25.5 授業中の女子会[時雨崎杏]
「で、それを因数分解して答えを求めて──」
授業中。今日も今日とて私時雨崎杏が居るここ2年3組の教室内は安穏としている。
今朝、勢いで花の手を握った私達に言った一言でショックを受けてる菫は元気がない。
双子と言えどそこまで似ないのかなとか考えながら、握った感触を思い出して頬が緩む。
手を握るって事前に示し合わせた訳ではないので驚いたけど、そんなことでも嬉しい。
[なにか嬉しいことでもあったの?]
左隣からノートを切り取った紙を渡され、読んでみるとそう書かれている。
私の隣。花にとって嫌いな人だと言った柊翼が、相変わらず表情が読めない感じで小さく小首を傾げる。
[朝、ちょっとね]と切り抜いた紙に書いて渡すと、直ぐに紙が返ってくる。
速筆過ぎでは?と思いつつ読む。
[霞君?]
「っ!?」
危うく声に出そうになり、口を塞ぐ。
幸い、先生は黒板に張り付いてこちらを見ていないので難を逃れたが、右隣の秋は何かを察したのか喜々とした様子だ。
[さては、恋バナっすか?]
[違う]
[霞君、元気?]
[元気よ、少しだけ落ち込んでいるみたいだけど]
「!?」
ち、ちょっと! なんで露骨に不安そうな顔になるの。
[大丈夫。本人も特に問題はないって言ってたし!]
何故か、胸を撫でろ推して安心した顔をする翼。
喧嘩別れの形で花と話せてないから気になるのは仕方ないけど、どうにも腑に落ちない感じがした。
そこで右隣から再度紙がくる。
[やっぱり恋バナじゃないっすか!ズルい、ズルい!]
[違うって!]
[ぇえ? でも柊っちがこんなに不安定なのって、実は霞っちのことが好きだからっすよ?]
「……え?」
秋の書き物を見て、私の口から小さく声が漏れた。
長身でショートボブの白銀の髪。出るところは出て引っ込むところは引っ込むモデル体型。
綺麗な青い瞳。
そこに居るだけで自然と1枚の絵になる中性的な同級生。
同性でも見蕩れる人は少なくない程、綺麗だ。
紙を渡された。
[顔、強ばってるっす]
[……もしかしてか・ら・か・っ・て・る?(怒)]
[いやいやごめんごめん。可能性の話であって、私は本人から聞いてないっすよ!]
教科書を前に立て、両手を合わせて片目を閉じる片喰秋。
本気で悪いことをしたと思っている様子だった。
そして私は翼を見た。
──その横顔がほんのりと赤くさせ、恋する乙女のように思い耽るようだった。
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