第24話 柊翼
朝食を食べた花子は洗面所で顔を洗っていた。
絵を描くことが楽しかったのは中学までで、俺が高校に入って美術部に入部して出会ったのはその頃だったか。
思い出していた天才に会ったのは確か──。
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「霞花子です。風景画を書くが好きです、よろしくお願いします」
入部してから新入生の挨拶をすることになり、1年生は三名。
俺とカタバミ、そして柊翼だった。
「片喰秋です!苗字が厨二臭いですが本名で、字はあら方を喰らうと書いてカタバミ。投稿サイトでカタバでゲームキャラのイラストを投稿してますので、いいね!をよろしくお願いします!」
自己紹介を終えて、頭を下げる金髪赤眼の美女が笑うと特徴的なギザ歯が見える。
先輩男性部員の大歓喜と女子のコイツらて目線の両端が垣間見えた中、次の柊翼が無表情で頭を下げる。
「柊翼です。全日本美術展で受賞するよう努力しますので、よろしくお願いします」
雪みたいな白銀の短い髪に、海のような透明感がある青い目。
無表情なのに、何処か凛とした顔付き。
花子と160cmある位のカタバミよりも身長が高く、170cmあるだろうか。
無愛想ではないが、どうにも不思議な雰囲気を持つ少女としか最初は思わなかった。
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その後は俺がやはり女子と勘違いされているので誤解を解いたり、秋の奴が部室でエモくて、少しはだけている少女のイラストを描いてたら先生に怒られたり、柊が黙々と人物画を描いているなど何事もなく日常は過ぎていく中、柊は宣言通りに年内で全日本美術展を受賞した。
ワンピースと少女と大空。
その作品を見て、みんなは凄いとか感動したとか言っている。
秋は秋らしく鼻息荒く柊の絵を自分のイラストに描き起こしたり、俺は自分絵が落選したことが凄い悔しかったけど、同時に落胆していた。
楽しかったのに、好きだったのに、自分しか描けないものがあるって息巻いていた結果に泣きたくなってきた。
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二月になった。俺は部活を行かなくなった。
描くのをやめた。
茜に大口叩いた結果がこれじゃ顔向け出来なかったし、そのことは伝えてなかった。
秋は何度も誘いに来たし、先輩達は一応休部としてそのままにしてくれていた。
そして放課後、杏達と待ち合わせしている放課後、柊が俺の教室に来た。
「どうして」
「何が?」
まだ残って居るクラスメートも居るなか、棒たちしていた柊は無表情なのに、何処か怒っていた。
「霞君の絵、見たよ」
「それがどうしたの……」
「あんなの私には描けない。それに今回は審査の基準の方向性もあった」
「もう終わったから」
「終わったってなに……? 終わってなんかいるもんかっ!! 駄目だったらまた描けばいい! 私は凄いと思った、あの絵!」
「凄い? 言われて嬉しくもないね!! 柊翼の絵の方が凄いって他の人も言っていただろ!」
言い合いをしていると月光と秋が止めに入ってきた。
「タンマ、タンマだよ柊っち!」
「花、どうしたんだ!」
「ごめん、月光、秋、柊……。でも俺にあんな絵、描けないんだ。だから──翼。俺はお前が嫌いだ」
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思い出す度に、我ながらガキ臭い発言をしたと歯を磨きながら身悶えていると、チャイムが鳴る。
「花君、行こ!」
「むにやむにや……」
急いで口をすすぎ、玄関を開けると元気な菫と無惚けたままの杏が居て、俺はそのまま学校に行く。
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