第13話 べ、別に好きじゃねぇし!

 バッティングセンターから外に出た俺は茜が居ないかどうか確認して、直ぐに走り始めた。

 運動神経抜群の茜が全速力で帰っているのなら無理だが、あの様子からそれはないと思った俺は道中の公園があったのを思い出して向かうことに。

 普段は帰宅部だから、運動もしていないので直ぐにバテバテとなるがそれでも急いで走ると、公園のベンチに腰を降ろして、学習帳を片手に鉛筆とシャーペンを交互に使い分けて何かを書いている茜が居た。

「馬鹿野郎……」

 声を掛けようと思って近付こうとした足を止めて、聞き耳を立てると

「……橘とか、春香?だっけアイツら何なんだよ。それにハナの奴、どうしてあんな!!」

 今にも暴れだしそうに、怒り出した茜に血の気が引く思いで花子は聞いていた。

 花子自身には批難されるような覚えがないこともあり、理不尽に怒られていると解釈するが学習帳を見て思い浮かぶ。そういえばあの時もこんな感じで泣いていたと。

「あ、茜さん!」

「……どうも」

 ベンチに座っている茜に声を掛けた人物は黒いスーツが似合う、キャリアウーマンって感じの人だった。

 無表情なのに話し方は何処かフレンドリーで、黒髪に花の髪留めをしている。

 手には茶封筒だろうか、パンパンに中身が入っているようだ。

 涙をぶっきらぼうに拭いた茜は、どうにも困った感じで、その人に挨拶する

「あ、失恋ですが?」

「……はぁ?」

 どう見てそう判断したかは不明だが、無表情でそう言う女の人は、何処かあっけらかんとした感じで話すのだ。

 絶句する俺を他所に茜は呆れた感じでため息。

「同性に対しての陰湿な嫌がらせとかっすか? てか、いいんですかこんな所で油売ってても?」

「あ、いえ。私、友達が居ないので落ち込んでいる相手がこういう状態の時は逆に思い付いたことを言う方が良いと、動画で見たもので。ちなみに本日の業務は滞りなく」

 即刻、その動画を通報した方がいいと霞花子は突っ込みしながら、事の成り行きを見ていると女の人は俺に視線を向けてくる。

「それと、あの方はストーカーですか?」

「おい、誰がストーカーだって……!?」

「ってハナがなんでここに居るんだよ……!?」

 いけねぇ、隠れていたのに出てしまった。

 しかし無表情で人をストーカー扱いする。何この人、怖い。

「お知り合いでしたか。では、彼が失恋相手なのですか?」

「違うぅっっううう!!」

 ベンチから立ち上がり、目をグルグルさせ、手を左右上下にクルクル回転しながら全力で否定する狼狽した茜。

「ん? では、告白しようとして、邪魔されて泣いていたと?」

「何で妙に具体的なんだ!! それにべ、別に好きじゃねぇしっ!?」



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