第29話 柊空は姉を想う
これで一件落着に思えたなか、柊翼の後ろから赤い帽子のオジサンよろしく、猛ダッシュで駆け寄ってくる人物が一人。
そして電柱から顔だけ出して[じー]とお隣から浮気相手が現れるのを偶然目撃してしまったかの如く、軽蔑の籠る視線を向けている昴が居た。
「ツバ姉、何かされたの!? この女の人に何か言われたの!? あんたねっ!!! ウチのお姉ちゃんイジメたのっ!!」
「え!? ちょ! ちが──」
俺は女の子でもなければ男なんだと言いたかったが、般若の形相で腕に掛けた袋から竹刀を取り出す。
え? なに、この子。ちょー物騒なんだけど?
外見は翼と瓜二つで、身長が俺と同じくらい低いのと髪をツインテールにしてる。
そのツインテ女子は怒り心頭で中段に竹刀を構えた。
「おぉおお、ちょっ!!」
電柱から様子見してた昴も流石に慌てたのか、駆け足で俺とツインテ女子の間に入ると仲裁しようとしていた。
良く見れば、物騒極まりない少女の服装は昴と同じ中学の制服だと気が付く。
「昴ちゃん、退いて!! そいつ成敗出来ない!!」
「空ちゃん、どうどう。そんなこと言わないで落ち着いて? この人が私のお兄ちゃん」
いや、どうどうって闘牛扱いかよ。
「……あ、え?」
そして闘牛___もとい、盛大に大口を開けたままフリーズしてるツインテールの少女に手振り素振りでアワアワしながらの柊。
「空! か、霞君は別に私をイジメてたんじゃなくて。その!! 私が付き合ってって言ったの!」
「いや柊、色んな意味で何か違う」
告白はされたが、そっちの告白ではなかったのは間違いないので否定すると、柊の背中越しで正気を取り戻した柊妹は睨んでくる。
「ふーん、お兄ちゃんが柄にもなく、美人さんと逢い引きしてるのを見て内心、うわぁ……菫ちゃんと杏ちゃんに報告しないとーって思ってたけど違うんだね?」
「違う違う」
何やら不穏な発言をした昴に俺は全力で否定する。
「でも柄にもないって点は間違いないか。確かに柊は美人だけど俺達──」
「あーはいはい。惚気は要らないんで、何なら言質取りましたー」
スマホ、ポチポチ触りながら先程の会話を録音したのを再生する。
「可愛い妹、今日はどうした?」
露骨に脅すつもりなのか。
俺は全力で話題を変えようも務めるも、冷ややかな視線を向けたままの昴。
「うん? 友達との帰りだけどー。見ちゃいけないものを見てしまい、流石に二人に告られた後で他の子と逢引とかないわー」
「いや、違うからな? 何なら柊に聞けば身の潔白を証明出来るぞ」
「なんだ、つまらない。まぁ?実はだと思ったけどー。そこまで節操なしじゃないもんね私のお兄ちゃん」
お前は今まで俺のことを何だと思っていたのか小一時間問い詰めたい気分になった。
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