となくあっただろう?何をそんなに怯えているのだ?」


俺も同じことを思っていたので、雷鋼のこの言葉に首肯して同意する。


「ただの魔物じゃねぇんすよ!?〖世界大戦〗第三位の――――――植物型魔物が単身乗り込んで来たんすよッ!?」


何………だと………?オハナが此処に来ている…………?


「はぁ…………何かと思えば、たった一人の魔物プレイヤー相手に動揺し過ぎだ」

「それは違う!!雷鋼さん、アンタもオハナを――――――アイツを見縊っていると殺られるのはアンタの方だぞ?」


これまでも、ヤツは数多くのプレイヤーたちを葬って来た。

「植物型の魔物だから」と油断し、「たった一人だから」と慢心し、本当に花でも手折るかの様に簡単な事だと嘲り挑んだ連中は皆返り討ちにされた。

それを俺は知っているッ――――――!!


「そうっすよッ!既に俺と居た仲間たちはヤツの餌食になっちまったっす!!すぐに迎え撃つべきっす!!」


俺と報せに来たプレイヤーの真剣さが少しは伝わったのか、雷鋼が自慢の槍を装備して迎撃に向かおうとするのを――――――、


「待ってくれ、ヤツの厄介さの原因は主に〖即死〗と〖毒〗だ。無効化できる装備があるなら今のうちから装備しておいた方が良い」


俺の忠告を聞き入れてくれた雷鋼は全身鎧と大盾を装備する、俺もついこの間大金を叩いて勝った〖毒無効〗の腕輪を装備する。

次の瞬間、背筋が凍るような嫌な気配が広がったかと思えば――――――、


「がっ――――――!」


報告に駆け込んできたプレイヤーがその場に倒れ込む、俺や雷鋼さんが回復薬を使用する間もなくHPが0になり消滅してしまった。


「…………少し、強力過ぎやしないか?」


ヤツの〖毒攻撃〗の事を言ってるのだろう、だがその眼は微塵も怯んでなどいなかった。


「本気のヤツはもっとエグいですよ?」









俺は砦の中、狭い廊下を走っていた。

雷鋼さんがオハナと一騎打ちをしてくれている間に、俺が他にも無事だったプレイヤーたちを集めて加勢する為だ。

そうでなくてもこの〖毒〗フィールドは鬱陶しい。

雷鋼さんに加勢する前にこのフィールドも取り除いておきたいところだ。


それにしても誰とも会わないのはどういう事だろうか?

普段ならこの廊下をすれ違うのも難儀する程のプレイヤーがこの砦には居るはずなのだが……………、まさか全員この毒で死亡したわけでもないだろうに――――――。


その疑問の答えが廊下の先、曲がり角から現れた。


ヤツは確かオハナの眷属の一匹、それもダンジョンアタックしたこの俺を初っ端から撃退したマンドラゴラの進化系じゃないか。


「つくづくお前とは縁があるらしい……………」


俺が剣を構えると同時に、奴も俺に向かって駆けて来た。

この狭い廊下だ、避けきれないだろう!喰らえ!!


致命傷を与えるつもりで振るった全力の一撃、だがヤツはそれを難なく躱し――――――。


パリィン――――――!!


ガラスが割れる様な音が聞こえると、途端に全身が重くなり動けなくなる。

どうした事かとステータスを確認すると〖毒〗状態となっており、みるみるHPが減っていく。


「そんな、馬鹿な………………」


俺の伝説はこんな――――――ヤツの眷属にさえも阻まれるのか……………。


絶望に沈んでいく意識の中、いつか聞いたような「ウェーイ!」という声が聞こえた様な気がした。

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