☆700突破感謝記念SS  コテツ&ワヲ 始まりの物語

ワシらには今年で十歳になる孫が居る。

その孫が今熱中しているのが、〖オズワールドファンタジー〗なるゲームだった。

息子夫婦共々家族ぐるみで遊んでいるらしく、息子夫婦はワシらにも勧めて来おった。


「ゲームなんぞよくわからん!」


そうワシは突っ撥ねたのだが――――――、


「良いじゃありませんか、老後の楽しみに一緒にやってみませんか?」


………………婆さまにこう言われちゃ断れん。

それにワシも寄る年波には勝てん、離れて暮らす孫と遊んでやりたいが現実世界では身体がついて来んから、ゲームの世界はワシらには丁度良いのかもしれん。



テレビに繋いでするゲームしか知らなかったワシらが降り立ったゲームの世界、なるほどこりゃあ良く出来とる、息子夫婦や孫が熱中するわけだ。

何故かワシらが始める時には〖魔物〗になってくれと頼まれていたからワシも婆さまも言われた通りに〖魔物〗としてゲームの世界に降り立っていた。


「凄いもんですねぇ爺さま?今死んだらこのゲームの世界に生きられるかもしれませんねぇ?」


何故このタイミングで縁起でもねぇこと言うんだ婆さまよ?




そうして息子夫婦と孫が待つ場所へと二人して移動する。

息子家族はキャラの見た目が現実世界とよく似ているので一目でわかった。

それにしても何故息子家族は人間キャラなんじゃろうか?


あまり深く考えずに近付いて行くと、


「おじいちゃん?おばあちゃん?」


孫がどうやらワシらに気付いたようだ。

これからゲームの世界で思う存分孫と遊んでやれる――――――そう思うと、中々嬉しいものがあった。

だがしかし、その嬉しさは一瞬にして打ち砕かれた。


なんと息子家族は事もあろうにワシらを攻撃して来おった。


「おじいちゃん、おばあちゃん。大人しく経験値になってよ!ただの魔物よりプレイヤーの魔物の方が経験値が良いんだから!」


そんな事を言いながら容赦なく攻撃してくる孫。

ワシは悔しくてたまらんかった!

何より、ゲームとは言え婆さまにまで躊躇い無く攻撃する息子家族を見てワシは怒りに震えた。




ログアウトしたワシらは絶望に打ちひしがれていた。

隣で婆さまが涙を堪える様にしているのがどうしようもなく居た堪れなかった。

ワシはすぐさま息子に電話をし、先ほどの暴挙の文句を言ってやったのだが、


「父さん、所詮はゲームの中の話なのにこっちにまで持ち出さないでよ」


…………………どうやら息子家族はこのゲームに魂を売り渡してしまったらしい。

なるほど、そうか――――――よくわかった。


ゲームでの屈辱は、ゲームの中で晴らさせてもらう!

文句は無いな?




それから暫くワシはこのゲームに没頭した。

婆さまはあの一件が余程ショックだったのか、あれからこのゲームをする事は無かった。

こうしてワシは〖スケルトン〗に進化した。

人型にさえなればこっちのもんじゃ。


だが、まだまだ足りん!!

もっと………………もっと強くなるためにはどうすれば良い!?

息子家族は課金をして良い装備を持っていることが分かった。

スケルトンであるワシは標準装備のボロボロの剣以外に装備など無い、経験値ポーションとやらも買おうか買うまいか迷ったが経験値だけならば自力で稼げるので手出しせずに置いた。


息子家族と今度相対する時は完膚なきまでにボコボコにして婆さまの仇を討ち、改めて婆さまに謝罪させる!!

ワシの惚れた女を泣かせた罪は例え息子や孫でも容赦はせん!!



レベルアップを計る間、息子家族とは徹底的に接触を避けた。

そんな中で新たに追加された機能がダンジョンだった。

そこで働くことが出来たなら通常よりも良い報酬が貰えるらしい。


ワシはダンジョンで雇い入れてもらえるならば、第三位の人の所が良いと決めていた。


〖世界大戦〗の折、遠目に一度見たことがある。

プレイヤーとしては珍しい植物型の魔物――――――。

血気盛んに攻め続けるプレイヤーが多い中、動けないのを考慮してか拠点防衛に専念し〖守備の要〗とまで称えられていた人だ。

たった一人で戦局をひっくり返すその強さにあやかりたいのもあった。


ただ、第三位の人のダンジョンは眷属が跋扈していて、未だに誰も雇い入れていないような状況だった。


しかし運はまだワシを見放してはいなかった。

タイミング良くその第三位の人のダンジョンで人の募集が掛かった。

そして――――――、


「なあ、婆さま?久しぶりに一緒に行かんか?」


婆さまとは時折一緒に行ってはいたが、レベル上げに専念していたワシは長らく婆さまと共にゲームしておらんかった。

事情を話すと婆さまは嬉しそうに微笑み、


「うふふ、ゲームの中で嫁姑戦争するのも悪くありませんね?」


――――――あぁ、それでこそワシが惚れた婆さまじゃ。

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