第30話 柊翼は妹に弱い
「信じてたしー? 私には分かっていたとも!」とドヤ顔で昴は言っていたが、最初の電柱でこっちに疑惑の視線をわりかしガチで見ていたことは誤魔化せんぞ!
「霞君!」
昴とあーじゃない、こーじゃないと言い合いしていると遠慮しがちに柊翼に声を掛けられた。
「ごめんなさい、妹が迷惑を掛けて」
「いや、大丈夫だよ」
「むむむ」
竹刀でボコられそうになったけど。
そして今、凶器をもったまま柊の後ろで唸りながらこちらを睨んでいる。
その姿が小動物の威嚇に見えた。
「空、ごめんなさいは?」
柊は唸ってる柊妹の頭をポンポンしている。
これが怒ってるぞ!ってアピールなら凄い甘々しいぞ。
これで謝る子がいるのだろうか。
「うぅ……っ。ご、ごめんなさいです」
そして涙目で瞳をうるうるさせながら謝る柊妹。
居たよ、超絶後悔してますって顔で謝る子が。
根は素直でいい子なんだろうなと考えながらいえいえと俺は返す。
謝って一段落した。そう思っていた頃合いに柊妹もとい柊空は不思議そうな顔で翼に聞いた。
「ツバ姉、でもじゃあなんで泣いてたの?」
「えーと、それはね?」
どう話せばいいやらと眉をハの字にさせて困ってる柊翼。
俺を見て、どうなのかなと首を傾げてお困り顔。
確かに下手な説明をすればまたさっきみたいに竹刀を構えかねない。
それになんで下校時になんで竹刀持ってるの?
「空ちゃん、部活で怪我した帰りだからだよ。右足の踏み込みで無理して捻ったの」
「情報ありがとう昴」
俺が思った疑問は我が家の妹様、霞昴が察したらしく俺の耳元まで口を近付け小声で説明してくる。
ナイス、昴。
「いいよ、いいよ。帰りにお土産で手打ちにするよー?」
そこでガツガツ来るのどうなの。
「ねーえー、ツバ姉ぇーどうして!」
困り顔でいた柊翼の片腕を掴んで、瞳を潤ませながら大振りに腕を振る柊妹。
その様子がお菓子売り場で駄々をこねる子供と母親みたいな構図だ。
いや姉妹なんだが、体格差がありすぎて制服を着ていないとそう見えてしまうが正しいか。
兎にも角にも、困惑しまくって目をグルグルさせている柊翼を助けるべく、手を上げて柊翼と柊空の姉妹に声を掛ける。
「空ちゃんだったよね。実は柊とは部活のことで相談を受けていたんだけど、その、俺がどうしようもないばかりにお姉さんが怒って泣いたんだ。ごめんなさい」
俺が間違っていたのは本当で、柊翼の告白も嬉しくて、だから深々と頭を下げることしか今は出来ない。そう思った。
「ぇ、ツバ姉が怒った!? 最近、何か思い悩んでいたツバ姉が!? 最近、誰かの名前を言ってニヤニヤしていたツバ姉が!?」
「い……いや、ちが、あのね? そ、そう言うこと、じゃなくてね? 」
心底驚いた様子で翼と俺を交互に見ながら言った言葉に、今度は柊がしどろもどろに困惑している。
何を言ったんだろうか。
そして、俺はいつまで頭を下げ続ければいいんだろうか。
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