☆800突破感謝記念SS  ホタル 始まりの物語

私がまだ幼稚園の頃から、私はずっとお父さんのお仕事の都合で転校を繰り返していました。

仲の良いお友だちは出来なくて、家で一人遊びをする事が多くなりました。

お母さんは生まれた時から居なくて、ずっとお父さんと二人で生活していました。


そして私が小学校5年生の時、お父さんが誕生日プレゼントに買って来てくれたのが”オズワールドファンタジー”でした。


今までゲームなんてやったことなかった私、だけど今通っているクラスで良く聞く名前のゲームをお父さんにお話したから買って来てくれたんだと思う。

忙しそうにしているお父さんが私の話を覚えていてくれた事自体が嬉しくて、そして折角買って来てくれたお父さんをがっかりさせたくなくて、私はあまり興味の無かったゲームでも遊んでみる事にした。



――――――………うーん、正直難しい。


操作とかは普段身体を動かすのと同じように動作できるんだけど、私はあがり症な上に人とお話するのが苦手で、私はゲームの中でも一人ぼっちだった。


クラスの子たちの輪に入れてもらおうとして、勇気を振り絞って話しかけてみたけれど、


「レベル幾つ?」

「……………4」


「………装備は?」

「―――と、―――くらいかな」


「はぁ?そんなレベルと装備じゃ足手まといだからこっち来ないで!」


勇気を振り絞った一回、たった一回って思うかもしれないけど私には本当に勇気のいる一歩だった。

だけどそれもすぐに断られちゃった。

でも仕方がないよね?私が弱っちいのは本当だもん。

きっとみんなに迷惑かけちゃうのも本当の事だと思うから。


でも、もしかしたら私がまた転校してもこのゲームを通じてお友だちで居てくれる子が居るんじゃないか――――――って勝手に心の何処かで期待してた気持ちも一緒に萎んで行っちゃった。


そうして萎んじゃった気持ちがあって、私はこのゲームで遊ぶ事が少なくなった。

下手だったけど一時期夢中で遊んでいたゲームで遊ばなくなった事にお父さんも気付いた。


「何かあったのかい?」


珍しくお父さんがお休みの日に、私にそう訊いて来た。

だから私はクラスであった事を全部話した。


「そうか……………」


お父さんはそれだけ言うと、私の頭を撫でてくれた。

しばらくそうして優しく頭を撫でてくれて、お父さんがぽつりと話し始める。


「それじゃあいつか父さんと遊ぼう」

「お父さんと?」


「あぁ。今はまだ難しいが、仕事の方が一段落したら父さんと一緒に遊ぼう」

「………………良いの?」


「勿論!父さんだって昔はよくゲームで遊んでたんだ。蛍と一緒に遊べるなんて母さんもきっと天国で羨ましがってるに違いない」

「きゃー♪」


優しく撫でてくれていた手でそのまま髪がくしゃくしゃになっちゃうくらいに撫でられる。


「――――――だからさ蛍?父さんが一緒にゲームできるようになった時に、蛍のお友だちをいっぱい紹介してもらえると助かる」

「ゲームの中だけのお友だちでも?」

「構わないさ。そりゃあ父さんは蛍が心配だから悪い大人との付き合いは断固として認めないけど、例えゲームの中だけだとしても友だちは友だちだろう?」


「うんっ♪」








それから私は、もう一回この世界で遊ぶようになった。

お父さんをびっくりさせたくて魔物になっちゃったのは内緒。

レベルを上げるのもイベントも大変だったけど、お父さんと一緒に遊べる日までとりあえず頑張ってみようと思った。


魔物プレイヤーさんになってわかったのは、こっちの方がプレイヤーさんが優しいって事だった。

クエストなんかも親切に教えてくれたりするし、変に威張ってる人もあんまり見かけない。


私には〖魔物側こっち〗が合ってるみたい。


お友だちも少しずつ増えて、すぐに緊張しちゃうこんな私でも仲間に誘ってくれる人たちが増えたのはとても嬉しかった。

そんな中、ダンジョンで働く魔物プレイヤーさんを募集していると親切に教えてくれた人が居た。

条件は〖毒無効〗または、〖毒耐性〗を所持している事。


それ以外に難しい条件は無くて、募集していたのはこの間のイベント〖世界大戦〗で第三位になっていた植物型の魔物の人。


きっと沢山の人が集まるはずだよね…………………。


お友だちが沢山増えるかもしれない――――――。

そんな動機で参加を決めて…………、


「ふぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――!!!!!!!?」


すぐに後悔した。


とてもまじめな雰囲気で暢気に「お友だちを~」なんて言い出せる空気じゃありませんでした。

幸いスキル〖気配遮断〗のおかげで何とか狙われることも無く、上に上がることが出来ていました。

そう。オハナさんに出会うまでは、です。



気が付くとお花に囲まれていました。

そしてそれが銃口の様なものだと私はこっそりと見ていて知っていました。

〖気配遮断〗は正常に機能しているはずなのに、グイグイと私は追い詰められてすごく怖かったです。


それでも、私はこの時の出会いに感謝しています。

オハナさんはとても強いプレイヤーさんなのに、私をダンジョンにスカウトしてくれましたから。














「オハナさん?何してるんですか?」


「うん?あぁ、ホタルちゃん。ホタルちゃんも一緒にやる?」


オハナさんは自分の蔓を岩に括り付け、眷属の人たちを一列に並べていました。


「もしかして、長縄跳びですか?」

「ピンポーン。大正解、私の所では大縄跳びって名前だったけどね?」


「おやまぁ、懐かしいですねぇ」

「うむ。ワシらも子どもの頃はよう校庭でやったもんだ」


「オハナ様?どうしてそんな事をする必要があるんです?」


サンガさんがいつもの様にツッコミを入れます。


「暇だから!」

「いや、ですけどやる意味が――――――」

「だって暇だから!!」


オハナさんはとっても強い、でも今は私たちが強くなるためにって我慢してくれている。

そんなオハナさんの可愛い?我儘をきいてあげようと、眷属の人たちも一緒になってオハナさんの蔓跳びはワヲさん、それに引っ張られて参加したコテツさんも加わって、一緒になって遊ぶのはとても楽しかった。


お父さんに早くこのダンジョンの皆を紹介したいなぁ。



「あ、何かスキル生えたw」


…………………オハナさんって本当にすごいなぁ。

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