本編☆感謝記念SS
☆100突破感謝記念SS 冒険者サイドから見たオハナ
俺の名はディーゼル、この世界オズワールドファンタジーで活躍する(予定の)冒険者だ。
長い長いチュートリアルを終え、漸くこの世界に記念すべき第一歩を踏み出した。
ここから、俺の伝説が始まる――――――。
こうしたゲーム序盤は何処も同じだろう、簡単なクエストをこなしてレベルアップし徐々に強くなっていく。
ここは俺もその常識に従おうじゃないか。
これなんか良さそうだ”世界樹周辺で増えすぎたホーリートードの駆除”。
「本当にこれを受けられるんですか………………‥?」
何故かギルドの受付嬢が青褪めた顔でそう言った。
まだまだ新人という事で受付嬢の対応もそれなりなのだろうか?なるほどリアルに出来ている。
この先伝説に名を刻む存在だとしても今は無名の冒険者だ、この扱いも止む無しか。
俺はカエル駆除の依頼を受けて、ギルドを後にした…………………。
<ディーゼルが去った後のギルドにて>
「アイツ………死んだな」
「あぁ、世界樹の近くにはアレが居るって事を知らない素人だろ?」
「ギルドの受付も教えてやらないんだな、可哀そうに」
「まぁ死んで学ぶこともあるだろうて」
そしてギルドに居た全員がディーゼルの出て行った扉に向けて合掌した。
…………………ハッ!
此処は…………俺は死んだのか?
何が起きたんだ?訳も分からん間に殺されたぞ……………。
復活までまだ時間はある、出来るだけ死んだ時の状況を思い出してみるか………。
「あれが、世界樹か……………」
その美しさ、荘厳さに俺は息をのんだ――――――瞬間、意識を狩り取られていた。
…………………さっぱりわからん!!
俺は何が原因で死んだのだ!?
これでは対策の打ちようも無いではないか!?
世界樹を見るとHPが0になるバグでもあるのか!?
いや、焦るのはまだ早い。
俺はまだ新人冒険者、先達たちの知恵を借りるのも悪くないだろう。
きっと俺が死んだ原因に関する事を誰かが教えてくれるはずだ。
「え?お前世界樹に行ったの?」
何故か信じられないものを見る様な目で見られた。
酒場に屯していた暇そうな冒険者たちに声をかけると、そんな反応が返って来た。
周囲に居る冒険者たちも何故か皆一様に死んだ魚のような眼をしている。
いったい世界樹で何が起きて居ると言うのだ…………?
「悪い事は言わない、あそこには近付かない方が良い」
「あぁ、あそこには俺たちじゃ到底敵わない化け物が棲みついてるんだ」
なるほど、この依頼はカエル駆除に見せかけたそのバケモノの討伐イベントクエストだったのだな。(※違います)
聖域と呼ばれるような神聖な場所に巣くう魔物……………まさか
だからギルドの受付嬢は俺に受注させるのを躊躇っていたんだな?
確かにどんな奴かは知らないが、凶悪な魔物であればまだ新人である俺の手には余る。
「討伐依頼は出て居ないのか?」
「一月ほど前に出てたんだよ、仮にも聖域だぞ?エルフやフェアリー族の神聖な場所だ、NPCが黙ってねぇよ。大規模な討伐隊が編成されてな、抜きん出た実力者こそ居なかったが、かなりの戦力が揃っていたんだぜ?俺たちもその討伐軍に参加してたんだ…………………」
男はそこで言葉を切る、その時の事を思い出しているのだろう。
男の顔には苦悶の表情が浮かび上がっていた。
男の仲間であろう冒険者たちも、悔しさを滲ませて唇を噛んでいた。
「世界樹の傍に居たのは植物型の魔物だった…………奴に近付く度に仲間が一人、また一人と倒れて行った。そいつと対峙する時には気が付けば討伐軍が半分以下になっていたよ、信じられるか?この町でそこそこの実力を持ってる冒険者たちをだぜ?」
「俺たちは運良く奴に近付けた、だけど……………本当にただそれだけだった」
「奴はそこから眷属を二体呼び出した、マンドラゴラの進化版だ。苦戦するよな相手じゃないし、死んだ後の範囲即死攻撃なんてよっぽど運が悪くなければ当たらない――――――そう思ってたんだ」
話始めた男が、両手で顔を覆う。
「何故か当たるんだよ…………ヤツの眷属の範囲即死攻撃は、何故か解らないけどバシンバシン当たるんだよぉぉぉぉ!!」
「………………アレで残った連中も更に削られた」
死んだ魚のような眼が更にその暗さを増す、心なしか酒場の雰囲気までもがお通夜のようだ。
もしかすると此処に居る冒険者たち全員――――――…………。
「あんなのに勝てるわけない、そう思って逃げ出した俺たちを奴は遠慮なく攻撃してきやがった。眷属を俺たちに追いかけさせて、奴は眷属を殺しやがったんだ」
「だからアンタも悪い事は言わねぇ、金はかかるが依頼を破棄して違うクエストにしとけ。アンタ一人じゃ奴に近付くことも出来ねぇよ」
話を聞く限り、とても序盤で討伐出来る様な魔物ではない。
そもそも即死攻撃を防ぐ装備品が現環境ではかなりレアな代物で、それも完全に無効化する物はまだ実装すらされていない筈だ。
俺はギルドに戻り、黙って受付嬢に破棄する為のお金を差し出した。
受付嬢も何も言わず、慈愛に満ちた顔で一度頷きクエスト破棄の手続きをしてくれた。
俺の伝説はまだまだ始まったばかり…………………。
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