第25話 ハモる双子

「でさでさ!そのキャラがマジかよって感じでさ!」

「おぉ!確かに! そうなる!」

「で、次に推しが俺の女に手を出すな!って出張るシーンが最高!」

 登校途中。片喰秋と楠月光が一緒に居る光景と遭遇。

 しかもその後ろで眠そうに欠伸する草壁茜が居る。

 この図は一体?

「菫ち──いや菫?」

 どうして楠と片喰が親しげに話しているのか聞こうとして、いつものように言おうとすると頬を膨らませて不機嫌そうに菫に睨まれたので、急いで訂正。

 恐い。

「何かな、花君?」

「あぁ……どうして楠と片喰が楽しそうに談笑しているのかと思って」

「たはは……。昴ちゃんには怒られるかもだけど、実は秋ちゃんに私が紹介したの。確か翼ちゃんと花君が言い合った時に仲裁してたクラスに居たイクメン紹介して!って感じで?」

「うん。昴の奴が見たら凄いことになりそう」

 主に嫉妬でヤケ食いしそうな程には見せられないだろうなと思う。

 いやいや、確かに楠はいい奴だよ? でもね、昔から知ってる友達を妹が好きだって知ってるから、少し複雑なんだよ。

 そうか。これが昴から見た俺達3人の構図になるのかと独りでに納得してしまう。

「でも楠だぞ? 今年、新入生に告白されて1週間で自然消滅した」

「確かに月光君は良く知らないと変人だけど、その子に見る目がないってことだよ。だって何気にハイスペックだし?」

「そのハイスペックを定期的に俺んちでしてる格ゲーでボコボコにしてる菫が言うのな」

「む、ボコボコって酷いなもう! 昴ちゃんもそうだし、それに私達は真剣勝負だよ!」

 真剣勝負と言う名の、相手の自尊心を木っ端微塵にするようにしか見えないのだが。

 あまりにも技とガードの連携がえげつなくて、一方的に倒された友達と外でリアルファイトするような。

「お!おはよう、霞っち!」

 菫と話していると俺に気が付いた片喰が諸手を挙げてぴょんぴょんとジャンプしながら挨拶してくる。

「おはよう片喰」

「いやいや!普通っっっ!もっとこう何か変わった何か!」

 いや、語彙力よ。

「変わったって言われてもな……。テンション天元突破している片喰に合わせてたら俺が午前中で疲れる」

「ひどー、遠回しに面倒臭い扱いされてるっ! 菫ちゃんと杏ちゃんもおはよう」

「おはよう秋ちゃん」

「おはよう秋」

 お、頭が覚醒したのでちゃんと返事し始めたと杏を見ていると、ふと視線を感じて月光の方を向くと茜と目が合う。

「……っ」

 茜に顔を鞄で隠された。

 何これ、地味に傷付く。

「おはよう、楠、茜」

「おはよう霞」

「お……おはよう! 行くよ月光!」

「ちょ!? え! なに!?」

 茜が顔を真っ赤にさせて挨拶するなり、早歩きで月光の手首を掴んで先に行ってしまう。

「ぇぇえ!?」

 唖然として無抵抗で連行された月光。そして置いてかれた片喰は驚いた顔をして俺達に手を振って茜達の後を追い掛けて行く。

 その一連の流れを見て菫と杏が顔を見合わせて首を傾げていた。

「花、何かあったの?」

「何もなかったと思うんだけど」

「何かなかったらあんな反応しないと思うけどなぁ?」

 杏はふぅーんって感じに納得して、菫の方が若干意味有りげに俺を見てくる。

 本人が言っていないのに俺が言うのは違う気がするので濁した答えしか出来ず、苦笑いを浮かべていると両手を握られてしまう。

「花君、遅刻するよ?」

「は、はは早くしないといけないから!」

 右手に菫、左手に杏が手を握ってくる。

 少しだけ気恥ずかしくて目のやり場に困る。

 自分の手汗とかヤバいな、意外と2人の手が小さくて柔らかいなとか。

 緊張と混乱で動悸が激しくなる。

「あのさ?」

「何よ?」

「んー?」

「その……なんだ。滅茶苦茶恥ずかしい」

「「公衆で手を繋いで最初に言う言葉がそれ!?」」

 流石、双子。見事に声がハモった。





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