第17話 隣の幼馴染

「はーい」とインターホンを鳴らすと聞こえて扉を開けたのは美人なお姉さんだった。

 この人が杏と菫ちゃんのお母さん、時雨崎桔梗さん。

 今年で四十代だと聞いていたが、杏達のお姉さんだと自称しても違和感がないほど若く見える。

 料理研究家で、朝やお昼のテレビに出演するほど有名なようだ。

 有名なようだとは、普段の俺がテレビを見ないので、聞いた話だ。

「お久しぶりです」

「そうそう、2ヶ月振りだったわね。それにしても相変わらず可愛いわ、もぅ!?」

 抱え込まれる形で背中を押され、扉を閉めた桔梗さんは幸せそうな顔で抱き締めてくる。

 正面から襲ってくる感覚と匂いに俺は困り、しどろもどろしていると桔梗さんの後ろで、じーと見てくる菫ちゃん。

「お母さん」

「あ、花ちゃんごめんなさい! 菫ちゃん、お菓子出来たの?」

「今、オーブンで焼いてるよ。あまり花君困らせちゃ駄目だよ、お母さん」

「でもー久しぶりだし、ご無沙汰だったし?」

 小さい頃から知っている分、男の子って認識が薄くなっているのか桔梗さんはこうしてスキンシップする癖が無くなっていない。

 正直、気恥しさもあるけれど懐かしくって嬉しくもあった。

 それでも、思春期の男子だとは認識してほしいと思う。

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