サイドストーリー

19.5 リゾルート[時雨崎姉妹]

「私、花君が好きなんだ」

「え、え? 花を・・・?」

 時刻は11時半。

 勘違いで花に告白してから悶々としていた私は、一人で考え込んでは不安になったり、喜んだりを繰り返しながら疲れていると菫が話があるからと部屋に入ってきて、雑談している中こう言った。

 私は何を言っているのか理解出来なくて、オウム返しに返す。

 菫がこう、真面目な顔で何かを言ったことは少ない。

 双子の姉妹だから分かるとか、そんなあやふやな感じ。

 絶対に何が何でも諦めない、そんな顔だった。

「だから、明日告白する」

「え? あ? そ、そうなんだ!」

「だからお姉ちゃんお願いします。話す切っ掛けを私にください」

 そう深々と頭を下げた妹に複雑な気持ちで私は頷く。

 そして菫が私を睨んだ。

「いいの?」

「いいもなにも、菫の気持ちは大事だし──」

「お姉ちゃん、花君にやっと告白してたよね」

「……っ」

 どんなに一緒に居ようともいつかは離れなくちゃいけない。

 幼いながらそんな危機感で不安になり、それが苦しくて、好きだと言える勇気がなかった私は小さい花に異性から狙われないよう色々と言ったり、やったりしてきた。

 それが今考えれば幼稚で、馬鹿げたことだったけど、当時の自分はそれしか思いつかなったほど幼かった。

 言い訳にしかならないとしても。

 そんな私でも譲れないものがある。妹であっても。

「した。でもあれは勘違いで──」

「怒るよ、お姉ちゃん」

「ごめん……本当は嬉しくない、嫌で良くない──だってずっと好きなんだ。でも、それは私が勝手に好きになって、花に酷いことして、それでも一緒に居たいって思えるほど私は強くない」

 泣きそうになるのを必死に我慢して菫を睨み返して言うと、正面から菫に抱き締められた。

 それでもう我慢出来なくて泣いた。

 必死にしがみついて、嗚咽を押し殺して。

「だから……お姉ちゃん、こうしよう。双子何だし、同じ人を好きになったのを後悔しても仕方ないから」とそう前置きして決まりを話し始めた。


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