魔物だもの  感謝記念SS

暑がりのナマケモノ

感謝記念SSへの☆に感謝を込めて

感謝記念SS☆100突破に感謝を込めて    魔物だもの 外伝

感謝記念SSの方の☆に感謝を込めまして、すぐに更新は無理でも書いていこうと思います。


今回の内容は、別の魔物プレイヤーのお話です。


第三者視点?と言うのでしょうか?――――――で書いてます。


好評であれば新規としてこの主人公視点で書いてみようと思っています。

先に言ってしまいますが、〖マンドラゴラ〗ではありません。




※苦手という方は本当にごめんなさい。







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イッモ……………イッモ――――――。


独特な効果音を響かせ、一匹の魔物が大きな白い塊を押して山を登っている。

魔物の種族はチビクロウラ、全身が深緑色で所々に紫色の斑点があるという毒々しい外観だが未だスキル的には〖無毒〗。

『チビ』と名がついているが2メートルほどの体長がある芋虫型魔物だ。

彼女――――――プレイヤー名〖オリン〗はオズワールドファンタジーを始めてまだ一か月にも満たない新人プレイヤーだ。


無数にある何処から何処までが『手』で、何処から何処までが『足』なのかもわからない手足を懸命に動かし、自分よりも大きな白い塊を坂の上へ上へと押し上げていく。

時々白い塊はもぞもぞと動き、中に何かが内包されているのだとわかる。

そもそもオリンが何故こんな事をしているのか?

それは――――――…………。


「どーしてッ!?攻撃手段がッ!!なのよー!?」


――――――という訳である。

しかもその〖糸を吐く〗――――――正式名称〖拘束攻撃:D+〗は相手を拘束状態にして、一定時間行動不能にするだけでノーダメージなのだ。

スキルランクが上がっても成功率と拘束時間が延びるだけである。

だから彼女は拘束した相手を必死にとある場所まで運んでいる。




「やっと………………着いた」


延々と白い塊を運ぶだけの作業にうんざりしていた彼女だったが仕方がない、経験値を得るためなのだから。


そこは彼女が登っていた山の頂上付近にある、ほぼ垂直の斜面だった。

勘の良い人はもう彼女が何をしようとしているか理解できただろう。

オリンはゆっくりとその白い糸繭を押して行き、突き落とした。

糸繭には防御力も少なからずあるが、オリンはそれにも構わずに突き落とした。

糸繭は斜面を時に跳ね、叩きつけながら転がり落ちて行き…………………。



オリンはレベルが上がりました。


しばらくすると、経験値を入手したアナウンスの後にそんな言葉が表示される。

だがしかし、彼女が望む進化先にはまだまだ足りない。

その事にオリンは溜息を吐く。


「どうすれば新しいスキルとか覚えるのよ………………?」


オリンのレベルは10。

けれどスキルは初期の段階で習得している〖拘束攻撃〗と〖毒耐性〗のみで、そこから一切増えていない。

先ほどの突き落としサスペンス劇場にしても、どうにか経験値を得る方法がないかとオリン自身が攻略サイトで調べて、高所からの落下でもダメージを受けるという情報から他の〖チビクロウラ〗プレイヤーが編み出した方法だった。

そうでなければ未だに〖体当たり〗や木の上から敵にダイブする〖のしかかり〗でダメージを与えなければならず、そのダメージにしたって微々たるもの、最悪の場合そこから逆襲されたり、逃げられたりする可能性の方が高かった。


魔物プレイヤーの〖スキル〗に関しては謎が多い。

〖魔法〗に関してはレベルと熟練度が存在していて、それらの条件を満たす事で新たな魔法を修得する。

しかしスキルに関しては〖レベルが上がったら勝手に覚えた〗、〖窮地に陥ったら閃いた〗、〖意味不明な行動の果てに修得した〗等々、条件が一切公表されていない、攻略班も音を上げるほどの異常事態だ。


人間プレイヤーと違って課金要素の少ない魔物プレイヤーはスキルの多さも強さに直結する、何も装備出来ない序盤ならば尚更それは顕著だ。

意味不明な行動も窮地に陥る事も出来ないオリンは結局、レベルアップによる新スキルの獲得に期待するしかなかった。


先ほどの糸繭の中身は偶然通りかかった微精霊。

彼らは飛ぶことが出来る――――――基、浮かんでいるけれど〖拘束攻撃〗の効果で浮遊する事も出来ないので落下ダメージは入る。

他の〖チビクロウラ〗プレイヤーも同様の方法で経験値を稼ぎ、強くなっていっている。

けれど微精霊一匹から入手できる経験値なんてたかが知れてる。

今はまだオリンも弱いのでレベルアップに必要な経験値は低くて済んでいるが、後々高レベルになればなるほどレベルアップが困難になっていくのは目に見えていた。

人間プレイヤーならば相当の経験値が入手できるのだが、今のオリンの〖拘束攻撃〗のスキルレベルでは頂上付近に運ぶまでに拘束が解けてしまう。

そうなればオリンには勝ち目の無い戦いしか待って居ない。


リスクを恐れ、ゲームの中でさえ行動に移せない自分自身にオリンは再度溜息を吐くのだった。

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