☆600突破感謝記念SS アウグスタダンジョン
「おかしい……………」
俺は一人、誰も来なくなってしまったダンジョンで呟いた。
何故こんな事が起こるのか?理由がさっぱりわからない。
此処は俺のダンジョンなんだから俺の好きなように運営しただけだ。
それなのに――――――…………。
俺の名はアウグスタ、〖世界大戦〗イベントの討伐数ランキングで1位になった魔物プレイヤーだ。
種族は〖チビウルフ〗から始めて、今は〖ウェアウルフ〗だ。
狼男って言やぁ分かり易いか?
そんな俺が1位になった報酬としてダンジョンを貰った。
上手くすればレベルを1上げるのも一苦労になっちまった環境で、他の奴らに差をつけることが出来るかもしれない――――――そう思っていた。
だから俺はひたすらに自分が経験値を得る事に拘った。
ダンジョンの恩恵を受けようと色んな奴らが来たが、俺を強化できない奴は用無しだ。
俺を強くして、俺の邪魔をせず、俺が強くなる助けになる奴が居ればそれで良かった。
ダンジョンを運営して最初のうちは賞金首になっちまった俺を狙って人間プレイヤーも挑んできていたんだが、今では何も知らねぇようなビギナーが迷い込んでくるくらいだ。
そんな奴を倒しても経験値なんて全然入って来ねぇ。
そして最初に戻るわけだが――――――……………。
「どうして誰も来なくなっちまったんだ?」
「……………ですから以前に申し上げましたでしょうに、アウグスタ様のダンジョンは端的に言ってつまらないのです」
「なんだと!?」
俺のダンジョン運営をサポートするっつAI、アンガの言葉にカチンときた。
つまらないわけないだろうが!!
ダンジョン入って即行ボス戦とか大興奮だろ!!
俺はこれまでも魅せる戦いを意識して来た、つまらない戦いなんてした覚えは無ぇ!!
「ダンジョンに入ってワクワクドキドキの冒険も何も無く、いきなり毛むくじゃらの狼男にワンパン喰らわされるのが楽しいと思いますか?」
「喰らわすのは楽しいぞ?」
特にピンボールの様にぶっ飛ばした時とかは爽快だ!!
「あー、申し訳ありません。会話のキャッチボールを望んだ私が悪かったです」
よくわからんがアンガが悪いんなら俺は悪くないな!
つまり俺のダンジョンが寂れてしまったのはアンガが悪いって事だ。
「どうにかしろ」
「イヤイヤイヤイヤ、どうにかしろと言われましても。どうにかしようとはしましたけどその全部に反対したのはアウグスタ様じゃないですか」
「ダンジョンの構造は変えずに挑戦者を呼ぶ道具とかはないのか?」
「私、ド〇えもんじゃありませんので無理です」
「けどロボだろ?」
「AIです」
「似たようなもんだろ?」
「じゃあまずは四次元を制する術をください」
「四次元?なんだ?中華屋か?」
「あー、申し訳ありません。会話のキャッチボールを(以下略)」
そしてふりだしに戻る事数回――――――。
――――――ったく、全然使えねぇな。
これでサポートAIってマジかよ。
「何やら失礼極まりないことを考えて居そうですが無視します、それでアウグスタ様?本当にどうにかしないとこのままではダンジョンで雇っている魔物プレイヤーの皆様への報酬が払えなくなりますよ?」
アンガの言葉に俺は固まる。
それは困る、このダンジョンで雇っている魔物プレイヤーは皆強化する事に長けていて、それがあるからこそ俺は開幕速攻をキメることが出来ているんだ。
「……………いっそ他の奴のダンジョンを潰すか」
「もし仮にそれが出来たとしてもこんなクソみたいな――――――コホン!とんでもダンジョンに人が来るとは思えませんが?」
「クソみたいとか言うんじゃねぇよ!!お前も運営に携わってるんだからな!?」
「実質ワンマン経営じゃないですかやだー、プークスクス」
完全に俺のことナメてるアンガを鷲掴みにして思いっきり地面に叩きつけ、上から全力で何度も踏みつけた。
「………………無駄ですよ?私は〖破壊不能〗ですから」
知ってるよそんなこと、だけど少なくともイライラは治まる。
「……………ダンジョンの構造を変えてみるか」
「漸く理解して頂けたようで何よりです」
「但し!これで挑んでくる奴が増えなかったら元に戻すからな!!」
「えぇえぇ構いませんとも、どうせそんな事にはなりませんから。それにまだアウグスタ様のダンジョンはテコ入れが簡単な分救いがあるんですよ?現在第一階層にある円形闘技場の階層を地下十階――――――最下層に持って行けば、後は他の階層に罠や魔物などを設定していくだけですので。第2位の闇風様のダンジョンは此処よりももっと閑古鳥が鳴いてるらしいですよ?」
「闇風の野郎のダンジョンが?」
「えぇ。罠や謎解きギミックが多すぎて遅々として前に進めないのだそうです、その罠も解除に失敗すれば即死級のものばかり、そして謎解きの内容や罠の位置、ダンジョン内の通路まで週替わりで変更され解き直しになるという本当にクソ――――――コホン!プレイヤー泣かせなダンジョンになっているそうです」
「ハッ!インテリ気取ってるアイツらしいダンジョンだな、胸糞悪い」
「第3位だったオハナ様のダンジョンが一番繁盛しておりますが、只今使用不能になっているらしく、プレイヤーの皆さまを取り戻すには絶好の機会かと――――――」
「よっしゃ!アンガ、全十階層の内の半分はお前のアドバイス通りのダンジョンを創る。残り半分は俺がやる」
そうと決まれば早速ダンジョンの改築を始めるとするか!!
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