第31話 雑の極みだよ
その後。
柊姉妹と別れた道中、俺はコンビニで妹にお菓子を奢るはめとなる。
籠にわんさか積まれたお菓子の山に口角が下に行ったり上に行ったり、青くなったりと。
どんだけ買うんだよって小言を挟みつつも受け取った籠を精算。
レジ袋二袋分って引き篭るつもりかよと。
「ん」
お札が数枚しかない財布の寂しさと袋の重さに気分が沈むなか、珍しく袋をもぎ取ってくる昴。
「ほい」と手渡されたのは板チョコ。
「なんだ?」
「糖分補給」
ありがとうと言いつつも、俺の金で買ったのになんでありがとうって疑問が浮かぶが、ここは言わぬが花と食べ歩く。
何か妙にソワソワしている昴を怪訝しそうに見ていると眉を吊り上げて少し怒った顔をする。
「あの人と本当に何でもないんだよね?」
「なんだよ、いきなり。あの時言っただろ」
「だってさ。空ちゃんのお姉さん見てたら分かるもん。お兄ちゃんのこと絶対好きだって」
「ぶっふっ!」
いきなりコイツは何を言いやがるんだと吹き出した。
「む、何さ!」
不機嫌そうな顔で俺を見た昴。
まぁ、会話の内容まで事細かに説明してなかったから分からないのも無理ないけどさ。
あの柊翼が? ないだろ。
「根拠は?」
「根拠と言うより、勘だよ」
「女の勘ってやつね。でもないと思う、だって──」
柊翼は俺の作品が好きだっていったんだ。
そして俺が描かないからあんなに怒った。
それで俺が好きなのは安直過ぎると思うし、それに──柊翼は俺が超えなければならない壁。友達よりもライバル関係に近い。
だから、ないのだと俺は──。
「でも、でもさ? 普通に女の子がライバル相手にあんな嬉しそうな顔をするかなー?」
ここまで事細かく説明しても疑い続ける昴の頭に手を乗せて撫でる。
「あのね。妹の頭ヨシヨシはブラコンのみに許された秘奥義なんだよ? 普通なら[はぁ? マジキモイんだけど]って言われるよ!」
「言うの?」
「んー?いや?言わないけど」
散々言っておいて言わないのかよと思いつつ、よしよしーと撫でる。
「誤魔化し方が超絶的に雑の極みなのはいいとして。しっかりしようぜ、お兄ちゃん」
中学生の妹はそう言いながらも何気に嬉しそうにしているのを見て、俺も大概だなと思う今日この頃だった。
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